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空き家対策にアメとムチ 税の優遇措置が実現か 司法書士 川原田慶太

2015/8/28

 自宅以外にも所有する家があるという世帯の割合が増えてきています。2008年に6.6%だった割合は、13年に9.2%まで上昇しました。そのうち、相続した物件を所有する世帯も3.1%から4.1%に増加。相続した物件の利用状況を見ると、実に3割超が「空き家」になっており、これは相続以外で取得した物件の空き家率に比べると、倍近くなっています(いずれも国土交通省「2013年度住生活総合調査」速報値より)。

 相続などで放置された空き家については、今年5月から罰則が明確化され、取り締まりが厳しくなっています。空き家の管理があまりに行き届かない状態となっていれば、自治体から要注意物件としてマークされてしまうのです。

 その結果、固定資産税の負担が大きくなったり、行政側に強制的に取り壊され後から費用を請求されたりするなど、これまでには考えにくかった法律上のリスクが発生するようになりました(5月29日付「相続した家が空き家に…こんな物件はにらまれる」、6月19日付「撤去費用に税負担 空き家相続、高まるリスク」を参照)。

 社会問題となった空き家対策について、まずは罰則強化・負担増加という、いわば「ムチ」によって切り込もうということなのでしょう。ただ、厳しい措置ばかりではありません。「アメ」となるような優遇措置についても、水面下で検討が進んでいます。

国土交通省は空き家対策の「アメ」ともいえる制度の検討に入った

 国交省は空き家を撤去したり、自分の住居用などに改築したりする所有者に対して、税負担を軽くする制度の検討を始めました(8月22日付「空き家撤去・改築で減税 国交省、税制改正要望へ」)。「空き家の状態を改善する取り組みを行えば、出費の一定部分に対して税金面の負担を軽くしてもらえる」というプランです。実際に導入が決定されるまでにはまだステップを経なければなりませんが、もし実現すれば当事者にとって朗報となるでしょう。

 相続の現場では、名義の書き換えが行われないままに放置された建物に出くわすことも珍しくありません。いわゆる「争族」のために塩漬け状態になっている物件もありますが、決してそれだけではないのが実情でしょう。多くは、相続人にとって価値の低い、「放置しておいても特に問題と感じない」物件、「誰も使わない空き家」であることも少なくないのです。

 そのような物件にはコストをかけづらいものです。そのため、相続手続きが放置されたままになったり、物件の管理が適正に行われていなかったりするのでしょう。従って、空き家の管理について罰則強化・強制介入という「北風」を吹かせて対策を進めるのは、理屈としてはわかります。しかし、やはり何らかの優遇や緩和策など、「太陽」の部分を作ることで自発的な対処が促進される面も否定はできないと感じます。

 より進んだ議論は必要となりますが、もしも減税によって空き家対策のコスト以上に社会的な効果が期待できるのであれば、こうした優遇策の導入の検討にも意味は出てくるのではないでしょうか。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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