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仕事の技で新たな社会貢献 「プロボノ」で自分磨き

2015/8/16

仕事で身に付けた専門知識や技能を生かして、NPO法人などに協力したい――。ビジネスパーソンらの間で「プロボノ」と呼ばれる活動がじわりと広がり始めた。
プロボノワーカーと支援先団体が話し合う(川崎市多摩区)

「人手が足りません」。8月1日、川崎市が主催する「プロボノサマーチャレンジ」の会場で、NPO法人の女性が訴えかけた。集まったのは、子育て支援、環境問題などに取り組む11団体の代表者らと、約50人の「プロボノワーカー」。団体別に5人程度の支援チームを結成し、1カ月で結果を出す。プロボノとは「公共善のために」を意味するラテン語に由来する言葉で、仕事のスキルを生かすボランティア活動を指す。川崎市役所の鴻巣玲子さんは「現役の人が参加しやすいように活動の期限を設けた」と話す。

奥山久美子さん(42)はデル勤務。海外のメンバーと連携し、数値目標を達成するための「業務改善プロジェクト」を管理する仕事に携わる。出産を機に会社以外でも社会とのつながりを持ちたいとの気持ちが強くなり、学童保育のスペースを有効活用したい団体に助言するチームのリーダーになった。「公共の善のために社外の人たちとともに価値を生み出す活動に興味がある。社会との接点が増え、仕事上の新たな気づきにもつながる」と語るのは富士通の金丸祐史さん(35)。システム運用が専門で、文化振興に取り組む団体に協力する。

ボランティア活動の幅は広く、選択に悩む人は多い。金融アナリストの小関広洋さん(58)は2011年の大震災後、職を辞して被災地に。NPOに協力し、がれきを撤去したが、1カ月で体力の限界に達した。「大工さんたちの有志は手際がよかった。熱意だけでは長続きしない」

■企業側にもメリット

プロボノワーカーと団体を仲介するNPO法人で最大手のサービスグラントへの登録は3月末で約2400人となり、7年前の約17倍に。川崎市とも連携する代表理事の嵯峨生馬さんは「プロボノに注目する個人や企業が増え、自治体も目を向け始めた」とみる。弁護士などの専門職に加え、自分のスキルを生かして活動する人が急増中だ。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングは社員にプロボノを促している。昨年活動した喜多下悠貴さん(28)と小林庸平さん(34)は、大震災の「被災地・子ども教育白書」の編集に協力。「現場の大切さを実感した」。企業側はイメージの向上、社員の成長や意欲アップを見込んでいる。

東京都は6月、地域福祉を担う団体とプロボノワーカーをつなぐプロジェクトを発足させた。東京は地方よりも「互助」の精神が弱い面があり、都がつなぎ役となって「地域包括ケアシステム」の確立を支援するという。都庁の西沢佳さんは「プロボノを活用して地域の多様な力を引き出したい」と強調する。「自治体は財政難。広範な社会問題には対応しきれない」(専修大学教授の徳田賢二さん)。

■持続的な活動に

資金、人材、運営などの悩みを抱える団体側も専門家を求めている。弁護士の渡辺伸行さん(43)はアフリカの子供に給食を提供する団体などを支援中。「BLP―Network」という弁護士グループの代表で、30人強のメンバーが時間をやり繰りしてトラブル対応や契約実務などを助言している。社員を団体に派遣し、事業計画作りなどを伝授しているNECの池田俊一さんは「支援を契機に飛躍した団体は多い」と説明する。

貧困や虐待のもとで暮らす子供たちを支援するNPO法人、3keys代表理事の森山誉恵さんは2年前、寄付金の口座管理の体制を銀行とのプロジェクトで構築してもらった。「単発の支援は点では役立つが、線や面には広がらない。継続する活動や仕組みが必要」と語る。プロボノの持続性が期待されている。

■活動に関心高まる 「興味ある分野で自信もてる」

ツイッターやブログでもプロボノが話題になっている。

「プロボノでNPO支援を始めた。非常に勉強になる」「面白そうなプロボノの案内が来たから速攻で参加表明しておいた」など、最近、活動を始めた人や、これから始める人のつぶやきが多い。「興味がある分野なので自信が持てる」「普段の自分の仕事に関連することをやるんだと思うけど、自分にも役立つから一石二鳥」と前向きな内容が目立つ。

一般にはまだよく知られていないと感じているためか、「プロボノとは……」と言葉の意味を説明してから、感想などをつぶやく人もいる。「プロボノって聞き慣れない言葉ですが、好奇心のおもむくままに話を聴きに行ってきました」といった書き込みもあった。

この調査はホットリンクの協力を得た。

(編集委員 前田裕之)

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