動画配信ネットフリックス 知っておくべき3つのポイント
日経エンタテインメント!
全世界で50カ国以上に進出、6500万人ものユーザーを誇る定額制動画配信サービス「ネットフリックス」が、9月2日から日本でのサービスを開始した。アジアでは日本が初進出。重責を任されたグレッグ・ピーターズ社長は、「日本は技術的に進歩している国なのに、動画配信サービスはまだまだ消費者に受け入れられておらず、マーケットは初期段階です。ネットフリックスの使い方や楽しさを消費者に浸透させていきたい」と意気込みを語る。
「地上波テレビがライブ(生中継)に強みがあるとすれば、"いつでもどこでも見られる"新しいタイプのエンタテインメント」(大崎貴之副社長)だと言うネットフリックス。加入前に知っておくべきポイントは、大きく3つある。
分かりやすい料金体系
ひとつめは「料金体系と対応機器」だ。どちらもシンプルなのが特徴。料金は毎月650円(同時視聴1ストリーミング)、950円(同2ストリーミング)、1450円(同4ストリーミング、4K対応)の3パターンあり、画質は異なるが、どれでも見られる作品の内容や数は同じなので、1人暮らしや4人家族など、家庭環境に合わせて選んでもいいだろう。
重要なのは「ネットにつながるかどうか」。パソコン、スマホ、タブレット端末はもちろん、テレビ、ゲーム機も、ネットにつながる環境にあれば、主だった機種で見ることができる。また、今年2月以降に発売されたパナソニック、ソニー、シャープ、東芝のテレビ、パナソニックとソニーのブルーレイプレイヤー、パナソニックのブルーレイレコーダーが対応しており、リモコンの専用ボタンを押すだけでネットフリックスにつながる。
高いクオリティーを誇るオリジナルコンテンツ
2つめのポイントは、ネットフリックスでしか見られない「オリジナルコンテンツ」だ。「最大の売りとして前面に打ち出していきたい」とは大崎副社長。そのラインアップだが、ハリウッド大作さながらのマーベルのヒーローアクション大作『デアデビル』を筆頭に、『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟による初の連続ドラマ『センス8』、レオナルド・ディカプリオ製作総指揮の自然派ドキュメンタリー『ヴィルンガ』など非常に豪華。
そのクオリティーの高さは、同社の初の企画・製作で、ネット配信ドラマとして初めてエミー賞を受賞したデヴィッド・フィンチャー監督の『ハウス・オブ・カード』(注:日本での配信時期は未定)で保証済み。2016年にはブラッド・ピット主演作『ウォー・マシーン』も予定されている。他の動画配信サービスが、日本の既存のコンテンツの充実度で競うなか、最大の差別化ポイントといえるだろう。
日本では、フジテレビ制作で10代20代に圧倒的な人気を誇る『テラスハウス』の新シリーズや、桐谷美玲主演でランジェリー業界に働く女性たちを描く連続ドラマ『アンダーウェア』をスタート時から用意。16年にはピース又吉の芥川賞受賞作『火花』の映像作品の独占配信を目指す。現在、テレビ局や映画会社、アニメ制作スタジオなど、様々な作り手にアプローチ中で、「アニメはいくつか企画を相談中」(大崎副社長)なのだとか。
名だたるクリエイターがネットフリックスで作品を作ろうと集まってくるのは、「クリエイティブ・フリーダム」という考え方があるからだという。ネットフリックスでは、同社のコンテンツ担当者は企画にゴーサインを出すと、製作自体はクリエイターが自由に作ることができる。例えば連ドラでも、地上波のような放送時間の制限はない。1シーズンの全エピソードを一気に配信するため、1話ずつ無理に盛り上がりを作る必要もないのだ。
オリジナル以外でも、洋画や邦画、海外ドラマや日本の連続ドラマ、アニメーションなど多彩な作品がそろう。例えば、トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』が公開中の今ならその過去全シリーズといった、旬なハリウッド大作を配信。日本の作品は「ドラマやアニメなどの強化は今後の課題」(グレッグ社長)ということもありスタート時はそれほど多くはないが、海外でも人気を誇る新海誠の映画といった人気アニメ、『踊る大捜査線』『テルマエ・ロマエ』といった大ヒットドラマや邦画が、サービス開始当初からラインアップされている。
精度が高いレコメンド機能
3つめのポイントは、「使い勝手の良さ」だ。特に体験してもらいたいのが、「レコメンド機能」。会員の実に75%が作品名の検索ではなくレコメンド結果から視聴していることからも分かる通りで、精度はかなり高い。
その仕組みだが、まず、コンテンツを内容によって細かく分類・タグ付け。種類は、約7万7000にも及ぶという。一方で、個々の会員の画面上での使用・視聴の傾向をデータとして蓄積。世界6500万人以上の視聴パターンと照らし合わせ、各会員の興味に合いそうなコンテンツを画面上に表示していく。会員が作品を使えば使うほど、精度は上がっていく。
「コマ落ちがほぼない」「途中で止まらない」のも、ネットフリックスの強みだろう。「可変型ストリーミング」という技術で、サーバーがユーザーのネット環境を認識し、環境が良いと高画質、悪いと低画質の映像を配信。また、ユーザーがすぐに映像を見ることができるよう、まず低画質の映像を配信し、その後徐々に高画質に上げていく。
「他社でも行っていますが、当社では8年前から動画配信サービスを始めた技術の蓄積があります。例えばコンテンツの画質をSDで約3種類、HDで約2種類、4Kで1種類に分類してサーバーに置いておき、ユーザーのネット環境に合わせて画質を判断します。分類のバリエーションが少なかったり、ユーザーのネット環境を判断するスピードが遅かったりしないように、6年前から日本に駐在し、各メーカーさんの機器の仕様に合わせて、それを下回る性能で十分きれいに見られるよう配慮してきました」(技術担当の下井昌人氏)
最後に、日本での会員獲得数の目標だが、「特にありません。目標は人数ではなく、顧客満足度を上げ、日本のユーザーから学んでいき、20年、30年にわたってサービスを続けていくこと」とピーターズ社長は語る。オリジナルコンテンツのレベルの高さ、各国事情に合わせた徹底したリサーチ、使いたくなるような使用感にすべく日々更新し続ける技術力。さらに、iPhoneで圧倒的なシェアを誇るソフトバンクと提携、店頭販売にも積極的だ。今までに体験したことがない動画配信サービスの、今後の展開に期待したい。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2015年10月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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