「何十年も先の老後資金づくりが目標なので株価が安い時期が当面続くのはむしろプラス」と話すのは都内の会社員、石原麻貴子さん(43)。7年前から国内外の株式を中心に積み立てを続けている。
グラフAは定額積み立て投資と資産の値動きの関係を示す。3つの値動きの中では最初に大きく下げてその後価格が上向く(3)が、最終的に資産は一番大きくなる。定額で買うので初期の安い時期に多く買え、価格が上向いたときの効果が大きくなる。
定額積み立ては一括投資よりいつも有利ではなく値動き次第。(2)のように最終的に下げれば投資額を下回ることもある。投資教育家の岡本和久氏は「定額積み立ては価格が変動しながら長期的に上向くのが大事。世界全体を対象にすると長期的な成長が見込まれ成功確率が高い」と話す。
カギはリスク値
グラフBは1980年以降に様々な資産に毎月3万円ずつ積み立て投資をした場合の試算。バブル崩壊後に低迷した日本株でも運用資産は累計投資額を上回るが、国内外の株や債券への4資産分散や先進国株式全体への投資はより大きな成果を生んだ。
ただし分散投資でも、相場全体が急落する局面では運用成績は悪化する。世界分散積み立て投資を十数年続けている会社員、水瀬ケンイチさん(ハンドルネーム、42)は「投資を続けるために大切なのは急落時でも自分が耐えられる値動きに抑えられる資産配分にしておくこと」と話す。
カギは値動きのブレを示す「リスク(標準偏差)」という概念だ=グラフC参照。期待できるリターンを中心にリスクの値の範囲で上下に変動する確率が、統計学上約68%になる。例えば日本株が年間の期待リターン5%でリスクが25%なら、プラス30%からマイナス20%の範囲に収まる確率が68%だ。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年10月の新資産配分への移行の際、長期運用を前提に4資産(日本株、日本債券、外国株、外国債券)の期待リターン、リスク、相関係数(資産間の連動の強弱を示す数値)を公表している。
その数値を基に様々な資産配分でリスクとリターンがどう変わるか計算してみたのがグラフC。例えば日本株だけを持つのに比べ、日本株と外国株を半分ずつ持てば(a)、期待リターンは上がる一方、リスクは逆に下がる。同様に外国債券だけに比べcやdの方が、リスクはあまり変わらないのに期待リターンは高まる。