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カフェ起業の裏に子どもの夜泣き、夫との修羅場も

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日経DUAL
二児の子育てをしながら、仲間たちと初のカフェ起業に挑んだNPO法人「彩結び」の代表、赤星裕美さん。JR東日本グループが展開する子育て支援と高齢者福祉の複合施設「コトニア赤羽」にて、コミュニティカフェ出店のチャンスをつかみ、夢だった自分たちのカフェをスタートすることに。カフェ経営の現実や不安、家族との衝突や話し合いなど、カフェ起業の舞台裏をお届けします。

2015年4月1日11時。いよいよ「いろむすびcafe」がオープンの日を迎えました。お客様はたくさん来てくれるだろうか? カフェ初心者のスタッフが多い中、お客様に喜んでもらえる接客ができるだろうか? ドキドキしながら待ち構えていると、次から次へと来店者が続き、あっという間に大きなフロアが埋まりました。

この日はフィットネスクラブや保育所、高齢者向けデイサービスなどが併設されているコトニア赤羽のオープン日ということもあり、地域の方々や小さなお子さんを連れたママさんたちが多く訪れていたのでした。ランチも即時完売となりました。

夕方には、前日まで一緒に働いてくださった「studio CONTE」のデザイナーさんたちや、親しい仲間も花束を持って駆け付けてくれ、いつもの顔ぶれに緊張の糸が緩んだのか、涙があふれ……。

ただ、やっとオープンまでこぎつけた! とホッとしたのもつかの間、目の前の山積みの課題に足がすくむ思いもしました。というのも、この「いろむすびcafe」は飲食をするだけのカフェとは異なり、地域の子どもやママさん、高齢者の方々が触れ合えるようなコミュニティカフェとしての場づくりが命題なのです。多世代の人が楽しめるようなイベントを企画・実施することや、地域の人がイベントや講座を開催するためのスペースを提供(レンタル)していくことも重要な課題です。

それに加えて、毎日のカフェ営業の体制づくりと集客。まだオープンしたてだけに注目度も高いけれど、今後も引き続きお客様は足を運んでくれるのか? リピートしてくれるのか? と不安が絶えることはありません。1週間、2週間が経ち、お客様がちょっとでも少ない日があると、何となくどんよりした空気になり、これまで走り続けてきたスタッフの顔にも明らかに疲労の影が浮かんでいるのが分かりました。

オープン前は、「4月1日絶対オープン!」という明確な目標の下、体力的につらくても、スタッフ全員、なんとかテンション高めで走ってこられたのですが、オープン後は、様々な課題を目の前にした精神的プレッシャーなど、また違った種類のつらさが浮上してきたのです。

子どもと一緒に働く「子連れワーク」という新しい形

NPO法人「彩結び」が目指す理想の働き方は「子育てと仕事の無理のない両立」です。「働きたいし、子どもとも一緒にいたい」と望む女性は多くいますが、実際は子どもを預けてフルタイムでバリバリ働くか、あるいは在宅で働くか、それとも主婦となって、一時期完全に仕事を休むか、のいくつかの選択肢に分けられるように思います。

そこで私たちは仕事をしながらも子どもと一緒にいられる、第三、第四の形が実現できないだろうか? と模索し、雇用するカフェスタッフに対し「子連れワーク」の実践を採用したのです。子連れワークを実践することで、子どもは親のそばにいられる安心感が得られるとともに、親の働く姿を見ることで自立性や情緒が育まれます。また、スタッフやお客様の子ども同士の交流であったり、大人たちが共同で子どもを見守る、育て合うことであったりが心の豊かさにもつながると思いました。地域の高齢者の方々に子どもたちを見てもらうことで、高齢者の方の生きがいにもつながっていけばいいなとも考えています。

現在、「いろむすびcafe」では子連れワークをしたいという従業員を歓迎していて、スタッフ7人のうち子持ちが6人、その中の4人が子連れワークを実施中です。1歳くらいまでの子どもでしたらスリングの中に入れて抱っこをしながら、もう少し大きな子どもはカフェの一角にあるキッズスペースで遊んでいてもらい、スタッフが交代で見ながら、子どもと一緒に働くというスタイルを実践しています。

とまぁ……立派な理想は掲げてみたものの、現実的に行うのは思いの外、大変です。相手は何せ子どもですから、どんな動きをするのか予測がつきません。時々、子ども同士でケンカになったり、泣き出したり、お世話をしているスタッフは大わらわ。カフェでお食事をされているお客様にご迷惑をかけることがあってはならないため、そのあたりを配慮し安全面のルールはしっかり決めておく必要があります。

また、何より苦心するのが、スタッフのシフト管理。スタッフの大半が子連れワークなので、子どもが急に熱を出して出勤できなくなった場合にどうやってフォローし合うのか、体制を整えておく必要があるんですね。幸い、皆の中に「お互い様」という意識があるので、ピンチのときは助け合いながら、穴を埋めているという状況です。

確かに子どもが一緒にいれば、スムーズにできる仕事もできなくなります。子連れワークという、あえて不便なことに挑む。その意味を、実践を通して考えてみたいのです。

ただ、私自身は代表として外回りの営業や打ち合わせなども多いため、子どもは2人とも保育園に夕方まで預けて働いている状況です。ここ半年は特に起業準備で多忙を極めていたので、家に仕事を持ち帰らないと終わらないときも多々ありました。子どもが「遊んで~!」と言っても、「ごめんね! お母さん、仕事しなきゃいけないから」とパソコンに向かうこともたびたび。そんな日々が続くと、子どもも少し精神不安定になってしまって、子どものことで悩んだ時期もありました。

お互い家を飛び出したり、泣きじゃくったり、夫とのドロドロ劇も

子どもも、母親の精神的なプレッシャーを無意識に感じるんでしょうね。夜泣きがひどくなったり、朝「保育園に行きたくない!」と駄々をこねたり……。「こっちが泣きたいよ~!」と思ったことは一度や二度じゃありません。でも、ごまかしてなだめてもダメだと思い、「お母さんね、今から大事なお仕事の人と会うことになっていて、絶対に行かなくちゃならないの。今日は保育園の友達と遊んでいてもらえるかな? 本当に本当にごめんなさい」と誠心誠意、謝ると、子どもは保育園までトボトボ歩き出すんですね。

どこまで理解してくれているかは分かりませんが、子どもにもちゃんと話すことが大事なのかなって心底思います。「今は特別忙しいけれど、今度の日曜日はお休みだから遊園地に行こうね!」と代替案を出すと気持ちが伝わるのか、元気になっていって。そうやって、子どもたちに「ちゃんと見ているよ!」という愛情を伝えていったことで、次第に精神不安からくる行動は減っていったように思います。

子育てしながら、起業を果たすというのは正直厳しいです。夫の協力なくしてここまで来られなかったと思います。オープン前の怒とうの日々はもちろん、今も私が仕事で遅くまでかかる日は夫が定時で帰ってきてくれ、家事・育児をバトンタッチできたり、飲み会を断って子どもの面倒を見てくれたりと何かと応援してくれています。

ただ、初めから協力してくれていたかというと、そうではありませんでした。今の関係性や役割分担ができるまでには紆余曲折(うよきょくせつ)がありました。最初のうちは、私が子どもを一緒に連れて仲間と打ち合わせをしたり、外に出かけていったりすることを夫は快く思っていなかったですし、そのたびにけんかをしたり、険悪なムードになって、お互い家を飛び出したり、泣きじゃくったり、ドロドロ劇もありましたから、ハイ。

でも、それでも私は仲間と起業し、皆が自分らしく働ける世の中をつくって、社会のお役に立ちたかった。夫婦で何度も話し合い、衝突しながらも、向き合ってきた感じです。決してきれいに歩んできてないですし、きれい事だけじゃ、ここまで来られなかったです。

先日、土曜日に人手が足りなくて、夫に「もしよかったらカフェで働いてみる?」と聞いてみたら、「面倒くせーなー」としぶしぶでしたが、なんだかうれしそうで。子どもを一緒に連れてカフェで一日接客を手伝ってくれたのですが、「なんか俺、オリジナルメニューとか出しちゃおうかな」とか「今度こんなイベントやったらいいと思うんだけど」と新たな提案までしてくれるようになって。私たちの夢を自分のことのように楽しみながら応援してくれています。仲間の愛子の旦那さんも理解を示して協力してくれているので、夫参加型の「俺のコミュニティカフェ」も実現できそうです(笑)。

カフェ経営の夢を持つスタッフも。経営の実態や毎月の目標額を共有する

とはいえ、カフェを経営していくには、厳しい現実面とも向き合わなくてはいけません。内装工事やデザインにかかった費用、人件費、賃料、その他運営費を考えると、多額の資金が必要になってきます。NPO法人の場合、自治体や民間などが行っている補助金や助成金制度があり、かかった費用の全額であったり、あるいはその何割かであったりを支援してもらうことができます(上限金額はそれぞれ異なる)。なので、自治体や民間の財団などに、いくつか補助金、助成金の申請をしているところです。

ただし、審査の結果基準に満たない場合は受給できないため、細かく予算書を作成して、申請書類を提出するのですが、その作業がものすごく大変で……。通常業務をしながら、複数の書類の提出が重なった日には、汗も鼻水も流しながら書類作成に追われる感じです。でも、資金を返済義務なしに援助してもらえるのですから、そんな甘えたことも言っていられませんよね。ありがたいと思って、電卓と書類とにらめっこしています。

スタッフの中にはいずれ「カフェを経営したい」という夢を持つ人もいます。なので、一人一人が経営感覚と独立心を持って働いてもらいたく、今の事業の柱である「カフェ事業」「イベント事業」「レンタルスペース事業」の収支や毎月どれくらいの売り上げが必要なのかといった情報を共有するようにしています。経営の実態や毎月の目標額を共有することで皆の意識やモチベーションが上がり、売り上げにも変化が出てきたように思います。

外部講師やスタッフが講師のイベントや講座もにぎわいを見せています。オープンから3カ月経った現在では、ママのための「骨盤ストレッチ講座」や「時短メイク講座」、地域のおじいちゃんやおばあちゃんと交流する「たまごの日」など、一日1~数本の企画を行えるようになりました。参加者も少しずつ増えて、ようやく活気づいてきたところでしょうか。

立場も世代も超えて、お互いの色を生かし合える場を生み出したい

あるとき、60歳くらいのお客様がこんなふうに言ってくれたんです。「いつも主人と二人のごはんで、孫もいないからちょっとつまらない毎日だったけど、ここに来ると子どもが元気に遊んでいる姿を見られるから、それが楽しいの」

お話を聞いていくと、そのお客様はタオルで雑巾を縫い、いろんな施設に寄付しているとのことでした。「よかったら、おつくりになったものをウチで購入できますか?」と尋ねると、ある日、たくさんの雑巾タオルとご自宅にあった観葉植物まで持ってきてくださったんです。そして一言。「お役に立ててうれしいわ」と……。

たった一つのやり取りかもしれませんが、私たちの目指す世界がそこにあるように感じました。誰かが誰かのために自分が得意なこと、好きなこと、できることを分かち合う世界。働く側とお客様、子どもと親、祖父母世代という様々な立場や世代という垣根を越えて、ここに集う人たちがお互いを生かし合えるような場を生み出したい。そう強く、心に思ったのです。

課題もやりたいこともたくさんあります。気づかぬうちに迷惑をかけてしまっていることもあるかもしれません。でも、その一つ一つに目を向け、クリアしながら前に進んでいきたい。一人一人が、自分の色を生かし、分かち合う、そんな彩り豊かな世界を目指して歩き続けたいと思っています。

(ライター 伯耆原良子)

[日経DUAL 2015年7月23付の記事を再構成]

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