玉川高島屋SCが「おしゃれ朝食スポット」に

日経トレンディネット

東京・二子玉川駅周辺エリアが今、活況を呈している。2015年4月、東口エリアに新商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」(以下、二子玉川ライズSC)が開業してから、駅の乗降客数は15%もアップしたという。

一方、西口エリアの顔ともいえる玉川高島屋ショッピングセンター(以下「玉川高島屋SC」)も、2014年3月に新館「アイビーズプレイス」を開業し、人気セレクトショップ「ロンハーマン」の国内最大店舗をオープンさせるなど、新たな展開が注目されていた。

さらに、玉川高島屋SCは2001年に開業した「マロニエコート」を増床。2009年から出店している「GAP」「無印良品」「Cafe MUJI」に加え、2015年9月8日に新たに3店舗を加えてリニューアルオープンした。

まず1階には国内初出店となる米ロサンゼルス発のレストラン&グロサリー「ファームショップ(FARMSHOP)」、2階には国内3店舗目となるライフスタイルブランド「スローハウス(SLOW HOUSE)」、3階には“世界一の朝食”で知られる人気レストラン「ビルズ(bills)」の国内5店舗目が出店。新興商業施設の二子玉川ライズSCに対し、老舗の玉川高島屋SCがどのような違いを出して対抗しようとしているのか。足を運んで確かめてみた。

増床リニューアルした玉川高島屋ショッピングセンター マロニエコート。全体の敷地面積は約970坪で増築部分の建築面積は約145坪。地上3階・地下3階建ての鉄骨造りで、店舗総面積は約690坪
「ファームショップ」店内。営業時間は8時半~23時。モーニングは8時半~11時半(L.O.以下同)、平均予算は1000~1500円、ランチは11時半~14時半で平均予算は2000~3000円。ディナーは17~22時半で平均予算は6000~1万円。席数は120席(カウンター8席)

ハリウッドセレブに人気のレストランが日本初出店

路面店となる1階に出店したのが、今回の増床リニューアルの目玉ともいえるレストラン&グロサリーのファームショップ。サンフランシスコ郊外とサンタモニカの高級住宅街に店舗を構える、マーケット併設のハイカジュアルレストランだ。

コンセプトは「Farm to table(農園からテーブルへ)」。“ローカルを大事にすること”“アルチザン(職人)であること”“小規模生産であること”を重視するオーナーシェフが厳選した食材をシンプルなスタイルで提供することから、食への意識が高い層に人気が高いそうだ。現地ではハリウッドスターやミュージシャンなどもよく訪れるそうで、今回が日本1号店。日本では、海外のベーカリーやパンケーキカフェなどを全国に次々とオープンさせ、フード業界への積極的な進出が注目されているアパレル会社・ベイクルーズ(東京都渋谷区)が運営する。

エントランス部分の両側がグロサリーの棚。200種類もの厳選された商品が並ぶ。突き当たりがバーコーナー。右手奥がダイニング
日本では見かけたことのない調味料が多く、料理好きに受けそうなラインアップ

エントランスを入ってまず驚いたのは、両側にそびえたつ巨大なグロサリー(食料雑貨)の棚の迫力。自家製の総菜などを店内で販売するレストランは珍しくないが、これほど品数が多い店は見たことがない。約200種類もあるというグロサリーは米国本店で販売しているものが4割ほどで、約6割はオーナーシェフが日本で選んだものだという。グロサリー売り場のスペースだけでもターミナル駅周辺の百貨店にある小さめの飲食店がすっぽり入りそうだ。奥に進むと、ダイニングエリアの広さにまた驚いた。日本1号店が表参道や新宿などではなく二子玉川なのは、この広さで出店できたことも大きいという。

料理はカリフォルニアで展開しているものをベースに、シェフがその土地の旬の素材からインスピレーションを得るため、全て同店のために開発したオリジナルメニューだそうだ。

ディナーメニューの「アボカドフムス」(税込み1500円)。ひよこ豆のペーストにアボカドを加え、ピスタチオとサルサとニゲラの種、オリーブオイルなどをかけている
米国の本店でも名物の「国産銘柄鶏のハーブロースト」(3800円)。日本では鳥取の銘柄鶏「大山どり」を使用し、ローストしたスペルト小麦やナッツの香ばしいソースをかけて仕上げる。。鶏の銘柄は季節により変わる

アクタス運営のライフスタイルショップはエシカルな暮らしを提案

2階には、家具などの輸入販売会社アクタス(東京都新宿区)が運営するライフスタイルショップのスローハウスが天王洲、梅田に続く国内で3つ目の店舗を出店。「丁寧な暮らし」というコンセプトのもと、衣食住を通じて環境に負荷を与えないエシカルな暮らし方を提案する多彩な商品を展開している。

2階の「スローハウス」ではオリジナル家具をはじめ、欧州や米国を中心とした輸入ヴィンテージ家具や生活雑貨、食材、グリーン、衣類など様々な商品を販売している。営業時間は10~21時。売り場面積は148坪
宇都宮のレストランと共同開発した、旬の食材を使用したピクルス。モモ(1300円)のほかコリンキー(カボチャの一種)、ニンジン、カブ、キュウリ(各1100円)などがある

こちらも売り場面積の広さにまずびっくり。エスカレーターで登ってすぐの場所には瓶詰めなどのグロサリーが置かれているが、手ごろなものから興味を持ってもらうための工夫とのこと。グロサリーは自社で開発しているオリジナル品。ピクルスは人気レストラン「リストランテ チヒロ」との共同開発で、旬の食材を使っているのが特徴。熟れる前の固いモモを使った珍しいピクルスもあり、これは商品にならないモモを廃棄せずに利用することも目的にしているという。味見をさせてもらったが、ほどよい酸味の後にモモの香りが広がり、カリッとした歯ごたえも新鮮。これは人気を呼びそうだ。

ピクルスの棚の横に平台が作られているのが、ポーランドの人気ライフスタイル誌「THISISPAPER」が手がけるハンドクラフト製品。日本初上陸で、スローハウスでも同店でしか販売していないそうだ。もともと私的なブログから始まり、雑誌編集の傍ら、自分たちのライフスタイルを表現するために始めたのが物販だったという。全てハンドメイドなので大量生産はできないが、味わいのある丁寧な製品がそろっている。

ワルシャワで人気のライフスタイル誌が展開する衣料品・ファッション雑貨のブランド「THISISPAPER」が購入できるのは国内では同店だけ
家具はオリジナル製品も多いが、1950~60年代に製造された海外のヴィンテージ家具を国内の工場で熟練の家具職人がていねいにリペアし、この先何十年と使い続けられる製品が多い

アクタスといえば、二子玉川ライズに「アクタス二子玉川店」をオープンさせたばかり。売り上げは好調で、「二子玉川の客層とマッチしているのでは。二子玉川という街のポテンシャルを実感している」(アクタス)という。2店舗は歩いて数分の距離。気軽に回遊できそうだ。

■西口エリアを欧州の旧市街地のイメージに

東口の二子玉川ライズの賑わいで、西口にある同SCは割を食っているのではと思ったが、「二子玉川駅の乗降客数増加に伴い、入店者数も昨年より7~8%増えている」(東神開発 玉川高島屋S・C営業本部 玉川事業部の菊山みち副部長)という。

二子玉川駅前の国道246号線沿いには、本館、今回増床リニューアルしたマロニエコート、ロンハーマンが出店している「アイビーズプレイス」、ケヤキコート、ガーデンアイランドと、同SCの施設が広がっている。西口エリアの街並みとしての魅力を高めることで、ぶらぶら歩きが楽しい街づくりになる仕掛けを作っているという。

「東口に映画館や家電店、ホテルなど都市機能が充実した二子玉川ライズがあり、西口にぶらぶら歩きが楽しめる路面店があることにより、二子玉川がより多面的に楽しめる街に発展していくのではないか。欧州の都市では新しい市街地にコンベンションホールなど機能的な施設が集中し、旧市街地に教会や商店街などの昔ながらのたたずまいが残っている。西口エリアと東口エリアが分離するのではなく、そのようなイメージでお互いの個性を生かして共存していきたい」(菊山氏)。

今回の増床リニューアルに際し、同社が目指したのは大きく2点。ひとつは感度の高い消費者に支持されている大型店舗の導入。本館などで出店が不可能な床面積の広い店舗を作ることで、ゆったりくつろいで利用してもらいたいと考えたという。

もうひとつは朝型の業態。「百貨店は昼の営業、南館の裏にある飲食店は夜の営業がメイン。これまで二子玉川には朝型の業態が少なかった」(菊山氏)。そこで同SC初の早朝営業を実施。ファームショップとビルズの新2店舗が8時半から営業を開始し、二子玉川の朝の新スポットを目指すという。

最上階となる3階には、世界一の朝食で知られる「ビルズ(bills)」も出店。営業時間は8時半~22時
「bliis(ビルズ)」ではグルテンフリー食材として注目されているそばの実(Buckwheat)とスーパーフードとして人気のキヌアをケフィアヨーグルトと合わせた二子玉川店限定「ポーチドエッグ&バックウィートサラダ」(1500円)を販売

ファームショップのモーニングを実食

後日、朝食を食べにファームショップへ足を運んでみた。ペストリーの素材は日本のものを使っているが、米国本店のレシピに忠実に作っているのでほぼ同じものが味わえるとのこと。 

ドリンクはコーヒー・紅茶のほかハーブティーなど約7種類ほどあるが、ハーブのミックスなど、メニューにない要望にもできる範囲で応えるとのことだ。またそれ以外にも、グロサリーで販売しているドリンクは全てモーニングタイムに限り店内で飲める。

見ていると、人気ナンバーワンはブルーベリージャムがたっぷりトッピングされたブルーベリーマフィン。ほかのペストリーの3倍くらいの早さでなくなっていき、次々に補充されていく。食べてみると果実のジューシー感が際立っていて、生地はふわっと軽い。ブルーベリーマフィンに次いで売れ行きがよかったウォールナッツマフィンもクルミの香ばしさが際立っていて、どちらも使っている素材の良さがダイレクトに感じられた。

これだけのスペースがあれば、ゆったりと落ち着いて食事が楽しめそう。おもちゃ箱をひっくり返したように個性的で刺激的な店がそろっている二子玉川ライズSCの楽しさも捨てがたいが、出店しているショップのコンセプトが統一されていて、どこに入っても安心感があることもマロニエコートの魅力だと感じた。生活スタイルが確立していて欲しいものに迷いがない層や中高年以上の世代にはこちらのほうがしっくりくるかもしれない。

「ファームショップ」ではペストリーを中央のカウンターに並べて販売
「ブルーベリーマフィン」「ウォールナッツマフィン」(各350円)。グロサリーで販売している「山形すももジュース」(450円)

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2015年9月14日付の記事を再構成]