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謎の北方海洋民族の生活いきいき アイヌ文化に大きな影響

歴史新発見 北海道羅臼町・松法川北岸遺跡

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NIKKEI STYLE

 5世紀から10世紀にかけ、北海道のオホーツク海沿岸で独自の文化を持った海洋漁猟民族がいた。いわゆる「オホーツク文化」の担い手たちだ。生活実態が長く不明だったが、羅臼町松法(のり)川北岸遺跡の遺物が重要な手掛かりと判明。出土した約10万点の遺物中計260点が今月、国の重要文化財に指定された。アイヌ文化に大きな影響を与えたとみられるオホーツク文化に注目が集まっている。

不意に現れ、突然消えてしまった民族

縄文時代以降、北海道は本州とは異なる独自の歴史を歩んだ。今から2500年前ごろ、九州から本州では稲作が生活の中心となる文化が広がった。社会システムが大きく転換した弥生時代だ。

だが北海道では稲作は技術的に不可能だった。その一方で自然資源が豊富であったため漁労や狩猟が中心の生活が6世紀頃まで続いた。「続縄文時代」と呼ばれる。地域色が濃く道央、網走、釧路などそれぞれ特徴がある土器が出土している。

本州が飛鳥時代と呼ばれる7世紀頃になると、北海道に本州から鉄や土師(はじ)器が流入するようになる。鉄器が多数手に入るようになったことで石器は激減。住居は正方形か長方形で、それまでの単純な炉だけでなく「かまど」が作られた。土器は土師器によく似た「擦文式土器」を製作。ヒエやアワを栽培し大集落を築いた例があることも分かっている。本州の影響を強く受けながらも独自の発達を見せ、北海道のほぼ全域に広がった。13世紀ごろまで続き、「擦文文化期」と呼ばれる。この文化の流れを担った人々がその後のアイヌ文化を作ったとされている。

こうした時代の中、オホーツク海沿岸の利尻島、礼文島、知床半島、根室半島など流氷の分布域とほぼ重なる道北・道東の一部地域に在来とはまったく異質の文化が5世紀頃渡来した。「オホーツク文化」と呼ばれている。

骨角器や石器などを用いてクジラや魚、トドなどを捕獲。鹿角や鯨骨で作った釣り針や、漁網に結びつけた石の重りが多数見つかっている。漁労や海獣狩猟を生計の中心に据え、海岸沿いに五角形や六角形の竪穴住居を建てて住んだ。

竪穴といっても原始的なものではなく、複数の家族が同居する1辺10メートル超もある大型で、板壁に囲まれ、床には粘土を敷き、木材を多く使う現在のログハウスと大差ないものもあったという。

中でも特徴的なのは、動物の骨、とりわけヒグマの頭骨を積み重ねる「骨塚」が住居の奥に祭壇として設置されていたことだ。数十頭の頭骨が出土した例もあり、ヒグマを神聖なものとして扱い儀式を行っていたと解釈されている。

オホーツク文化はサハリンが起源と考えられておりアムール川下流域、南千島、北海道のオホーツク沿岸に広がった。9世紀ごろから一部で擦文文化と融合が始まり、中間的な「トビニタイ文化」に変容、トビニタイ文化も13世紀には擦文文化に完全に吸収されたとされている。

不意に現れ、突然消えてしまった――。古代のミステリアスな海洋民族とされてきたオホーツク文化人とは誰なのか。人類学や考古学、歴史学など様々な分野から正体を求めてアプローチがなされてきた。

「遺伝子解析の結果などによると、アムール川下流域からサハリン北部で暮らし、以前はロシア語でギリヤークと呼ばれていた少数民族のニブフ説が近年は有力になっている。擦文文化との融合とともに混血が進んでいった跡もあるようだ」と羅臼町郷土資料館の天方博章学芸員は解説する。

そのオホーツク文化人の生活実態を解明する上で大きく寄与したのが今月国の重要文化財に指定された松法川北岸遺跡から出土した遺物だ。

火災のおかげで残された木製品

7~8世紀ごろの土器や石器、鉄製品、骨角器ほか木製品が見つかった。1982年の発見当時、オホーツク文化期の木製品出土は初めてだったことからとりわけ高い価値があり、30年余りにわたって復元作業が続けられてきた。

1300年を越える木製品が奇跡的に残ったのは火災に遭ったから、というと逆説めくが、事実その通りなのだ。松法川北岸遺跡で調査した15軒中3軒が火災に遭った竪穴住居跡だったが、屋根にふかれた土が火事で崩れ落ちて蓋となり、ちょうど炭焼き窯のような状態になったのだ。

木製品は長時間にわたって1000度を超える高温で熱せられたとみられ、炭となった。もし炭化していなければ朽ちて腐敗し、他の遺跡と同様、後世まで残ることはなかった。

見つかった多数の木製品は盆、碗(わん)、皿、匙(さじ)、樹皮で出来たかごのような容器など。当時の人々の日常生活が立ちのぼってくるような資料ばかりだ。また、櫂(かい)とセットになった船のミニチュア製品もあった。形状から単純な丸木舟ではなく、構造船であったと推測されている。

特筆すべきは、「熊頭注口木製槽」と名付けられた船の形をした容器だ。端にヒグマの頭部が彫刻され、縁にはシャチの背びれが刻まれている。ヒグマの口が注ぎ口になっている。このほかにも動物をモチーフにした小物のような遺物は多い。骨や角などにアザラシ、シャチ、ラッコなどを刻んだりかたどったりしている。

出土した遺物の特徴について早稲田大学の菊池徹夫名誉教授(北方考古学)は「動物に対する信仰の念が顕著だ。熊頭注口木製槽はヒグマとシャチが刻まれている。擦文文化ではこうした動物儀礼の例は知られておらず、ヒグマを山の神(キムンカムイ)、シャチを沖の神(レプンカムイ)として敬うアイヌ文化に大きな影響を与えたのではないか」と指摘する。

発掘以来約30年にわたって木製品の復元にあたってきた羅臼町郷土資料館の涌坂周一元館長は「石器や土器と違って、どの木製品も初めて見るものばかりで、そもそも元がどのような形をしていたか想像することも困難だった。また、見つけた時にはさわるとボロボロに崩れてしまうような状態だった。オホーツク文化人の生活実態を知る手掛かりになってくれればと思う」と振り返る。

羅臼町がある知床半島はユネスコの世界自然遺産に登録されている。今回は松法川北岸遺跡出土遺物がオホーツク文化を復元、解明する上で貴重な資料という理由から重要文化財の指定を受けたが、オホーツク文化に続くトビニタイ文化は羅臼町飛仁帯(とびにたい)地区で出土した土器が名称の由来となっている。自然的特性だけではなく、歴史的に価値の高い文化遺産にも注目が集まることになりそうだ。

(本田寛成)

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