『CSI:』から3本目のスピンオフ、本家は終了へ
海外ドラマはやめられない!~今 祥枝
2000年にCBSで放送開始して以降、瞬く間に全米で大旋風を巻き起こした『CSI:科学捜査班』。社会現象にもなった本作の登場を機に、米国テレビ界は犯罪捜査ドラマ一色となりブームは10年近く続きました。
また、本作を手がけた映画界の有名プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーがテレビでも大成功を収め、その後の米国テレビ業界に非常に大きな影響を与えたことも特筆すべき点です。
『CSI:マイアミ』(2002~2012)と『CSI:NY』(2004~2013)という2本のスピンオフも大ヒットさせて、設定など大枠は同じで舞台を変えて姉妹番組を増やしていくフランチャイズ方式を成功させたことは、いかにもやり手のプロデューサーらしいといえるでしょう。同時に、映画界の人材がテレビに本格参入するトレンドを後押ししました。
今年3月からは、3本目のスピンオフ『CSI:Cyber』が登場。実在のサイバー心理学者にインスピレーションを得たもので、テクノロジーの進化を利用し、顔の見えない犯罪者が世界的規模の犯罪を繰り広げる現代社会の恐怖を背景にしています。主人公は、サイバー犯罪課のFBI特別捜査官エイヴリー・ライアン。映画『6才のボクが、大人になるまで。』で、今年のアカデミー賞を受賞したパトリシア・アークエットが演じていることも話題です。
テレビ映画版が最終話に
この設定を聞いて、あれ? と思った「CSI:」シリーズのファンも多いはず。これまでの同シリーズは、各地の警察に属する科学捜査班の活躍を描くものでしたが、今回はFBIの捜査官が主人公。現場検証など科学捜査の要素はありますが、「CSI:」色は薄く、方向性がややブレた印象とあって、視聴者数は稼いでも評価が芳しくないのも理解できます。既にシーズン2が決まっていますが、入れ替わりで本家がシーズン15をもって終了することが発表されたことは、世界中のファンにとってショックな出来事でした。
キャンセルになるほど視聴率が落ち込んだというわけでもないのですが、放送局のCBSは潮時と判断したのでしょう。2015年秋、テレビ映画として放映されるスペシャル版がシリーズ最終話となり、降板したオリジナルメンバーのグリッソムやキャサリンも登場予定。一方、シーズン12から本家の顔となったD.B.ラッセルことテッド・ダンソンは、『CSI:Cyber』のシーズン2に同役で出演し、主要キャストも顔ぶれが少し変わって仕切り直しをするようです。
いずれにせよ、『CSI:科学捜査班』の終了は、再編が加速する近年の米国テレビ業界において、一時代の終焉を象徴する出来事のようにも思われ、感慨深いものがあります。
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今月のオススメドラマ
『Zネーション』
人類存亡をかけて大陸を横断、ゾンビと戦う
ゾンビウィルスがアメリカを襲い、人々は次々にゾンビと化す。3年後、生き残った優秀な兵士の一団が、噛まれてもゾンビ化しなかった唯一の人間=生きたゾンビ人間から、ワクチンを作ることに最後の希望を見いだす。そのためには、ニューヨークから、まだ機能しているカルフォルニアの研究所までゾンビ人間を護送しなければならない。終末を迎えた地で、ゾンビの襲撃をかわしながら、決死の大陸横断の旅が始まる。
『ウォーキング・デッド』に続く、本格的ゾンビシリーズとして話題の『Zネーション』。Syfy(サイファイ)チャンネルにて2014年9月から放送開始以来、若者層を中心に人気を獲得して、シーズン2も決定しているヒットシリーズだ。
ロードムービー風の設定に、個性的な登場人物たちの密な人間ドラマは『ウォーキング・デッド』に似ているが、こちらはよりホラー色が強く、過激なバイオレンスや派手なアクション、ユーモラスな描写も見もの。多種多様なゾンビが登場するのも売りのひとつで、ゾンビの造形は映画『ワールド・ウォーZ』に近いものがある。
出演は、ハロルド・ペリノー、DJクオールズ、ケリッタ・スミス、ラッセル・ホジキンソンほか。クリエイターは、『デッド・ゾーン』のプロデューサーでテレビ、映画の脚本家としても活躍するカール・シェイファー。
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
[日経エンタテインメント! 2015年8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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