ゾウムシの「鼻」はなぜ長い?
ゾウムシは、昆虫の多様性を象徴する虫である。
ゾウムシ上科に属する虫は世界におよそ6万種が知られており、知られていないものも含めれば20万種を超えると推定されている。おそらく地球上の生物の中で一番多様性が高い生物である(ライバルはハネカクシという甲虫の仲間)。
もちろんコスタリカでも、たくさん見つかる。たぶん1万種はいるとみているが、その多くにはまだ名前が付いていない。生態も、わかっていないものがほとんどだ。
そこで今回は、ぼくが10年以上のコスタリカ生活で撮りためたバラエティ豊かなゾウムシたちから一部を紹介したい。飼育・観察してわかった、これまで知られていなかった生態もお伝えしようと思う。
さて、ゾウムシというとなんといっても特徴は、長く伸びた鼻のような部分(口吻と呼ばれる)。なんであんな長い鼻をしているのだろう?と思われるかもしれない。
主な役割は二つある。
一つは、花の奥や実やタネ、枝などの中央にある組織を食べるため。ゾウムシの鼻の先端には、アゴ、つまり口がついていて、ほかの昆虫では届かない植物の"中身"を食べられる。
二つめは、メスが卵を産む穴を用意するため。ほとんどのメスは、長い鼻で植物に穴を掘り、卵をその中に産み、その後セメントのような物質で穴を埋めるという行動をとる。たとえば、こんな感じで。
今回紹介したのは、ほんの一部の一部。ほかにも、風変わりな形をしたゾウムシや鼻が短いゾウムシなど、ホントにいろいろなゾウムシたちがいる。
ゾウムシの同定は、Dr. Jens PrenaとDr. Henry Hespenheideにお願いしました。ありがとうございます!
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学でチョウやガの生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[Webナショジオ 2014年10月7日付の記事を再構成]
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