生命保険、定年後もまだ入る?経済コラムニスト 大江英樹

2015/10/29

定年楽園への扉

日本人は世界一保険が好きな国民だといわれています。生命保険文化センターが2015年9月に出した「生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によれば、一世帯当たりの生命保険の年間払い込み保険料は38万5000円となっています。前回の調査(12年)のときは41万6000円でしたから、この3年間に1割近くは減ったことになります。それでも年間38万5000円ということは毎月3万2000円ぐらいの金額になるわけですから、かなりの金額を生命保険に使っていることになります。

保険というのは、人間が考え出した素晴らしい英知ですが、本来の保険の目的は、「めったに起こらないこと」だけど、もし不幸にして起きてしまったら「自分の蓄えでは到底まかなえないこと」に対応するために考えられた仕組みです。つまり保険が必要なのはこの2つの条件に合致するという場合です。例えば年齢が30歳ぐらいの若い男性で、まだ幼い子供さんがいて奥さんは専業主婦。こういう人が万が一交通事故で亡くなったら、当面の生活費に困るという場合が出てくるでしょう。こういう人が期間限定で生命保険に入っておくということについては、一定の合理性があります。

ところが私のような定年退職者で子どもはとっくに独立しているということであれば、生命保険は全く不要です。今自分が亡くなっても遺族年金や少しぐらいの蓄えはありますから妻が路頭に迷うことはないでしょう。最近は高齢で独身の方も多いですから、こういう方なら生命保険に入る必要性はなくなります。もっとも相続対策として生命保険が必要な場合はあるでしょうが、私は相続対策を考えなければならないほどの資産も持っていませんから、いまは生命保険には全く加入していません。

生命保険どころか医療保険すら入っていません。年をとれば病気に対するリスクは高まりますが、民間の高い保険料の医療保険に入らなくても「健康保険」という公的な医療保険(これは国民全員が入っています)に入っていますので、高額療養費制度を利用すれば病気になってもわずかな負担で済むからです。それは保険ではなく貯蓄で備える方がはるかに賢明です。

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