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名刺を渡したことからストーカー被害にあったら

2015/9/7

日経ウーマンオンライン

Question: 私は前職で個人向けの営業職を務めており、その際に自分の名前の入った名刺を配っていました。ある男性のお客様に大変気に入られてしまい、私の名前からプライベートなSNSや住所などを調べられ、ストーカーをされました。その件がきっかけとなり、職を変えたのですが、今度の仕事も営業職ということもあり名刺は作らなくてはいけません。新しく名刺を作るときに、営業で使用する名前を偽名にしてもらうことや、フルネームではなく名字だけの記載にしてもらうことは可能でしょうか。(20代・女性)
(C)Pixta

Answer: 結論からいうと、本名でない名前の名刺を使ってビジネスをすること自体が法律に違反するわけではありません。

本名ではなく、通名や屋号で取引することはよくありますよね。法律上、取引には本名を使うべし、というような一般的なルールはありません。「その人」と取引していることがはっきりわかることが重要で、名前はその手がかりに過ぎないから、名刺に記載するのが本名でなくても構わないのです。また、単なる名刺は文書にあたらないとされ、私文書偽造罪にも該当しません。

ただし、肩書を偽ったり、別の人に成りすましたりするのはいけません。使った肩書や他人の名声などが取引の成否にとって重要な意味を持つ場合には、ビジネスの相手に対して不誠実であるだけでなく、詐欺に当たることさえあります。要するに、名前や肩書のウソによって、実質的には、実績・能力や権限など、取引相手が重視することについてウソを言い、実際に取引をすると詐欺罪が成立する場合がありますので注意が必要です。

また、一定の資格や職業については、実際にはそれがないのにあるかのようにして営業活動をすると、弁護士法や軽犯罪法などに当たることもありますので、名刺につける肩書には十分気を付けましょう。

さて、ご質問の方については、プライバシーを守り、ストーカー被害を避けたいとの理由から偽名にすることなどを検討されているのですから、基本的には法律上の問題はないといえます。

ただ、法律上の問題はありませんが、会社にそれを要求できる権利があるかというと難しく、基本的には会社次第ということになるでしょう。本名を明かすことが誠意を相手に見せる第一歩だ、という感覚の会社もあるでしょう。名字だけの名刺については、「どの佐藤さんなの?」というように、担当や責任の所在が不明確になるといった問題はありそうです。そのため、偽名や名字だけの名刺は会社が認めてくれない可能性もあるということは知っておいてください。

ところで、今回のご質問は、ご自身にとって切実であるだけでなく、多くの労働者にも関わる、とても現代的な問題も含んでいます。現代社会では大量の情報が簡単に検索できる形で管理され、ネットに出回ってもいます。そのような状況で、さまざまな情報を調べる際に「索引」「目次」(インデックス)の働きをする、氏名や生年月日のような個人の基本情報を、誰がどのように管理すべきかは、社会全体の課題となります。

そう考えると、近い将来、本名と別のビジネスネームが当たり前になったり、本名を隠すことが権利と認められるようになったりする時代が来るかもしれませんね。

この人に聞きました

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

[nikkei WOMAN Online 2015年8月25日付記事を再構成]

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