20~30歳代が老後に備えるための黄金ルール若いうちに考えておきたい「老い」の現実(4)

今月は「老い」の現実を知ってもらうことがテーマでしたが、「老い」に備えるというのはなかなか難しいことがおわかりいただけたかと思います。

しかし、何も備えずただ年を重ねていくことは、あまりにも老後が無防備です。

今週はまとめとして、ほぼ確実にやってくる老いに備える方法、つまり「バラ色老後の作り方」を考えてみます。

その黄金ルールは「早く」「少額」から積み立て「続ける」ことにあるのです。

早く始めることが「老い」への備えを楽にする

今月考えてきた、誰にでも来るべき「老い」に備える方法はいくつかありますが、その黄金ルールをまとめるとしたら、最初のルールは「できるだけ早く」時間を取り始めることです。それはすなわち「できるだけ長く」時間を取ることでもあります。

同じ金額をためたいと考えるなら、できる限り長く時間を取った方が何重にも有利になってきます。

まず、利息がなかった場合においても、1回あたりの積立額は少額ですみます。1000万円のゴールに向かって、40歳から20年積み立てるより、22歳から38年積み立てたほうが楽になるのは当然のことです(20年だと毎月4万1667円だが、38年あれば毎月2万1930円でよい)。

実際には利息や運用益が生じますので、その差はもっと拡大します。仮に年3%の利回り(税引き後)を確保し続けたとすれば、先ほどの40歳から毎月4万1667円を20年積み立てる努力は、元本1000万円より多くなります。試算では60歳時点で1368万円の受け取りにふくらみます。

しかし、38年にわたって毎月2万1930円をため、年利3%がつき続けたとすれば、なんと60歳時点では1862万円にもふくらむのです。

どちらも積み立て元本1000万円であることは変わらないはずが、「長い時間」をかけて積み立てたほうが有利なことになっているのです。

これは長い期間の運用により「利息が利息を生む」複利効果が生じるためです。複利効果は投資期間を長く取れば、誰でも得られるメリットです。「老い」に対して早く備え始めた人には二重にメリットが生まれるのです。

早く始めるなら老後の準備は少額からでもいい

先ほどのシミュレーションが示している意味を裏返すと、早く始めることで1回あたりの負担が軽くなる、ということでもあります。

仮にゴールを1000万円のまま、利回りに期待できる分、毎月の積立額を下げてみます。どちらも年3%の利回りを確保したとすれば、20年積立だと毎月3万460円が必要です。利息ゼロなら毎月4万1667円必要でしたから、負担は4分の1ほど楽になりました。

が、38年という長い時間を使うことができると毎月の負担は2万1930円から月1万1780円までダウンするのです。なんと半分近いところまで負担は軽くなりました。

これも複利効果のあらわれですが、長期にわたって資金準備を行う人は、毎月あたりの積立額が少なくても同じゴールにたどりつくことができるわけです。

老後の資産形成を考えたとき、毎月あたりの負担額が少ないほど、実行しやすくなりますし、毎月の生活もラクになります。

早く、長く積み立てることを、「少額なら意味がない」と諦めてしまう人がいますが、むしろ少額でもいいのでとにかくスタートさせることが大切なのです。

続けて、崩さないことが老後の備えの大事なポイント

老いに備える資金づくりの最後のコツは、積み立てを「続ける」ことと、「崩さない」ことです。

投資をしてお金を増やすイメージに「株式の売買で増やす」がありますが、これは会社員の資産形成には向いていません。仮に250万円を22歳時点で「老後のための原資」として証券口座に放り込み、年利3.65%(税引き後)で増やし続ければ60歳時点で1000万円になりますが、新卒すぐに38年後に必要な資金額の4分の1を準備するような資金計画は非現実的です。

普通に働いている会社員の場合、定期的な積み立てを続け、元本を上積みする努力を行いつつ、資産運用の力も借りて利回りの向上にも努める、そういう組み合わせが老後資産形成の王道になります。

そして、中途解約を行わないことも老後資産形成においては重要です。せっかく回り始めた複利効果を、自ら中途解約により中断させてしまうことになるからです。

先ほどの例で、1万1780円を毎月38年間積み立て、年利3%を確保できれば1000万円に達するとしましたが、40歳時点では337万円程度にしか成長していません。これをもし、100万円取り崩し、その後の積み立てを増額することで帳尻を合わせようとすると、133万円多く積み立てることになります。

どうしても必要な資金についてローンを借りるより貯金の取り崩しをすることは問題ありません。しかし、「アベノミクスでもうけたし10万円くらいぱっと使っちゃおうか」といった安易な取り崩しは禁物です。取り崩しのツケは重い負担となって跳ね返ってくることになるのです。

税制上メリットがある制度は必ず使おう

最後に、老後資金を準備すべく、「早く」「少額」から「続ける」ためにはどんな器があるでしょうか。

同じ老後資産形成を行うなら、税制上のメリットがある制度を優先的に選択するべきです。預貯金の利息や株価の上昇によって得られた利益について通常であれば20%の税金が課されます(正確には復興特別所得税を加えて20.315%)。

もし、この課税がなければ、より多くの資金が手元に残り、また次の利益を生み出す源泉となります。

毎月1万円の積立を38年間続けたモデルを考えたとき、年利3%と、年利2.4%(利益から20%引いた)の運用結果を比較すると、60歳時点の受取額は849万円と744万円になり、課税の有無の違いだけで、最終受取額に大きな違いが生じることが分かります。

NISA(少額投資非課税制度)口座や確定拠出年金口座であれば、譲渡益は非課税になります。また財形年金は預貯金ベースですがこれも利息が非課税になります。NISAは特に年100万円(2016年から年120万円)もの利用枠があります。枠を使い切ってしまう心配はないでしょう。投資をするなら必ずNISA口座を開設しておきましょう。

また、確定拠出年金制度もフル活用したい制度のひとつです。マッチング拠出(企業型の確定拠出年金に自ら追加負担する)や個人型の確定拠出年金では、譲渡益が非課税だけでなく、掛金について所得税や住民税の軽減につながるメリットもあるからです。確定拠出年金は、現役世代は誰でも利用できる制度に大改正される予定で、老後の準備としては最優先で利用したい「器」になってくるでしょう。

老後のためのお金の準備は一朝一夕には行えません。しかし、時期を逃せばためられなかったことを後悔することでしょう。早く気づき、早く行動し、早く資産形成を行えるようにしてほしいなと思います。

■「なんとか年金保険」だけが老後の準備ではない

老後に備える、というと「年金」と名前のつく金融商品を買わなければならないと思い込みがちですが、そのようなルールはまったくありません。終身年金が欲しいのであれば保険商品を選ばなくてはいけませんが、それも定年になってから一括払いで購入することができます。

現役時代はむしろ、効率的な資産形成になるかどうかに着目してあらゆる金融商品を対象に検討するといいでしょう。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。近著に『20代から読んでおきたい お金のトリセツ!』(日本経済新聞出版社)。twitterでも2年以上にわたり毎日「FPお金の知恵」を配信するなど、若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる(@yam_syun)。ホームページはhttp://financialwisdom.jp

20代から読んでおきたい「お金のトリセツ」! (日経ムック)

著者:山崎俊輔
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,000円(税込み)

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし