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非常食、食べて高める防災意識、おいしいもの優先で

2015/8/31

9月1日は「防災の日」だ。コンビニエンスストアですぐに買えるから自宅に余分な食料は置かないという人や、非常食を押し入れの中に備えたものの賞味期限はいつだっけという人は検討してみるといい。日ごろから食べながら、少し多めの食料を備蓄する「ローリングストック」で、防災意識を高めるという方法があるのだ。

「備蓄食料を消費しようといっても、きっちり日付を決めて食べなくてOK。お母さんに家事を休んでもらう週末に『今日は買い物に行かずに備蓄消費デーにしようか』と、各家庭のスタイルで導入すればいい」

多めにストックした食料は目に付きやすい場所に置くといい

NPO法人、プラス・アーツ(神戸市)の永田宏和理事長はローリングストックについてそう話す。ローリング(回転)とストック(蓄える)で、買い置いた食料を日ごろ少しずつ食べていくことから日常備蓄とも呼ぶ。やり方は簡単。カップ麺やレトルトのごはん、カレー、乾麺といった保存のきく食品を多めに蓄えて、普段の食事で使ったら減った分を買い足す。

例えば4日分12食ほどを用意する。この備蓄から1カ月に1度の頻度で食べることにすれば、ちょうど1年でそっくり入れ替わるイメージだ。非常食というと乾パンやアルファ米など3年とか5年の長期保存ができる食品を考えがちだが、賞味期限が1年以内の一般的な保存食を活用する。日ごろから食べて味を知っている食品だから、被災したときに口に合わないという事態がなくなる。

8月下旬、埼玉県危機管理防災センター(さいたま市)で防災知識の普及を担当する市町村職員ら向けの講座があった。家具の転倒防止や災害用トイレなどの対策に加え、永田さんはローリングストックを紹介した。同県戸田市の自主防災組織の大森康代さん(50)は「無理をしないでやれそう。町会の防災メンバーに広げたい」と話す。

兵庫県芦屋市の60代の主婦、金山郁代さんはコープこうべ(神戸市)が開いた勉強会でローリングストックを知った。台所の冷蔵庫横の棚に缶詰や乾麺を中心に4~5日分ほどの食料を保管する。缶詰は夫が酒のおつまみとして時折食べる。「減るたびに買い足し、好きな食品が安売りしているときには多めに買う。ことさら特別なことをしている意識はない」と笑う。

政府は家庭内の食料備蓄の目安として1週間分を推奨する。電気やガスが止まって救援を待つ期間に備えるわけだが、プラス・アーツの永田さんは「最初の3日は腐りやすい電気の止まった冷蔵庫内のものを消費。残り4日はローリングストックを活用できる」とアドバイスする。

意識したいのは、おいしいものをそろえること。料理研究家で神戸市東灘区に住む坂本広子さんは「防災ぜいたく」を提唱する。あえて少し高価な食品を用意する。自身が阪神大震災で被災した時、ちょっとぜいたくなカレーの買い置きを見つけて「1回の食事が気分を変えてくれる」と実感したからだ。のりやドライフルーツなど被災時に不足するミネラル、繊維の豊富な食品も置きたい。

8月下旬、横浜市での防災フェアでは「災害食グランプリ」があった。各食品メーカーが自慢の缶入りパンやカレー、中華スープなど約20品目を来場者に配り、約2100人が試食して投票した。

東京都大田区から来た主婦、船木美穂さん(56)は「玄米の缶詰が気に入った。おいしくて栄養価も高そう」。同イベントをしかけた防災安全協会(東京・世田谷)の北村博常任理事は「温めなくてもおいしい食品など、メニューが広がっている。非常食を楽しみながら家族で防災について話す機会になればいい」と話す。

東日本大震災後にはコンビニ店からあっという間に商品が消え、現場がパニック状態になった。厚生労働省の2011年の国民健康・栄養調査によると、非常用食料を用意している世帯は全国で47%どまり。東京都と都内の区市町村が備蓄する非常食は計1700万食分だ。約1330万の都民には1人1食ほどしかない。

料理研究家の坂本さんによると阪神大震災の後、近くの避難所で配給が始まったのは3日目から、自宅避難者への配給は6日目からだったという。人口が密集している首都直下地震や被災地域の広い南海トラフ地震などではさらに時間がかかる可能性が高い。坂本さんは「少なくとも3日は食料の救援はないと思ったほうがいい。日常の延長で肩肘張らずできる備蓄方法なので、今から始めてほしい」と話している。(高田哲生)

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