高音質を手のひらに ハイレゾプレーヤーはこう選ぶ
価格帯別に注目4機種をレビュー
音楽CDを超える高音質な「ハイレゾ音源」を、いつでもどこでも楽しめる携帯型ハイレゾプレーヤーの人気が高まっている。ハイレゾプレーヤーは1万円台で買える入門機から、50万円もする超ハイエンドモデルまでと、価格帯が幅広い。そこで、ここでは製品選びのポイントと、価格帯別に代表的なハイレゾプレーヤーを解説する。
キビキビした動作も大事
初めに、プレーヤーを選ぶうえで共通するポイントを解説しよう。ポイントは「音質」「機能」「操作性」「拡張性」――の4つだ。
最も重要なのは、やはり「音質」(図1)。いくら使い勝手やデザインが良くても、音質に満足できなければハイレゾの意味がない。自分で納得できる音質なのかを見極めるには、好きな音楽を試聴してみるのが一番だ。
今回紹介する4機種は、すべてマイクロSDカードスロットを搭載している。試聴前にハイレゾ配信サイトで好きな曲やアルバムを購入し、マイクロSDカードに保存しておこう。CDをリッピングして「FLAC」などのファイルにしておいてもよい。1つのジャンルだけでなく、ロックとジャズ、クラシックといったように複数のジャンルを用意しておくほうが聴き比べやすい。
2つめのポイントは「機能」だ(図2)。バッテリー駆動時間は長いほど使いやすい。高音質をうたうプレーヤーほどさまざまな「高音質設計」を施しており、バッテリー駆動時間も短くなる傾向にある。自分の使い方に合ったバッテリー駆動時間なのか、確認しておこう。
ブルートゥース機能も便利だ。伝送時にハイレゾそのままの音質ではなくなるが、手軽にワイヤレスリスニングを楽しめるのは魅力的。Wi-Fi内蔵機種の場合は、NAS(ネットワーク接続のハードディスク)に接続して再生したり、ハイレゾ音源配信サイトから楽曲をダウンロード購入したりできる。
3つめの「操作性」は、音質と同様に、触ってみないとわからないポイントだ(図3)。曲選びや再生・一時停止、曲送り・曲戻しはしやすいか、ディスプレーの視認性は良いかなど、使ってみて確かめたい。タッチパネルを操作した場合のレスポンスが"もっさり"していると、使っていてストレスがたまる。キビキビ動作するかチェックしよう。
拡張性が高ければシステムアップの楽しみも
4つめのポイントは「拡張性」だ(図4)。今回紹介する4機種はすべてマイクロSDカードを挿してストレージ容量を増やせる。大容量のマイクロSDが使えれば、内蔵メモリーが少なくても十分補える。
ハイレゾプレーヤーの楽しみ方は、ヘッドホン・イヤホンを接続して聴くだけではない。光デジタル出力や同軸デジタル出力に対応するプレーヤーの場合、DAC内蔵のヘッドホンアンプにデジタル出力して音質や駆動力をアップするといった使い方もできる。
「AK380」の場合は、別売の周辺機器を接続してグレードアップできる。例えば、プレーヤーと一体化して駆動力をアップするアナログアンプ、単体でCDのリッピングを可能にするCDドライブなどが用意されている。
高級機はやはり高音質
現在のハイレゾプレーヤーは、大まかに4つの価格帯に分かれている。ソニーの「ウォークマンNW-A16」に代表される3万円以下のエントリーモデルは、初めてハイレゾプレーヤーを買う人にはちょうどよい。
10万円を超える価格帯には、「ウォークマンNW-ZX2」(ソニー)をはじめとして、音質重視の実力派がそろう。入門機と高級機の間の価格帯には、音質に定評がある「アステル&ケルン」シリーズのローエンドモデル「AK Jr」が登場し、注目された。
音質にとことんこだわるなら、50万円近い価格の超ハイエンドモデル「AK380」という選択肢もある。圧倒的なスペックに見合った高音質を堪能できる。
以下では、4つの価格帯で代表的なソニーのウォークマンとアステル&ケルンのプレーヤーをチェックしていこう。
コンパクトなボディーに高音質設計を凝縮
アルミダイキャストフレームや「高純度無鉛高音質はんだ」の採用など、音質を優先しながらも重さ約66gのコンパクトボディーを実現したハイレゾ入門機。音質は、骨太さには欠けるものの、ハイレゾならではの繊細なディテールをしっかりと描く。
従来機の「同F880」シリーズより解像感が増した印象だ。ディスプレーはタッチ対応ではないが、かばんの中にしまったまま操作できる使い勝手は随一。なお、64GBメモリーを内蔵する「同A17」もある。
パソコン用のUSB DACとしても使える
「AK100」や「AK120」などで採用していたWolfson製の高性能DACチップ「WM8740」を搭載。ライブ会場の空気感や女性ボーカルの色気などを堪能できる描写力は見事だ。
タッチ液晶の反応は若干もっさりした感じがあるものの、見やすくて操作しやすい。マイクロSDカードを追加すれば、内蔵と合わせて最大128GBまで拡張可能。音量調節ダイヤルも使いやすい。開放型ヘッドホンでも十分にハイレゾを味わえる駆動力の高さは大きな魅力だ。
ソニーの技術を結集したフラッグシップ
剛性の高い肉厚な切削アルミフレームや、金メッキを施した銅板のハイブリッドシャーシなどを採用し、高音質を追求した。従来機の「同ZX1」に比べて低域の重厚感が増し、解像感も向上している。透明感のある高音域も魅力的。
手に持つとずっしりと重さを感じるが、1日中再生できるスタミナは大きなアドバンテージだ。AKシリーズに比べるとアンプの駆動力は弱めだが、イヤホンや密閉型ヘッドホンなら問題ないレベルだ。
高性能DACをデュアルで搭載する
ハイエンドのUSB DACにも匹敵する高価格が話題を呼んだ。スペックはさすがに高い。旭化成エレクトロニクスのDACチップ「VERITA AK4490」を2個搭載し、バランス駆動にも対応。
ポータブルながら200フェムト(1000兆分の1)秒もの超低ジッターを実現する高精度な電圧制御水晶発振器を搭載する。その透明感と包み込むような空気感、音場の広さは比類ないレベルだ。価格は現実離れしているが、一度は試聴することをお勧めする。
(ライター 安蔵靖志)
(日経BPムック「これ1冊で完全理解 PCオーディオ 2015-2016」の記事を再構成)
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