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ヒット総研の視点

第3次おひとりさまブーム 「私の時間が必要」は9割 日経BPヒット総合研究所 佐藤珠希

2015/9/10

日経BPヒット総合研究所

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今回のキーワードは「第3次おひとりさまブーム」です。これまでも、働く女性がひとりの時間を大切にするブームはありましたが、今回はより幅広い世代の女性たちが、様々な行動にひとりで臨んでいるようです。
カフェや飲食店でひとり時間を過ごす働く女性が増えている

ひとり時間を大切にする女性が増えている。働く女性のための月刊誌『日経WOMAN』が実施した読者調査(2015年4月に日経WOMAN公式サイト上で実施。556人が回答)によると、働く女性が平日ひとりで過ごす時間は、平均4時間6分。同様の調査を実施した2011年より、約30分長くなっている。ひとりの時間が「必要」と答えた女性は、88.1%にのぼった。

ひとり時間を求める理由で最も多かったのは、「好きなことや趣味をして気分転換をしたいから」(69.2%、複数回答)。次いで「気兼ねなく休み、疲れを癒やしたいから」(68.8%)が挙がった。

「仕事でクタクタになると、ひとりごはんをしたくなる」(27歳、メーカー・事務)、「人と接する仕事でストレスをため込みがち。そんなときはひとりで美術館巡りやショッピングを楽しむ」(36歳、出版・営業)。仕事の疲れや人間関係のストレスを、ひとりになってリセットしている女性が多かった。

■スマホとSNSが女性のひとり行動を変えた

ひとりの時間を確保したいと願う働く女性が増えている最近の傾向を、女性のライフスタイルに詳しいマーケティングライターの牛窪恵氏は「第3次おひとりさまブーム」と位置付ける。

牛窪氏によると、「第1次おひとりさまブーム」は、男女雇用機会均等法第一世代が牽引した2004~2005年ごろ。ホテルでのおひとりディナーやエステなど、本物志向、ラグジュアリー志向が強く、自分へのご褒美という意味合いも大きかった。

続く「第2次ブーム」は2008年~2009年。団塊ジュニア世代が主役となり、カフェブームや立ち飲みブームなど、カジュアルなひとり時間の過ごし方がトレンドになった。

そして最近の「第3次ブーム」では、幅広い世代の女性たちが、食事からエンターテインメントまで、様々な行動にひとりで臨むようになった。その背景にあるのが、スマートフォン(スマホ)とソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の普及だ。

「すきま時間ができると、スマホで検索をして話題の場所に足を運んだり、新しいお店を開拓したりと、ひとりの時間を積極的に活用する女性が増え、行動の幅が広がった」(牛窪氏)。加えて、「ひとり=寂しい」というイメージを大きく変えたのが、SNSの存在だ。いつでもどこでも他者と緩くつながり、共感し合えるSNSの存在により、女性がひとりで行動することのハードルが下がった。

日経WOMANの調査では、ひとり時間を「楽しい」と感じている人が8割近くに達したのに対し、「寂しい」というイメージを持っている人は2割程度。「ひとり時間」に対するイメージは、よりポジティブな方向に変化している。

SNSの普及には別の影響もある。常に他者とつながり合い、気遣うことを求められる風潮の中で、「SNS疲れ」を感じる女性が増加。「特にLINEが普及してからは、周囲とのつながりを気にしすぎて疲弊している女性が、若い世代を中心に増えている。その結果、ひとりになる時間を持ちたいと考える女性が増加した」と牛窪氏は分析する。

■「ありのまま」を取り戻す

女性の利用者が増えているひとりカラオケ専門店「ワンカラ」。女性客のみを案内する女性優先ゾーンがある店舗も(写真は渋谷ちとせ会館店)

こうした変化の中で、女性のひとり時間の過ごし方も多様化。「ひとりごはん」「ひとり飲み」はもちろん、「ひとりカラオケ」「ひとり花火」「ひとりディズニーランド」まで、従来は友人や恋人と一緒に楽しむのが当たり前だった行動を、ひとりで楽しむ女性が増えた。

都内を中心に10店舗を展開するひとりカラオケ専門店「ワンカラ」は、この1年で客数が前年比1.5倍に増加した。特に女性客の伸びが顕著で、女性比率は65%に達している。きっかけは、2014年のディズニー映画『アナと雪の女王』のブーム。「アナ雪の主題歌をひとりで歌いに来る女性が増えたことに加え、『ひとりカラオケが趣味』と公言する女性タレントやモデルが相次いだ。

誰にも気を使わずに歌えるし、SNSで発信すれば外ともつながることができる。繰り返し来店する女性も多い」とワンカラを展開するコシダカホールディングス広報。女性数人のグループで来店し、各々がひとりカラオケを楽しんだあと、再びロビーで集合、というケースも目立つという。

画面に向かって椅子に座り、ヘッドホンをつけて歌う。渋谷ちとせ会館店で人気の「女性パック」は3時間1700円(平日)

旅行業界でも「おひとり旅」の存在感が増している。リクルートライフスタイルが実施した「じゃらん宿泊旅行調査2015」によると、国内宿泊旅行における2014年度の「一人旅」の割合は15.9%。2004年度の調査開始以来、過去最高となった。

SNSを使いこなす20~34歳の世代で最も高く、男性で26.9%、女性で12.6%に達している。日経WOMANの読者調査でも、4割以上が「ひとり時間で国内旅行に行きたい」と回答。「仕事で嫌なことが重なると、有給休暇を取ってひとり旅に出る」(31歳、医療・経理)、「実家暮らしでひとりになる時間がないので、連休はよくひとり旅をしている」(27歳、IT・事務)など、リセット目的でひとり旅をする女性が目立った。

職場や家庭、地域社会で、様々な役割を担う女性たち。女性活躍推進の風が吹き、素敵なワーキングマザーが一つの理想とされる中、働く女性たちが「やるべきこと」も、「気を遣うべき相手」も、どんどん増えていく。そんな時代にあって、「働く女性がひとりで過ごす時間は、自分自身を取り戻すためのシェルター的な役割を果たしている」(牛窪氏)。

かつてない切実さをもって訪れた「第3次おひとり様ブーム」。働く女性たちが、誰にも邪魔されず自分と向き合うため時間や空間、サービスを求める傾向は、今後一層強まっていきそうだ。

佐藤珠希(さとう・たまき)
日経BPヒット総合研究所上席研究員、日経BP社ビズライフ局長補佐。毎日新聞社、ベネッセコーポレーションを経て、2004年日経BP社入社。『日経WOMAN』『日経EW』『日経マネー』各編集部を経て、2009年『日経WOMAN』副編集長、2012年『日経WOMAN』編集長。2015年1月から現職。
[参考]日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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