「好きな服」と「似合う服」は違う 自分に合う装いとは

日経ウーマンオンライン

女性の大きな楽しみのひとつ、ファッション。一方で、どんな場面でどんな服を選べばいいか、意外と悩むことも多いのではないだろうか。
 政近準子さんは、日本初のパーソナルスタイリスト。芸能人のような特別な人だけでなく、一般の人にもアドバイスを行っている。「好きな服と似合う服が一致する人は、実は少ない」と政近さん。「その人の魅力を引き出すファッションで、人生も変わる。逆に、合わないファッションだと外見で損をすることもある」と言う。自分に似合うファッションの探し方を教えてもらった。
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――パーソナルスタイリストとは、具体的にどのようなことをするのでしょうか。スタイリストというと、著名人のパーティー衣装を選んだり雑誌の撮影のコーディネートをしたりというイメージですが。

政近さん:一般の人が、通常の生活の中で輝くためにファッションのアドバイスをするのが仕事です。「どうなりたいか」をヒアリングして、ファッションの側面からそれを実現するためのお手伝いをします。

結婚式など「ここ一番」という晴れの場のことだけではありません。例えば「普段の仕事でどんな服を選べばいいか」「子供の幼稚園のお受験のとき、何を着ていけばいいか」「乳がんで乳房をとった人が快適に過ごせる服をどう選ぶか」といったことです。お受験の服装も、受験する幼稚園によって違います。「どこに受かりたいのか」を聞いて、そこに合う服装を提案するわけです。病気で入院している方がいたら、コットンの優しい肌触りのパジャマを探して届けるのも仕事です。単に「センスのいいファッション」をお教えするわけではありません。スタイリストというと派手な世界というイメージがあるかもしれませんが、私が行っているのは、非常に地道なことなんです。

こんな例もありました。ある40代の女性が、「今度、昇進試験なんです。昇進させてください」と駆け込んでこられました。肩に力が入って、最初は何を言っても「細かいことはいいから、何を着たらいいのか教えてください」と、取り付く島もない感じでした。そこからわかってきたことは「彼女は自分に自信がないのだ」ということ。仕事はできるでしょう。でも、部下や周りの人からよく思われていない。チームとして仕事をしていくことに自信が持てないのです。そのことを伝えたら、大泣きでした。そこから彼女は変わっていきました。最終的には自分に合うファッションをまとって、希望通り昇進しました。

ファッションには人生を変える力があると思いますが、服だけに頼ってもダメ。本当の悩みに向き合わないと、必要な服を選べないんです。

――確かに、着るもので気分が変わる、ということは感じていましたが、ファッションの力は大きいのですね。

政近さん:そうですね。その人の「中身」が変わると、選ぶ服も変わってきます。

――なぜ、一般の人を対象にしたパーソナルスタイリストという仕事をしようと思われたのですか。

政近さん:イタリアにいたとき、パーティーに着ていく服を選ぶなど、個人のファッションのアドバイスをしてくれる人がいることを知りました。日本にはないことだったので、衝撃でした。これから絶対必要になる、そう思ったことがベースにあります。

イタリアから戻った後、仕事は順調でした。結婚、出産を経験し、充実した日々を送っていました。パーソナルスタイリストとしての仕事も、合間に少し手掛け始めてはいました。

そんなとき、病気になったんです。それも、難病指定されている病気です。薬の副作用もあって、肌がドロドロになりました。出かけると、周囲の人の視線が痛い。「醜いと思われてるんだろうな」と思うと、いたたまれない気持ちでした。「見ないで」と、心の中で叫んでいましたね。

「なんで私がこんな大変な目に遭わなきゃならないんだろう」。悲観してこもっていたんですが、あるとき、主人が「かわいそうに…。代わってあげられたら」と泣いているんです。そこでハッとしました。「ああ、自分だけが大変だと思っていたけど、家族も大変な思いをしてたんだ。迷惑掛けてたな」と。

そこで、気持ちを奮い立たせ、おしゃれして出掛けてみたら、視線を感じない。だれも私を注視してないんですよ。ファッションの力をあれほど感じたことはなかったかもしれませんね。自分自身が自信を持てるファッションを取り入れることで前を向くことができたのだから、自分のように悩んでいる人の手助けをしたいと思ったんです。それが一番大きなきっかけでした。

――そんなご経験から「ファッションレスキュー」を提唱されるようになったのですね。

政近さん:24時間、365日、受け付けています(笑)。

――「似合う服」を選ぶコツはなんでしょうか。

政近さん:「似合う服を選ぶ」のは、難しい。実は「好きな服」と「似合う服」が一致する人は、少ないからです。「似合う」というのは「人から見て、その人のキャラクターに合っている」と感じられること。「自分で思っている自分のイメージ」と「人から見た自分のイメージ」が一致していれば、「似合う服」を選べるわけですが、客観的に自分のことを判断するのは難しいですからね。

下のチャートで、自分のイメージに合うと思う言葉に丸をつけてみてください。そして、周りの人にもあなたのイメージに合うものを選んでもらってください。それは、どのくらい一致するでしょうか。

いかがですか。自分が自分に抱いているイメージと、周りの人が選んでくれたイメージにズレはあったでしょうか。そのズレを近づけていくことが「似合う」への一歩です。客観的にみた「着る人のイメージ」と「ファッションのイメージ」が一致すること、それが「似合う」ということです。

では次に、自分のファッションテイストを考えてみましょう。次の「8つのファッションテイスト」は、日本で1万人以上の方のスタイリングをしてきた経験から導き出したメソッドです。自分のテイストを知ることでそれぞれに似合う素材や色、デザインのディテールなどのヒントが得られます。自分がどのテイストに当てはまるか、診断方法とその詳細は『「素敵」の法則』で解説していますが、その一部をここで紹介します。

ノーブルフェミニンタイプ

上品・繊細・優雅・やさしげ・女性らしい・柔らかい

色が白く、顔の輪郭はなめらかな卵型、顔の彫りは浅めで、少し古風な顔立ちの日本美人タイプ。やせ型~中肉で、体つきは平面的な人が多い傾向です。おっとりした雰囲気で、真面目な純粋さを感じさせる人ですが、少し天然気質なところもあり、ふんわりとした魅力を醸し出しています。 このタイプの人の品の良さ、やさしげな魅力は、薄手のしなやかな上質素材、上品で女性らしいデザインで引き立ちます。

キャリアクラシックタイプ

きちんとしている・知的・清潔感・洗練・信頼感・落ち着き・シック・伝統的

落ち着いた大人顔で、黒目の印象が強いインパクトのある目の人と、小さめで穏やかな目の人がいますが、どちらも知的で、真面目でしっかりしているイメージです。体型はやせ型~中肉の人が多く、自立心があり冷静、知的好奇心旺盛で勉強熱心な人です。このタイプの人の、知的できちんとした雰囲気は、ぱりっとした張りがある素材や、ベーシックで無駄がない、直線的なデザインで引き立ちます。

マニッシュクールタイプ

りりしい・自立・ハンサムウーマン・格好よい・都会的・クール

切れ長の目、直線的ではっきりした眉、シャープなあごのラインなど、直線が効いている顔立ちで、顔のパーツは大きめ。首と手足が長く、体の厚みは薄めですっきりして、カッコいい印象の女性です。性格的にもはっきりした、自立心が強い人が多い傾向があります。このタイプの人のきりっとした魅力を強調するのは、クールでマニッシュな装いです。白シャツにジレを羽織り、パンツを合わせるといったスタイルです。

アジアンスマートタイプ

東洋的・ミステリアス・ドラマチック・シャープ・モード・モダン

涼しげなまなざし、カーブを描く眉、ほっそりしたあごで、女性的でオリエンタルな印象が強い顔立ち。細身で女性らしい曲線を描く体つきと相まって、控えめですが凛とした自分を持っている、アジア美人の雰囲気があります。このタイプの人の魅力は、しなやかで光沢がある素材や、体の線を生かすスマートでモダンなデザインで、ミステリアスな雰囲気を醸し出すと引き立ちます。シャープなデザインのモード系の服や、アジアンテイストが現代的エッセンスで取り入れられた服が似合います。

アクティブキュートタイプ

活動的・元気・親しみやすい・キュート・ガーリー・ユニーク・ポップ

顔のパーツや輪郭、体型などに丸みがあり、少し幼さを感じさせる、愛嬌がある顔立ち。キャラクター的には、明るく好奇心旺盛で活動的。いくつになっても少女のような一面を持ち、年齢より若々しく見えます。このタイプのキュートさ、親しみやすい魅力は、カジュアルで動きがあるデザイン、明るい色使い、柄物、装飾が多いにぎやかな印象のファッションで引き立ちます。

ニュアンスボーイタイプ

ナチュラル・リラックス・ボーイッシュ・アーティスティック

色が白く、肌のきめが細かく、顔のパーツは小さめ。体つきは平面的です。顔の表情は静かで、あまり動かない印象です。人と少し違った、独自の世界を持っている人が多い傾向です。このタイプの少年のように透明感のある魅力は、ナチュラルでリラックスした、ボーイッシュなスタイルで引き立ちます。襟が開いたデザインのシャツを袖をまくってさらりと着て、裾をロールアップしたパンツと合わせるといったスタイルが似合います。

ワイルドシックタイプ

ワイルド・スポーティー・迫力・大胆・シック・ゴージャス・リッチ感・色香

頬骨が高く、日焼けが似合う引き締まった顔立ち。体つきも筋肉質で引き締まっているか、しっかりした骨格で、体に厚みがあります。背は中背~高い人が多いですが、小柄な人もいます。キャラクター的にはサバサバしていて、おおらかな姉御肌の人が多く、野性的な魅力の持ち主です。顔立ちや体型から醸し出される、ワイルドで大胆な雰囲気を生かすのは、ミラノマダムのような、シンプルな着こなしでリッチ感のあるスタイルです。

エキゾチックセクシータイプ

エキゾチック・南国・野性的・開放的・華やか・コケティッシュ・セクシー

健康的な肌色で、顔のパーツが大きい人と小さい人の2タイプがいます。筋肉質で引き締まった体型ではありますが、たとえグラマーであっても肩幅は狭め、華奢でコケティッシュな印象があります。明るく情熱的で、親しみやすいキャラクターの持ち主です。このタイプの人の、どこかエキゾチックでセクシーな魅力を生かすのは、露出度高め、大胆な柄、鮮やかな色などを取り入れた、南国風の華やかなファッションです。

[注:ファッションテイストは『「素敵」の法則』より引用]

ファッションは「おもてなし」です。人は、外見で判断されている部分が大きい。外見で判断されるということは、自分自身に似合うものを理解すれば、自分の魅力が最大限発揮できるということなんです。外見から、その人の中身まで垣間見えますからね。それが、服装の持つ本来の力です。

人生を輝かせるために、ぜひファッションの力を生かしていただきたいですね。

政近準子(まさちか・じゅんこ)さん
 パーソナルスタイリスト。(有)ファッションレスキュー社長。パーソナルスタイリストプロ育成校 PSJ学院長。大手アパレルメーカーのデザイナーとして活躍後、25歳でイタリアへ移住する。帰国後、2001年に起業し、日本で初めて、タレントやモデルだけではなく一般の人を対象にしたスタイリングを提案。政治家・会社社長・管理職・起業家などの富裕層をはじめ、幅広い層の顧客を指導する。1万人以上をみてきた経験に裏打ちされたスタイリング術は、絶大な人気を誇る。著書に『「似合う」の法則』(発行/ホーム社、発売/集英社、価格/1400円)、『働く女性のスタイルアップ・レッスン』、『一流の男の勝てる服二流の男の負ける服』、『人生は服、次第。』、『チャンスをつかむ男の服の習慣』。

[nikkei WOMAN Online 2015年5月15日付記事を再構成]