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20代・30代の働く女性にも急増 子宮がんのリスク

2015/9/23

日経ウーマンオンライン

女性が能力を最大限に発揮して自分らしい生き方を実現するために、自身の体について正しく知っておくべきことがあります。今回は、女性特有のがんの一つ、子宮がんについて。特に20~30代では子宮頸(けい)がんが急増しています。女性の生き方を応援する産婦人科医・種部恭子さんに聞きました。

子宮がんには、子宮の出口付近(子宮けい部)にできる「子宮頸(けい)がん」と、子宮の奥の方(子宮体部)にできる「子宮体がん」の2種類がある。発生する場所も原因も全く異なるので、別のがんと捉えて、それぞれの特徴を理解しよう。

■子宮体がん:長期間女性ホルモンにさらされることでリスクが高まる

子宮体がんは、閉経後の50代以降に多く見られる。リスクファクターとしては、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣のほか、出産経験がないこともあげられる。女性の生き方が変わり、女性ホルモン(エストロゲン)にさらされる期間が長くなったことで子宮体がんになる人が増えている。また、未治療の月経不順も関連があるといわれている。

「若いときの月経不順も“不順だけど、くればいい”という問題ではありません。きちんと排卵を伴っていない月経不順の場合は子宮体がんのリスクが高まりますから、放置せずきちんと治療することが大切です」(種部さん)

■子宮頸(けい)がん:ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が要因

一方、子宮頸(けい)がんの発症にはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが関係している。これに感染すると、約1000人に1人の割合で子宮頸(けい)がんを発症するといわれている。

ヒトパピローマウイルスには100種類以上のタイプがあり、子宮頸(けい)がんの発生につながるのは16型、18型など約30種類のハイリスクタイプ。同じヒトパピローマウイルスでも、ローリスクタイプは「尖型コンジローマ」という、いぼができる病気と関連している。

このヒトパピローマウイルスは、性交によって8割の人が感染する。多くの場合は、感染しても免疫の力によって自然に排除されるのだが、なかなか排除されずに感染が持続する人が10%程度いて、そのうちの約10%に細胞の異常(前がん状態)が現れる。前がん状態になっても、全員ががんになるわけではなく、8~9割はウイルスを排除して正常に戻っていく。最終的に残った約1割の人が、がんを発症するのだ。

20~30代は「まだがんになる年齢ではない」と思いがちだが、決して人ごとではない。20代の発症率を見てみると、特に子宮頸(けい)がんになる人が1990年代以降、急増している。

「若い年代に子宮頸がんが増えているのは、性交開始年齢が早くなったことと関連があります」(種部さん)

日本における15~39歳の女性10万人当たりの婦人科がん罹患率

■子宮頸(けい)がんは「扁平上皮がん」と「腺がん」で性質が違う

子宮頸(けい)がんには、組織型の違いによって大きく2種類のがんがある。一つは「扁平上皮がん」で、子宮頸(けい)部の外側部分に細胞が層のように重なって皮膚とよく似た状態になっている扁平上皮部分にできる。もう一つは「腺がん」で、子宮頸(けい)部でも中側に近い、腺上皮というおりものを分泌する部分にできる。この二つはそれぞれ違う形でがんが発生してきて、性質も予後も全く異なる。

扁平上皮がんは子宮がん検診(細胞診)で発見しやすく、早期であれば部分切除で子宮を温存することができる。進行がんであっても放射線治療が効きやすく、5年生存率(II期)は約63%と比較的予後もよい。

腺がんは検診で見つかることは少なく、見つかったときには既に進行がんになっていることが多い。早期発見で部分切除ができた場合でも約20%に残存のリスクがあり、リンパ節転移も起こしやすい。進行がんに対する放射線治療も効きにくく、5年生存率(II期)は約48%だ。

扁平上皮がんに比べて早期発見も治療も難しい腺がんが、子宮がん全体に占める割合は約4分の1で、増加傾向にあることが問題視されている。腺がんの原因となるHPVは16型、18型が多く、若い年代のがんにこのタイプが多く見られるという。これを防ぐ唯一の手段がHPVワクチンだが、日本では2013年4月に定期接種化されたものの、副作用とされる症状の報告が相次ぎ、現在、厚生労働省はワクチン接種の積極的な勧奨を中断している。

■性交経験のある全ての女性は定期的な検診を

子宮頸(けい)がんは多くの場合、ヒトパピローマウイルスに感染してからがんに至るまで数年から10年程度かかる。その過程で、毎年検診を受けていれば、細胞に異常が現れた前がん状態で発見し、治療することができる。だからこそ、感染の機会があった人は年齢を問わず誰でも検診を受けられるようなしくみが必要なのだが、現状の制度では子宮がん検診の機会が人によって異なる。

公費で実施されている子宮がん検診の場合、住民登録のある自治体から郵送で個人宛に通知(検診券)が送られてくるが、この対象は、20歳以上の国民健康保険の被保険者と家族および社会保険被保険者の扶養家族で、最低2年に1回とされている。これに従って、各自治体が実施する年齢や自己負担を決めており、無料から4000円程度まで負担に差がある。

働いている女性の場合は、健康保険組合などが全額または一部を負担して職域で行うとされているが、これは「20歳以上の女性が年に1回実施するのが望ましい」という努力義務で罰則もないため、中には実施しないところもある。通知もなく、自分が対象かどうかさえ知らずに過ごしてしまう女性も少なくないのだ。

「働く女性がまだ少なく専業主婦が多い時代につくられたしくみのため、働く若い女性に対して検診のチャンスがあることが伝えられていないのです。日本の検診受診率は、若い年代で5%と、残念ながらとても低いのです」(種部さん)

性交経験がある女性は誰もがヒトパピローマウイルス感染の可能性があり、子宮頸(けい)がんのリスクを伴う。前がん状態や初期の子宮頸(けい)がんはほとんど自覚症状がないため、定期的な検診を受けることが大切だ。また、子宮体がんは子宮の出口付近を調べる検診だけでは発見できないこともあるが、初期症状として不正出血が見られることが多いので、40代以降でいつもと違う出血があったら子宮体がんの検査も受けるようにしよう。

自ら意識して行動しなければチェックする機会が得られないまま過ごしてしまう場合もある。正しく知って自分の体を守る健康管理を徹底していきたい。

この人に聞きました

種部恭子さん
女性クリニック We! TOYAMA 院長。平成2年、富山医科薬科大学医学部卒業。平成10年、同大学大学院医学研究科修了。富山医科薬科大学附属病院、愛育病院等を経て平成18年より女性クリニック We! TOYAMA 院長。専門は生殖医療、思春期、更年期、性差医療・女性医療。思春期婦人科診療や性教育をはじめ、女性を取り巻く社会問題に関する啓発活動も積極的に行っている。

(ライター 塚越小枝子)

[nikkei WOMAN Online 2015年8月31日付記事を再構成]

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