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働く母の姿を見た娘・息子が、次世代を作っていく ジェイ・ポナゼッキ在日米国商工会議所会頭

2015/10/2

日経DUAL

約1000社が加盟する日本最大の外国経済団体、在日米国商工会議所(ACCJ)が6月29日、女性の社会進出を後押しする方策を議論する「ウィメン・イン・ビジネス・サミット」を開催しました。ACCJのジェイ・ポナゼッキ会頭は、自身も国際的な商取引案件を扱う弁護士として活躍するキャリア女性。彼女自身の経験もふまえ、女性リーダーが活躍する社会をどうめざしていくべきか、羽生祥子日経DUAL編集長が聞きました。

■女性管理職の30%目標、不可能とは思わない

―― 日経DUALの読者は主に母親ですが、35%は父親です。女性リーダーが活躍するために、男性リーダーがすべき重要なことは何だと思いますか。

「変革を担う男性リーダー」というテーマで行われた「ウィメン・イン・ビジネス・サミット」の昼食講演会では、トップがイニシアチブを取ることの意義が伝わったと思いますし、私もまさにそれが重要だと考えています。

ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のデイビッドさんは、情報交換をきちんとすること、モチベーションを上げることが重要だとおっしゃっていました。たとえば外部でいいアイデアを見つけたら、それをきちんと持ち帰り、自社でも実行できる形に落とし込むことが大切だと。そのためにはさらに透明性も必要だと思います。透明性をもって女性が活躍する場をつくっていく施策を打ち出し、実行することができれば、それによってモチベーションも上がり、全体が進んでいくのです。

人々が集まって情報共有をし、現状の課題を乗り越えていくためのベストプラクティス(最善の方法)や、知識の共有をしていく。これはまさに我々商工会議所が進めてきた柱に沿うものです。これによって、2020年までにマネージメントあるいは取締役レベルまでにおいて、女性の割合を30%まで増やすという目標にも近づくことができます。

(写真:鈴木愛子)

―― 女性の活躍を推進するうえで「健全な競争」はキーワードの一つになると思います。しかし正直言ってそれは簡単なことではありません。女性管理職の30%達成というのは、実際のところ日本企業において可能だと思いますか。

現実にはもちろん色々な課題がありますが、目標を設定することによって、日本企業が自社の中で最大限の努力をすることが重要なのです。安倍首相が成長戦略の中でウーマノミクスをうたってからまだそれほど時間が経っていません。それを思えば非常に色々な努力が出てきているし、希望が持てると思います。我々としてもどんどんサポートしていきたいです。

消費者の半分は女性であり、企業においてはデザインにしろサービスにしろ消費財にしろ、女性を抜きにして考えることはできないという流れになってきています。それに加えて日本は女性の教育レベルが非常に高い。教育を受けた女性のプールがあるということが、今後女性リーダーを増やしていく準備にもなるし、今起こっている他の変化と合わせると、おそらく2020年までの目標達成は不可能ではないと私は思っています。

昨年内閣府が行った世論調査によると、49.4%の人が「女性は家事をし、男性は外で働く」ということに反対だそうです。たかだか50%と思われるかもしれませんが、2年前の2012年の同じ調査に比べると4.3%上がっている。これは非常にポジティブに受け止めるべきです。

日本には社会的、構造的に「女性は家庭」という発想にさせてしまう要因がありました。その一つは女性が必要な支援を受けて来られなかったことだと思います。キャリアを追求したいけれど、家庭の中まで誰も支援をしてくれなかったという現実がある。ACCJではこれを解決する一つのアイデアとして、外国人の家事労働者を受け入れることを提案しています。移民法の改正が検討されていて、特区の一部では試験的に始まっています。我々としては特区以外でもこの制度が成立できるように進めたいと考えています。

もう一つは学童保育に関する制度整備だと思います。小学1年生から3年生は学童の対象になるが、4年生になって急に預けられなくなるということは、キャリアを選ぶことを難しくします。我々が学童の年次を6年生まで延ばすことを提案したところ、政府がその方向で動いてくれたということで、喜ばしく思っています。

―― 日本の企業では今、出産育児休暇の問題にも関心が集まっています。

多くの外国企業、日本にある外資系企業ではいわゆる女性の産休育休だけでなく、男性にも育休があります。これをもっと使うよう奨励する必要があります。たとえば私が働くオフィスの場合、アメリカ人の男性弁護士が育休を取った先例があったので、日本人の男性弁護士もきちんと休みを取り始めています。こんなふうに実践すること、特にトップの人が示すことによって、下の人も取りやすくなる。取ってもいいんだという理解が広まり、モラルが上がっていくのです。

昼食講演会でメットライフのサシンさんから、「朝9時の定例ミーティングでは女性が保育園の関係で間に合わない」という話がありました。これは、男性がもっと保育園に子どもを預ける役割を果たして、多くの男性が9時では困るということになれば、スタートが9時半になるかもしれません。そういった意味で、男性の子育てへの参画をもっと求めていくべきです。

■「あなたの名前は女の子なんだからジョイよ」と言われ

―― 会頭ご自身が私達にとっては輝かしいロールモデルです。よい女性リーダーになるうえで、女性ならではの強みと弱みは何だと思いますか。

(写真:鈴木愛子)

はじめに個人的な体験を少しお話しします。「ジェイ」という私の名前は男の子の名前なのですが、小学校に入学した最初の日、先生は「あなたの名前は女の子なんだからジョイよ」と言ったのです。そこだけで会話が20分くらい続き、「先生も間違えるのだ」という印象が強く残りました。また私はフィギュアスケートをやっていたのですが、「あなたは背が高いから細かい動きはできない」などと、可能性にふたをしてしまうコーチもいました。身長や名前といったものにとらわれて制限をかけることに私は抵抗したいし、他の女性に対しても、自分に限界を設けずにチャレンジしてほしいと思ってきました。

仕事について言うと、私が学校を出て弁護士になった当時、お手本になる同世代の女性弁護士はあまりいませんでした。そこで私はクライアントや隣の席に座っている弁護士など、様々な人から自分に対するコメントを聞くようにしてフィードバックを集めました。ロールモデルがいないと言ってしまった時点で、もしかするとそれは制限をかけることになっているかもしれません。一歩下がって広い目で見てみると、よいインプットをもらえる人はまわりにたくさんいます。

強みという質問について、男女の違いを切り口に話をするのは好きではないのですが、非常に一般化して言ってしまうと、女性の方が聞く耳を持っているかもしれません。かつては男性が一日中、自分達の話をしていて、それを横で聞いているのが女性の立場でした。これも私の経験から言うと、交渉の場やクライアントとの話し合いの場において「この人はよく聞いているな、理解しているな」と思ってもらえることが、信頼を構築する一つの鍵になります。私が話をよく聞いていることに気付いたクライアントは、重要な問題を男性弁護士ではなく私に相談してくれるようになりました。聞き上手であることは女性ならではのアドバンテージになると思います。

個人的には弱みの話をするのは好きではありませんが……。あえて言うと、これもJ&Jのデイビッドさんがおっしゃっていたことですが、エグゼクティブのメンバーが後継者世代の人達に「会社でどんなことがしたいか」と聞いても、女性からはなかなか回答が返ってこないということがよくあります。遠慮だとか、実際にそこまでキャリアについて考えていないとか色々な理由があるのでしょうが、ぜひこれは言葉にして伝えていくべきだと思います。言わなければあなたの意思を上司が知ることはないし、一方で男性は、トイレやコーヒーブレイクなど色々な機会で上司に「こんなことがしたい」とアピールをし、「こんなチャンスがある」といった情報も得ているかもしれません。

■困難に行き当たったら、自分の発想を数歩下がって見る

―― 様々な困難を抱えながら働く母親として頑張っている方に向けて、メッセージをお願いします。

達成する価値のあるものというのは、往々にしてその道のりは困難です。困難に行き当たったときには自分の発想や考え方を数歩下がって見てみてください。まずは自分に対して質問をしてみます。前提条件だと思っていることが、実は違うかもしれないのではないか。自分に制限をかけているものは何なのか。そして、何が自分にとって一番大事なのか。時には優先順位を変えなければいけないこともあるかもしれません。今はグローバル化が進んでデバイスも発展しているので、仕事がエンドレスで降ってくるという状況があります。そういう現実の中で、先ほどの問いを常に自分に投げかけてみることが大切です。

今は将来に向かって変化を起こしていける、ある種非常に意味深い局面にあると思います。端的に言うと、たとえば仕事をしている母親は自分の娘に対して、将来大人になったときに仕事か家庭かどちらかではなく、両方選べるという前提を作り、次世代のロールモデルになることができる。息子に対しても、働く母親を見て育つことで、将来職場で女性の同僚に接したり、女性の部下を指導したりするときのあり方に影響を与えることができるのです。

(ライター 谷口絵美)

[日経DUAL 2015年8月12日付の記事を再構成]

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