実力派「新世代ボーイズ」台頭 連ドラ・映画で人気に
7月期の連続ドラマでは、22歳の福士蒼汰が「恋仲」で"月9"に初主演する一方、「デスノート」では27歳の窪田正孝と20歳の山崎賢人のコンビが注目を集める。「民王」でも22歳の菅田将暉が主演の一角を占め、「表参道高校合唱部!」では20歳の志尊淳が新星・芳根京子の相手役として活躍。連ドラや映画で顔となる新たな20代の若手男優が増えているようだ。
だが20代男優の活躍の場は限られてきている。2010年と14~15年の地上波連ドラを主演男優の世代別にみると、10年に約40%だった20代主演作は14~15年には22.5%に低下。40代以上の主演作が半分近くを占める。若者のテレビ離れで40代以上を狙う作品が増えたのが背景。近年は刑事もの、家族ものの増加に加え、ビジネスマンや医者など職業ものも、視聴者と同年代の俳優を主人公としてその苦悩を描くものが多い。
かつては「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」「ROOKIES」など若手男優の群像劇が多く、そこから今も活躍する20代後半~30代前半の男優が育った。だが最近はこうした学園ものや若者の恋愛ドラマは数えるほど。多くの視聴者に名前と顔を覚えてもらえるドラマの利点は大きいが、20代の男優の門戸は狭まる一方だ。
そんな中で連ドラ主演を果たす20代男優はどんなタイプか。
プロダクション別の最大勢力といえるのはジャニーズ事務所だ。SMAP、嵐、関ジャニ∞ら多くのテレビドラマで主演を務めるメンバーが30代以上になったが、その伝統をKis‐My‐Ft2、Hey!Say!JUMP、SexyZoneなどに所属する若手が引き継いでいる。
グループでの音楽活動がベースの彼らは多くのファンを抱えるのが強みだが、俳優としての活動実績が豊富な点も見逃せない。ジャニーズ事務所のタレントは10代前半から活動することが多く、現在22歳の山田涼介がドラマに初めて出たのは13歳。同じく22歳の中島裕翔も11歳で初出演を果たしている。
世代別で切ると山田と中島が生まれた93年は層が厚い。菅田、入江甚儀、神木隆之介、福士、白濱亜嵐、藤井流星、野村周平らが同じ年の生まれだ(菅田は早生まれ)。この世代の中でうまくキャリアを重ね、連ドラ主演にまで成長した1人が菅田。その歩みは、今の20代男優がいかにブレイクするかを象徴する事例でもある。
菅田は09年に「仮面ライダーW」でデビューした。13年に青山真治監督の映画「共喰い」の主演にオーディションで選ばれ、ぬれ場を含めたチャレンジが評価されて日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。その後はNHK「ごちそうさん」、蜷川幸雄演出の舞台「ロミオとジュリエット」など幅広い領域で活躍。今年は2作品続けて連ドラの主演を務める。
菅田を「民王」主演に起用したテレビ朝日の飯田爽プロデューサーは「今は見る人の目がシビア。多くのベテランと比較されるため、若手でも人気だけでなく実力や個性がこれまで以上に問われる。菅田さんは誰が見ても分かるカッコよさと、マニアックな役も演じられる演技力を持つ貴重な存在」と話す。
かつては「伸び悩む」と言われた神木、三浦春馬、柳楽優弥ら子役出身俳優の活躍ぶりにもこうした傾向は表れている。
また坂口健太郎(24)など映画に活路を見いだす20代も多い。かつての学園ドラマのような役割を果たしているのが少女マンガ原作ものだが、ここも実力と無縁ではない。
10月公開予定の「先輩と彼女」で主演する志尊らのマネジメントを手がけるワタナベエンターテインメントの貝塚憲太ドラマ担当副部長は「映画監督は演技力を重視するし、00年代後半のイケメンブーム以降は若手俳優を抱える事務所が増えてオーディションも厳しい。じっくり時間をかけて実力を積むことが求められている」と言う。
20代俳優にとっては壁が高い主演への道。だからこそ、それを超えて主役をつかんだ彼らの作品には見るべきものが多いはずだ。
(「日経エンタテインメント!」9月号の記事を再構成、文/高倉文紀)
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