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退職したその日に交通事故 保障はどうなるか

2015/10/12

日経ウーマンオンライン

Question: 先日、同僚が退職するということで、退職の日に皆で送別会を開きました。深夜まで会は続き、12時を回ったのでもう帰ろうということになって外に出た瞬間、同僚が車に接触、救急車で運ばれ入院することになってしまいました。同僚が交通事故に遭った時は既に12時を回っており、会社との雇用契約が切れていたので有効な健康保険証はありません。同僚は国民健康保険の手続きもまだしていません。事故の原因は、車の運転手のわき見運転とのことです。高額な治療費になるかと思いますが、払ってもらうことはできるでしょうか。(30代・女性)

(C)Pixta

Answer: 同僚の方が交通事故に遭われてしまったのですね。それは心配ですね。そして同僚の方が健康保険の手続きを取っておらず、高額な治療費を負担しなければいけなくなるのではと心配されているのですね。

しかし、その点については大丈夫です。不法行為に基づく損害賠償請求権と言って、交通事故の被害者は加害者である運転手に、事故によって発生した損害の賠償を請求することができるのです。もちろんここでいう損害には事故によりけがをしてその治療のために発生した治療費も含まれます。同僚の方が健康保険の手続きを取っていなかったことを心配されているようですが、この不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するには被害者の方が健康保険の手続きを取っていることは条件となりません。

よって、同僚の方は治療費の全額を運転手の方に請求することが可能です。実際には運転手の方は任意の自動車保険に加入しているでしょうから保険会社から治療費を支払われることになると思います。

■退職日の帰り道なら労災の申請も可能

また、この同僚の方は、労災から治療費相当額について給付を受けるということも考えられます。この場合、事故に遭われたのが厳密には退職の翌日であることから労災の適用がないのではないかということも心配になるかも知れません。

ですが、本件のように事故に遭ったのが仕事の帰り道であった場合には、仮にそれが退職日の翌日にあたり労働契約の終了後であったとしても、労災の適用には問題がありません。労災の適用のためには法律上通勤と言えることは条件となりますが、労働契約が継続していることは条件とはならないからです。

もっとも、本件では法律上通勤といえるかどうかは問題となります。基本的に通勤といえるためには、必ずしも最短距離の移動である必要はありませんが、ざっくりいえば職場と自宅との往復の経路として不自然なものではない必要があります。

本件では、職場から自宅にまっすぐ帰宅しようとしていたのではなく送別会に参加した後ということですが、店の位置が自宅と逆方向であったり、普段通勤に使っていた経路と大きく外れている場所にあったりすると法律上の通勤とは認められず、そのことを理由として労災が認められない可能性はあります。ただしこの送別会が職場の主催する強制参加のものだった場合には、通勤と認められる可能性もありますね。

なお、労災と運転手(保険会社)との間で調整が行われるので、労災と保険会社の双方から二重に支払いを受けることはできません。迷った際には弁護士に相談してください。

この人に聞きました

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

[nikkei WOMAN Online 2015年9月22日付記事を再構成]

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