N
健康・医療
from 日経Gooday

2015/9/28

from 日経Gooday

豪太さん 登山は最もエネルギーを使う有酸素運動です。山で使うカロリーの目安は、「自分の体重×運動時間×5kcal」です。

登山で消費するエネルギーの量 = 自分の体重(kg) × 運動時間 × 5kcal

例えば、私の体重は80kgなので、1時間の山登りで消費するのは、400kcal。往復5時間の山では、その5倍の2000kcalを消費することになります。

――それだけで、普段の1日に必要なカロリー量と変わらないですね。

豪太さん そうなんです。ですから、糖質ダイエットをしている人なんかがいきなり山を登ると、「低血糖」になり、途中で体が動かなくなってしまうことがあります。これはとても危険です。登山の時は、自分の体を守るために糖質をちゃんととるようにしてください。

まず朝食で600から800 kcalを目安に摂取し、おやつなどの行動食を準備してこまめに補給しましょう。たとえ2000kcalをとっても、それに相当する量の運動をするので決して太りませんし、続けていくうちに基礎代謝は上がり、筋肉がバランス良く引き締まって痩せてきます。しっかり食べておいた方が、登山後の回復力も高まります。

――山歩きで痩せようと思ったら、きちんと食べることが大事なんですね。朝食は何がお勧めですか?

豪太さん ご飯かパンかと聞かれると、ご飯の方がいいかもしれませんね。パンは血糖値を素早く上げる分、吸収も速いのですぐにお腹が空いてしまいます。ご飯やパスタの方が血糖値をゆっくり上昇させる分、腹持ちがいいんです。一方、登山中の行動食には、すぐにエネルギーに変わるパンがいいかもしれません。

おやつは、糖分に加え、筋肉のけいれんを予防するカリウムを含むバナナを持って行くといいですね。ドライフルーツやチョコレートでもOK。カロリーのあるスポーツドリンクも、補食としても考えられます。

――水分補給はどのようにすればいいですか?

豪太さん これにも分かりやすい目安があって、「自分の体重×行動時間×5mL」が必要な水分量です。たとえば東京の高尾山を、ケーブルカーやリフトを使わず徒歩のみで往復すると、3時間前後かかります。体重80kgの人であれば、1200mL=1.2Lの水分が必要です。もちろん、気温条件により異なりますので、これは目安です。暑ければ、1~3割増しで水分を補給してください。

登山中に必要な水分量の目安 = 自分の体重(kg) × 行動時間 × 5mL

水はとても重いので、途中の沢やロッジで補給できるのであれば、その場所までにかかる時間を目安に、必要量を準備しておくといいかもしれません。ロッジで販売している水は、麓のものより価格が高いですが、登山の途中で調達した方が体力の消耗を防ぎ、ラクに登れます。

――事前に、水場を調べておくのは重要なんですね。

豪太さん 水場までの行動時間や、必要な水分量を調べ、水場がない時には、往復分用意するなどの準備は大事だと思います。体温調整、心臓の負担の軽減、それから筋肉のけいれんの防止において、水分補給は大事です。脱水症状を起こしてしまうと、死にも至ります。カロリーと同じく、こまめに補給してください。

水分としては、筋肉の収縮を防ぐカリウムが入っているスポーツドリンクがお勧めです。たいていのスポーツドリンクにカリウムは含まれています。スポーツドリンク特有の甘味に抵抗があるという人は、薄めて飲んでもいいですし、スポーツドリンクよりも電解質濃度が高く糖質濃度が低い経口補水液でも大丈夫です。

――ウーロン茶や緑茶など、カフェインが入っているドリンクは避けたほうがいいですか?

豪太さん ウーロン茶や緑茶でも悪くはないのですが、カフェインには利尿作用があるので、飲みすぎると脱水になる可能性も否めません。ほどほどにしておいた方がいいでしょうね。

でも実は、その利尿作用が高所でのむくみ防止に役立ったりもするんです。われわれが高い山に登る時は、よく紅茶やコーヒーを持っていって、むくみ防止の為に飲んでいます。この場合の「高所」は、初心者が登るような山ではありませんが、高所で飲むコーヒーは格別においしいです。

山登りの栄養・水分補給のコツ
1.計算式を参考に、出発前、および登山中に必要なカロリーをしっかり摂る
2.水分補給はスポーツドリンクがおすすめ。おすすめのおやつはバナナ
3.途中の水場を調べ、そこでも飲み物を調達するよう計画を。往復分をリュックに入れる必要がなくなり、体力の消耗を防げる

(高島三幸=フリーライター)

Profile 三浦豪太(みうら・ごうた)
プロスキーヤー、冒険家、医学博士
1969年、神奈川県鎌倉市生まれ。米国ユタ大学卒業。フリースタイルスキーのモーグル日本代表として94年リレハンメル五輪、98年の長野五輪に出場。現在は解説者としても活躍し、2014年ソチ五輪では名解説が話題に。13年、父・三浦雄一郎氏の世界最高齢(80歳)でのエベレスト登頂に同行し、親子同時登頂を果たした。現在は順天堂大学医学部非常勤准教授として加齢制御(アンチエイジング)を専門に研究する傍ら、幅広い年齢層の人々やアスリートに向けた、トレーニングやアウトドアプログラムを手掛ける。日本経済新聞の夕刊コラム「三浦豪太 探検学校」でもおなじみ。
注目記事