2015/8/18

20代から始めるバラ色老後のデザイン術

ある日突然会社がつぶれたというニュースを見かけることがありますが、上場企業がいきなりつぶれて株が売れなくなるわけではありません。たとえ上場を廃止してしまうことになっても、上場廃止まで一定期間がおかれますので、その間に売却してしまえば買値に対し5割から8割程度の損で手放すことができます。損失は大きいものの、少なくとも価値がゼロではありません。

投資信託を通じて運用する場合でも、数十から数百社へ投資することが多く(インデックスファンドだと、もっとたくさんの企業に投資する)、いきなり投資信託の価値がゼロになることはありません。1社の株価急落も資産全体に与える影響は1%程度にしかなりません。簡単にいえば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)がいきなりゼロにならないようなものです。

投信会社が仮につぶれても、財産は信託銀行に外部保全されており、投資信託会社が自分の債務と相殺してしまうようなこともありません。

「紙くず」というのは文字通り価値がゼロになる比喩でしょうが、実は投資において全額なくすことのほうが難しいのです。

レバレッジをかけなければさらにすべてなくすことはない

もちろん、投資でお金がゼロになるケースが皆無というわけではありません。損をしては売り、また損をしては売る、という短期売買を繰り返すとお金はみるみる消えていきます。

ネットスラングで「お金を溶かす」という言葉があります。投資(正確には投機)取引に失敗してどんどんお金が消えていくさまを表現したものです。この場合、本当にお金がゼロになることもあります。

投資で「溶かす」失敗をする人の原因はほぼ100%、短期売買とレバレッジを組み合わせています。実際の投資金額以上の売買を行える仕組みをレバレッジといいます。株式の信用取引なら3.3倍、FX(外国為替証拠金)取引なら25倍のレバレッジをかけた売買が可能です。

100万円の入金で2500万円相当の為替取引をすると、うまくいったときは25倍多くもうかりますが、損失が出たときも25倍ダメージが大きくなります。仮に1ドル=124円のときに2500万円相当のドル(20万1613ドル)を買ったとして、これが1ドル=125円になれば元手が100万円で20.16万円もうかるという計算です。ところが、思惑と逆に1ドル=123円になれば利益どころか20.16万円の損失です。慌てたり焦って売り買いを繰り返し、同等の失敗を5回繰り返せば100万円は文字通り「溶けて」しまうわけです。

普通の会社員は投資にレバレッジをかける必要はありません。レバレッジをかける運用方法をスタンダードな投資と思っているならその発想は改めるべきです。

それはむしろ投機的なチャレンジなのです(残念ながら広告だけ見ているとFXが手軽な会社員の投資方法として説明されていることが多いのですが)。もちろん、借金をして投資をするのも論外です。「うまく稼げば、金利以上のもうけが出せるので、借金を返しても手元にお金が残るはず」という発想は、レバレッジに失敗する人の発想とまったく同じだからです。運用に失敗すれば元本返済ができないどころか、利息も払わなければなりません。

毎回繰り返していますが、会社員は仕事に支障がないレベルで投資を行うべきですし、プライベートに時間を割けなくなるような投資を行う必要もありません。

「全額なくす」ような投資をしないことは簡単に実行可能です。そして「全額なくす」投資を避けることで、投資を実行する負担はぐっとラクになってきます。

そして「全額なくす」投資などしなくても、十分に定期預金以上の利回りを確保することができるのです。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。近著に『20代から読んでおきたい お金のトリセツ!』(日本経済新聞出版社)。twitterでも2年以上にわたり毎日「FPお金の知恵」を配信するなど、若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる(@yam_syun)。ホームページはhttp://financialwisdom.jp

20代から読んでおきたい「お金のトリセツ」! (日経ムック)

著者:山崎俊輔
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,000円(税込み)

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし