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社会問題解決で収益も狙う 個人向けに投資商品

2015/10/13

「社会的インパクト投資」という言葉が注目されている。高齢化や貧困、環境など様々な社会問題を解決すると同時に収益も目指す投資を指す。どういったものなのか。一般投資家も参加できるのか。探ってみた。

「社会的インパクト投資」は、社会問題の解決と収益を同時に目指す

神奈川県横須賀市で4月から、社会的インパクト投資の試行事業が始まっている。ここでの投資対象は、望まない妊娠や貧困などで実の親が育てることができない子どもの養子縁組事業だ。

育てる人がいない子どもたちは通常、児童養護施設に入ることになるが、人数が増えると市の負担が増える。子どもにとっても温かい家庭が望ましい。そこで市は乳幼児のうちの養子縁組を同投資の資金で進めることにした。

事業は専門の一般社団法人に任せる。投資家から集める事業費は約1900万円。目標は1年で4組の縁組成立だ。生まれた子どもが18歳まで施設で暮らすと仮定すると、4人分で約3500万円の経費が必要という。養子縁組の目標が達成できれば、事業費を返してなお1600万円の行政コストが浮く。この一部を配当に回せば、出資者の利益も確保できるわけだ。逆に縁組が進まなかったときのリスクは出資者が負う。

今回は試行事業のため、事業費は全額を公益財団法人である日本財団が出している。このほかにも、高齢者介護や引きこもりの若者の就労支援でも同様の試行事業が始まっている。同財団では試行で成果をあげていけば、広く投資家から資金を集める環境も整うと見ている。

行政と連携するものばかりが社会的インパクト投資ではない。2013年の主要8カ国(G8)首脳会議でこの手法が話題となり、日本でも普及検討組織が設けられた。「G8社会的インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会」(委員長=小宮山宏・三菱総研理事長)が5月にまとめた提言書では、一般投資家向けの商品もこのような投資の一環として紹介している。

その一つがコモンズ投信の投資信託「コモンズ30ファンド」だ。「今日よりもよい明日をつくる」(渋沢健会長)という理念の下、長期に持続的に成長できる企業に投資するという。同社は年間信託報酬の1%を社会的課題を解決する起業家に寄付しており、寄付先の選定に当たっては顧客の意見を聞く場も設ける。

ミュージックセキュリティーズが運営するインターネットを通した小口投資ファンド「セキュリテ」も取り上げられた。地域の環境、伝統などを生かした特産品の開発事業などに対し一口数万円程度から投資できる。事業性などを審査したうえで「投資家が共感・応援したくなる事業を選ぶ」(小松真実社長)としており、現在対象事業は400以上ある。

コモンズ30は09年以降で年率15%の利回りを達成。セキュリテは一部元本割れもあるが、中には50%のプラスを出した事業もある。いずれも、ファンドの内容をよく知り、許容できるリスクの範囲内で参加することが基本だ。

企業の社会的責任などに注目する投資手法は以前からあり、最近では機関投資家の間で「ESG投資」と呼ばれ注目されている。社会的インパクト投資は企業活動のみならず行政や福祉団体、NPOなども巻き込む。経済的利益だけを重視しない投資の流れはますます大きくなるかもしれない。(編集委員 山口聡)

[日本経済新聞朝刊2015年10月3日付]

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