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5大コレクション、メンズ分離開催でブランド争奪戦 流行発信の秩序崩れる

2015/9/27

ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ、東京――。世界のファッションをリードしてきた主要コレクションの日程にここ数年、“異変”が起きている。ロンドン、ニューヨークが相次いでメンズ単独のコレクションを分離開催し始めたからだ。おかげで買い付けや取材で世界を飛び回るバイヤー、ジャーナリストらは大わらわ。コレクション同士の思惑が激突する日程やブランドの争奪戦も勃発しつつある。背景には活況を呈する紳士服市場の変化があるようだ。
世界のバイヤーが集まるメンズファッションの見本市「ピッティ」の商談風景)((C)Pitti Immagine)
イタリア・フィレンツェのピッティ会場(C)Pitti Immagine

バーバリー・プローサムのショー(ロンドン)

「ロンドン・コレクションが殴り込みをかけてきた」。イタリアの古都フィレンツェ。世界のメンズファッションに大きな影響力を持つ見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」に衝撃が走ったのは2013年1月のことだった。ロンドン(7~9日)とピッティ(8~11日)の開催日程がぶつかったのだ。

翌年1月にも日程が衝突。人気ブランドの「バーバリー・プローサム」(ロンドン)と「ディーゼル・ブラック・ゴールド」(ピッティ)が同日開催となってしまい、バイヤーや編集者の移動の便宜を図るため、ピッティ側がロンドン―フィレンツェ間のチャーター便をわざわざ調達する事態に陥った。

日本の男性ファッション誌でもピッティ特集が組まれるなど注目度は高い
ミラノで開かれたジョルジオ・アルマーニのショー Courtesy of Giorgio Armani

「世界の主要コレクションに大きな変化が起きている」。ユナイテッドアローズの栗野宏文・上級顧問はこう指摘する。

ファッション業界には「サーキット」と呼ばれる主要コレクションの年間日程がある。メンズ秋冬(1月)→レディース秋冬(2~3月)→メンズ春夏(6~7月)→レディース春夏(9~10月)が主な流れ。

この日程に従って世界の多くのデザイナーやアパレル会社が新作を企画・生産し、バイヤーが買い付け、メディアが最新の流行として報道する。いわば、業界の仕事のサイクルを生み出す時計のような役割を果たしている。

華やかで流行の変化が目立つレディースはこれまでプレタポルテ(既製服)の主役と位置づけられてきた。ニューヨーク→ロンドン→ミラノ→パリ→東京という順番でコレクションを開催し、「5大コレクション」と呼ばれる。一方、メンズはピッティ→ミラノ→パリの順番でコレクションを開催。特にロンドンやニューヨークでは脇役扱いでレディースと同時にショーを開くのが常だった。

ところがこうした「サーキット」の秩序が崩れつつある。ロンドンとニューヨークがメンズ単独のコレクションを分離開催するようになったのだ。これに伴い、デザイナーやブランドの争奪戦も激化している。

「バーバリー・プローサム」や「トム・フォード」はショーの開催をミラノからロンドンに移転した。「コーチ」は今年1月からメンズのショーをロンドンで開催するようになった。

なぜ異変が起きてるのか?

背景には紳士服市場の活況がある。日本百貨店協会によると、国内百貨店の売り上げはここ数年、婦人服よりも紳士服の方が明らかに堅調に推移している。「デフレ下の厳しい家計状況で真っ先に切り捨てられてしまったのがお父さんの服飾費だった。だが最近の景気回復で家計にも多少余裕が出てきたのか、紳士服への支出がジワジワと伸びてきた」(同協会)

伊勢丹新宿本店(東京・新宿)メンズ館でもリーマン危機の影響で08~10年は前年割れが続いていたが、11年からははっきりと増加基調に転じている。日本だけではない。「婦人服よりも紳士服の売り上げの伸びに勢いがあるのは先進国に共通の現象」(流通関係者)だという。

こうした事情からロンドンやニューヨークが相次いでメンズ単独のコレクション開催に踏み切っているというわけ。「レディースよりも早いメンズのコレクションに開催時期を前倒ししないと受注が取りにくい」。デザイナーやアパレル会社からの切実な要望がコレクションのサイクルを突き動かした格好だ。

東京コレクションでもメンズの分離開催を求める声はあるが、「まだ検討課題で実現できる段階にはない」という。

(編集委員 小林明)

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