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都会っ子、自然が鍛える コーチの指導で親も安心

2015/9/20

子どもが木登りやキャンプを楽しむ自然体験活動が広がっている。親は子どものたくましさや積極性、学力が養われると期待。コーチの指導も親の安心につながっている。

群馬県北部のみなかみ町。9月上旬の日曜日、利根川沿いの一角で2組の親子が木登りを体験する姿があった。木の枝からつるしたクライミング・ロープを登り、地上約10メートルの木の上に降り立つという新しいタイプの木登りで、「ツリー・クライミング」「ツリーイング」と呼ばれる。

ツリークライミングを体験する親子連れ(群馬県みなかみ町)

「下ばっかり向くと怖くなっちゃうよ」。木登り体験を主催するモンキーマウンテンの小林英夫代表(41)の助言を受け、参加者は苦労しながらも木の上に到達。参加した東京都の小学1年生、丸山魁士君(6)は「最初はドキドキしたけど楽しかった。下を向くと怖いので上を向いて登った」。母親のいくみさん(36)は「登った後で息子の顔つきが変わった。頑張ることの大切さを知ってもらう良い機会になった」という。

■乗馬で森を散策

山梨県北杜市の小淵沢町。乗馬体験を手掛ける八ケ岳ロングライディングでは、乗馬で森を散策する「ホース・トレッキング」が人気で、親子の参加が約8割に上る。9月上旬、親子3人で参加した東京都の会社員、篠原友さん(44)は「動物とふれあうことで、息子(5)に命の大切さを感じてほしい」と話した。

人気のアウトドア体験はほかにパラグライダーや洞窟体験など様々。35種類のアウトドアを紹介するサイト「そとあそび」は全国約200社の情報を掲載。1人5千~1万円台のプランが多く、親子の申込件数は2014年までの5年間で6割増。15年1~8月は前年同期比6割増えた。

家族社会学が専門の中央大学の山田昌弘教授は「親は子ども時代にしたことがないこと、したくてもできなかったことを自分の子どもにさせたいと思う傾向がある」と話す。今の親世代が小学生だったのは1980年代以降。テレビゲームが普及し、インドアに傾く時代だ。「受験勉強にも忙しく、体験活動はぜいたく品と映る。子どもと一緒に楽しみたい気持ちもその延長線上だ」と分析する。

「近年は少子化で一緒に遊ぶ友達が少なく、公園でできない遊びも多い」と話すのは、博報堂こそだて家族研究所の脇田英津子・上席研究員。子どもに教える技能がない親も多く、インストラクター付きの体験活動が人気だ。

親が忙しく、子どもだけで外で遊ばせるのは危険だという風潮もあるが「安全性が確保できていれば問題ないという親が多い」と脇田氏。学童保育のキッズベースキャンプ(東京・世田谷)では今年のキャンプ参加者が1000人を突破し、5年前の2倍近くに達した。親は参加しないが、カウンセリングや救命などの技能を持つ「キッズコーチ」を配置し、安心感は強い。

■年収で参加に格差

自然体験の効果は大きい。国立青少年教育振興機構の調査では「何でもチャレンジしたい」「深く学びたいことがある」と答えた子どもは、自然体験が少ない子どもで18%、多い子どもで40%。達成感を味わい自信が身につくことが意欲・関心を高める。

国の「全国学力・学習状況調査」では自然体験のある児童生徒は自然体験のない児童生徒より、試験の正答率が高い傾向がある。子どもの体験活動に詳しい千葉敬愛短期大学の明石要一学長は「体験によって問題意識が生まれ、応用問題にも強くなる。『生きる力』が養われる」と話す。

ただ「家庭の経済格差が体験格差を生む」と明石氏。明石氏の調査では年収800万円以上の家庭は海や山で泳ぎやスキーをよく体験させるが、年収250万円未満の家庭は体験させない場合が多かった。経済格差が体験格差を生まない仕組みをいかに作るかが課題だ。

■自然体験見守る親は… 子供の成長、実感する声多く

ツイッターでは、子どもの体験を見守る親の姿が書き込まれていた。「息子らのパラグライダー見学中」のほか「ツリー・クライミング楽しかったようです。やりたかったな(笑)」と一緒に遊びたくなる魅力もつぶやかれていた。

一方、体験活動が子どもの成長につながるという認識は共通しているようだ。「娘がホース・トレッキングしたいとの事。自発的に『何かしたい』という事が珍しい子なので、ぜひ希望に応えてあげないと」「次女初のシュノーケル体験、マングローブ林のカヌー、鍾乳洞…と娘たちが新しい体験をできた」という。

「こどもの森サマースクール参加。ツリー・クライミング。2人ともたくましくなったね(涙)」と成長する姿に感激する声もあった。調査はNTTコムオンラインの分析ツール「バズファインダー」を用いた。

(福士譲)

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