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田園調布→赤坂 社長の住む街、都心シフトのワケ 編集委員 小林明

2015/8/21

「社長の住む街」は田園調布から赤坂へ――。

東京商工リサーチが興味深い調査を発表している。社長の居住地を2003年と2014年で比べてみたところ、「郊外」の高級住宅地からビジネス街や繁華街に近い「都心」にシフトする傾向が鮮明になったのだ。原因を探ると、意外な背景が浮き上がってくる。

■田園調布、成城、大泉学園町……、2003年は郊外の高級住宅街が上位に

企業データベースの「経営者情報」で社長の居住地を調べたところ、2003年(調査対象105万9122社)では首位が田園調布(東京都大田区)と成城(世田谷区)、3位が大泉学園町(練馬区)。このほか7位に奥沢(世田谷区)が入るなど郊外の高級住宅街が上位に多く顔をそろえた。

田園調布は実業家、渋沢栄一氏の田園都市計画に基づいて大正時代に開発され、鉄道駅を中心に放射状に広がる整然とした町並みが有名。成城は1925年に成城学園が移転して以来、学園都市として発展してきた。いずれも有名人や富豪が居を構える日本有数の高級住宅地として知られる。

■赤坂、代々木、西新宿……、2014年には都心が大幅に順位上昇

ところが2014年(調査対象267万7491社)になるとランキングが大きく変動する。

首位が赤坂(東京都港区)、2位が代々木(渋谷区)、3位が西新宿(新宿区)、4位が南青山(港区)、5位が六本木(港区)、6位が高輪(港区)となり、都心のビジネス街や繁華街が上位を席巻するようになったのだ。2003年のランキングだと、それぞれ赤坂は20位、代々木は16位、西新宿は100位圏外、南青山は4位、六本木は88位、高輪は18位だった。

南青山を除くと、2003年時点よりも大幅に順位を上げている。

一方、2003年に首位だった田園調布と成城はそれぞれ18位と13位へ、3位だった大泉学園町は36位へ、7位だった奥沢は15位へと対照的に順位をいずれも下げているのが分かる。

都心のビジネス街や繁華街が上昇し、郊外の高級住宅地が低下しているのだ。

参考までに2003年と2014年の上位5位の立地を地図上で比べると、「郊外」から「都心」へとシフトする様子がはっきりと読み取れる。

2014年1位=赤坂(東京都港区)
2014年2位=代々木(東京都渋谷区)
2014年3位=西新宿(東京都新宿区)

■相次ぐ都心の再開発、大震災で職住接近へ

約10年の間に何が起きたのだろうか?

「地価下落による『都心回帰』に加えて、2011年の東日本大震災の際に発生した交通マヒなどの体験を踏まえて『職住接近』のメリットが再認識されたからではないか」。東京商工リサーチ情報本部はこう分析する。

さらに都心では大規模な再開発計画が相次ぎ、居住性のより優れた超高層の高級マンションが数多く分譲された。たとえば、赤坂にあった防衛庁跡地の再開発事業により複合施設「東京ミッドタウン」が開業したのは2007年3月のことだ。

郊外よりも都心に家があった方が通勤が楽だし、何か災害が起きた際にも確実に出勤できる。そのうえ繁華街のほか、新たにオープンした魅力的な文化・レジャー施設や商業施設にも近くて便利。高層マンションならば大きく変貌を遂げた近代的な都心の夜景も楽しめる……。

「こうした様々なメリットを考え、都心での住環境を見直す風潮が強まってきた」(東京商工リサーチ)というわけ。もちろん田園調布や成城の高級感は高いままだし、憧れの的であることは変わらない。つまり、居住地の候補として選択肢の幅がより広がってきたということだろう。

2003年1位=田園調布(東京都大田区)
2003年1位=成城(東京都世田谷区)
2003年3位=大泉学園町(東京都練馬区)

■意外な人気スポット、亀戸・大島

ランキングでは意外な人気スポットも浮かび上がった。

亀戸(江東区)や大島(江東区)がその代表例。亀戸は2003年で5位、2014年で9位、大島は2003年で9位、2014年で7位。どちらもトップ10内で安定した人気を誇る。

しかし、亀戸も大島も錦糸町の近接地で庶民的な下町のイメージが強い。

「実はどちらも中小企業経営者が多い地域。もともと自宅と職場を兼用しているので、社長の居住地として上位に食い込んできた。さらに湾岸沿いの高層マンションの分譲などで人気が高まっているのではないか」。東京商工リサーチ情報本部ではこう推測する。

■世田谷区がトップ、港区も人気急上昇

最後に市区郡ベースでランキングの変化を見てみよう。

東京都内で1番人気は2003年も2014年も世田谷区。やはり高級なイメージが強いし、閑静な高級住宅地が多いためだろう。大田区や練馬区も変わらず人気が高い。

目立つ変化は港区。2003年には15位圏外だったが、2014年には2位に急浮上した。

港区の人気が急上昇した背景には、赤坂、六本木、高輪、南青山、三田など豪華なタワーマンションが多く分譲され、社長たちを引き寄せているという新たな消費動向があるようだ。

一方、亀戸や大島など意外な人気スポットを抱える江東区はどうだろうか?

市区郡ベースで見ると、江東区は2003年、2014年ともに上位10位には入っていない。スポット的な人気は高いが、まだ面的な人気としてはそれほど広がりはないようだ。

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