手作り作品が人気沸騰中 ネットで稼ぐ、私も作家

洋服やアクセサリーなどの作品をインターネットで販売する“手作り作家”が増えている。専門サイトも活況だ。自分のために作る趣味から、起業につながる道がみえ始めた。

そろそろ注文が増えるころだ――埼玉県の主婦、佐久間美弥子さん(44)は、家事の傍らミシンを踏む。手作り作品を販売するOCアイランド(東京・新宿)のサイト「tetote(テトテ)」で、入園・入学用バッグを販売。春の入園・入学シーズンに向け、秋からが“繁忙期”だ。

製作と販売を始めたきっかけは娘の幼稚園入園。バッグは園ごとに大きさが指定され手作りが前提だ。「苦手な人は大変だろう」と考えた。

佐久間さんのバッグを買った千葉県の公務員の女性(33)は、手作り専門サイトを愛用している。「仕上がりがきれいでぬくもりがあり、同じものが他にないのが魅力」。娘(7)と息子(6)と一緒に画面を見て注文する。

女性が多い出品者

2010年に開いたクリーマ(東京・渋谷)の「Creema(クリーマ)」をはじめ、過去5年で手作り専門サイトが相次ぎ誕生した。出品側の集客や買う側の商品検索が容易で、決済仲介などのサービスもあり、利用者が増えている。クリーマ、テトテ、GMOペパボの「minne(ミンネ)」、iichi(イイチ、神奈川・鎌倉)の「iichi」の出品者は、14年3月以降、計3倍に増えた。出品者の大半は女性だ。

9月初め、これら4サイトに掲載中の作品の価格帯と出品数(約400万件)から試算すると、出品総額は約155億円。首都圏近郊の百貨店の年間売り上げ規模に並ぶ。

神奈川県の主婦、椎橋真波さん(33)は、アートフラワーや人工パールで作るアクセサリーをミンネで販売。耳元で揺れる花のピアスなどが若い女性に人気で、今夏は「びっくりするほど売れた」。売り上げは月75万円に達した。

娘(6)が幼稚園のころに作ったヘアゴムがママ友に好評。娘が小学校に入り、自由な時間ができて、昨年11月にミンネに出品し始めた。材料費を売り上げから除くと手元に残る額はかなり減るが「購入者が写真付きでメッセージを送ってくれてうれしい」。

販路開拓も支援

主なサイトは出品者に写真の撮り方などを指南し、販路開拓も支援する。クリーマは大型イベントを年2回開き、今年は5万3千人を集客。イイチは百貨店などのバイヤー向け展示会に出展。2社は常設店舗も持つ。ミンネは都内に常設のアトリエを設ける。武蔵大の高橋徳行教授(起業学)は「教育や販売支援の機能があれば仮想の創業支援施設とみることもできる」。

出品者の大半は個人で、売り上げから材料費や専門サイトに払う1割前後の手数料を引くと、課税される年38万円超の所得に達する人は少数とみられる。だが、中には事業として取り組む人もいる。

イイチで着物や和裁の特長を生かした独自デザインの洋服を販売する小川昌美さん(34)は、高校生の頃から趣味で洋服を製作。独学で洋裁と和裁を学び、今は個人事業主として都内にアトリエを構える。目標は「日本の布や和裁の良さを洋服で生かし、和裁士や布作りに携わる人に新たな仕事を生み出すこと」だ。

法政大の西川英彦教授(マーケティング)は「商品の使い手が開発したものには、既存市場にない新規性がある場合がある」と言う。使い手は商品ニーズと同時に趣味など異分野の専門知識があり、組み合わせが創造につながる。

中小企業白書によれば、個人企業を含む日本の開業率は09~12年に1%台と低迷。高橋教授は「まず手の届くことをやってみて、徐々に事業を拡大する起業スタイルが注目されている。年数十万円の売り上げでも広義の起業。裾野が広がれば開業増加につながる」とみる。

欲しい物、自分で作っちゃえ 参入しやすさが急増の理由

「ハンドメイドの作品販売してるとこ発見してずっと見てる。既製品よりかわいいし! あちこち歩いて探すの苦手な私にピッタリ」。ツイッターでは、手作りの魅力に関するつぶやきが多い。

「散財しております」と、手作り作品を有料で買うことに抵抗がないことが市場を生み出す背景にある。一方「欲しいものが売ってないから、自分で作っちゃえ!」と、参入しやすいことが、手作り作家が増える一因だ。

売買したい人が簡単につながるのがネットの効用。半面、競争も激しい。「売る人が増えた、自分の作品が売れなくなっちゃう! なんて思うなら、まだ自信がないのかな。自分とこでしか買えないオンリーワン的なものがハンドメイドの魅力」。技術と独自性が大切。好きでなければ続かない。調査はホットリンクの協力を得た。

(大賀智子)

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