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トレジャーハンターの夢 ロストダッチマン金鉱

2015/9/20

ナショナルジオグラフィック日本版

 戦乱や災害、盗難や事故などで失われた大切な人類の財産。王室や貴族の秘宝だけでなく、貴重な絵画、音楽、文学などの芸術作品、古代の文明や都市、伝説上の人物、特殊な技術や知識に企業秘密。もう二度と見ることのできない人類の失われた財産と、その謎に迫る。
ロストダッチマン鉱山の物語は、たくさんの冒険家やら相場師たちをスーパースティション山地へと引きつけた。中には手痛いツケを払わされた者もあった。もし金鉱が実在したとしても、彼らの屍を踏み越えて採掘するにはかなりの勇気がいるに違いない。(Photograph by Ashiga/Shutterstock)

 ロストダッチマン金鉱は、一獲千金を夢見るトレジャーハンターたちを、今も引きつけてやまない。その場所についてはさまざまな推測があるが、言い伝えによれば、アリゾナ州にあるスーパースティション(“迷信”という意味)山地のどこかだという。伝説やら謎やらが渦巻く場所に、これほどうってつけの地名があるだろうか。

 ジェイコブ・ワルツはダッチマンと呼ばれていたが、実はオランダ人ではなかった。1810年にドイツで生まれ、1839年に移民として米国ニューオーリンズに渡ってきた。その後、金鉱で働きながら1861年に米国籍を取得、1868年あたりからはアリゾナ州のスーパースティション山地で金鉱探しの仕事を請け負っていたと見られている。

 1891年にワルツが死ぬと、少しして彼の晩年の世話をしていたジュリア・トーマスという女性が金鉱探しの一行を率いてスーパースティション山地へと向かった。ワルツが彼女に何を話したのかはわからないが、ジュリアが金を見つけられなかったことだけは確かだ。

 やがて彼女がいい加減な宝探しの地図を売る小さな店を始めたのも、失敗に終った金鉱探しの費用を穴埋めするためだった。1895年を迎えるころには、ダッチマンの消えた金鉱の話は勝手に独り歩きを始めた。その一つのきっかけは、フリーライターのP・C・ビックネルが次々と書き下ろしたセンセーショナルな記事だ。彼はジュリア・トーマスに大金を払ってインタビューし、想像で話を膨らませていった。

 物語には次第にこと細かく尾ひれが付き、金鉱には呪いがかけられているという話まで加わった。ワルツが残した宝の在りかの手掛かりだという謎の文言も盛り込まれた。例えば「金鉱掘りには私の金鉱は見つけられない」「私の金鉱を見つけるには牛舎の前を通らなければならない」「金鉱の入口には夕陽が差し込む」などだ。

 金鉱探しの騒ぎの中で命を落とす者も多かった。アドルフ・ルースという人物は1931年に行方不明になり、5年後に発見された彼の頭蓋骨には2発の銃弾で打ち抜かれた跡があった。

 地質学的にいえば、スーパースティション山地に金鉱が存在する可能性はあまりないが、アリゾナ州全体には有名な金鉱地帯が点在している。ロストダッチマン鉱山は本当にあったのだろうか。存在をはっきり否定する決定的な証拠が見つかるまでは、多くの人々が金鉱の存在を信じ続けることだろう。

(参考)戦乱や災害、盗難や事故などで失われた大切な人類の財産。王室や貴族の秘宝だけでなく、貴重な絵画、音楽、文学などの芸術作品、古代の文明や都市、伝説上の人物、特殊な技術や知識に企業秘密。ナショナル ジオグラフィック『絶対に見られない世界の秘宝99』は、もう二度と見ることのできない失われた財産の謎と、秘宝探索の手がかりに迫ります。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック『絶対に見られない世界の秘宝99』を再構成]

絶対に見られない世界の秘宝99 (NATIONAL GEOGRAPHIC)

著者:ダニエル・スミス
出版:日経ナショナルジオグラフィック社
価格:2,376円(税込み)


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