C型肝炎に特効薬 3カ月で完治、費用負担少なく
国内に200万人いるとされるC型肝炎ウイルス感染者。国立国際医療研究センター国府台病院の溝上雅史肝炎・免疫研究センター長は、「このウイルスは針で皮膚を刺したり、外科治療などをしない限り感染しない。医療行為で起きる病気(医原病)ともいえる」と話す。
日本では西洋医学導入後の外科治療や予防接種のほか、戦後のヒロポン(覚醒剤)注射や買血によって拡大。1987年の抗体検査導入後は感染した血液が使われなくなったが、それまでに多くの人が感染した。
92年には体内のウイルスを消すインターフェロンの注射治療が始まったが、期待通りの効果は上がらなかった。ウイルスには複数の型があり、日本人患者の7割を占める1b型はインターフェロンが効きにくかったのだ。04年には作用時間が長く、より副作用が少ないペグインターフェロンと、飲み薬リバビリンの併用療法が登場したが、1b型では効果は約5割程度にとどまっている。
患者負担は月1万~2万円
状況が激変したのは2014年。溝上センター長は「C型肝炎ウイルスが試験管内で培養できるようになり、新薬開発が加速した」と話す。すでに5剤が発売されており、その最新薬が2015年7月に承認された「ハーボニー」だ。これは同年5月に2a、2b型の治療薬として発売されたソホスブビルに、レジパスビルという成分を加えたもの。1b型にも非常に高い効果を示す薬剤だ。
臨床試験では、初めて治療する患者だけでなく、他治療で効果がなかった人を含めても96~100%の人でウイルスが除去された。1日1回、1錠を12週間飲むだけでよい。「長期入院の負担や薬の副作用なしにウイルスを消失できる」と溝上センター長は新薬の普及に期待する。
問題はこの領域の新薬の薬価が1錠数万円以上と高額なこと。患者負担が大きくなる不安があるが、実は国全体で見れば肝がんを発症してからかかる医療費を抑制できるメリットがある。そのため、2015年8月31日からハーボニーは医療費の助成対象となった。助成対象となる治療期間は12週間で、患者負担は市町村民税(所得割)課税年額に応じて月1万円または2万円になる。
現代でも、若い世代でのC型肝炎感染が散見される。溝上センター長は「その多くが、ピアス、入れ墨などによる感染だと考えられる」と話す。一般的に手術、出産、胃カメラ検査などを受けるときには事前にウイルスの有無を調べるが、こうした経験のない人は一度、地域の保健所などで相談してみるとよい。多くの自治体で40代以上なら無料で検査が受けられる。
この人に聞きました
国立国際医療研究センター国府台病院内科系統括診療部門長、肝炎・免疫研究センター長。「C型肝炎の患者は高齢化しているが、治療することで肝硬変や肝がんによる死亡率などが下がることが調査で分かっている。よい薬が登場しているので、積極的に検査を受けて完治を目指してほしい」
(ライター 荒川直樹)
[日経ヘルス2015年10月号の記事を再構成]
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