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子育て団体の資金調達に妙手あり 10年見据えた投資

2015/8/16

 日本国内で長期間の投資が広がりを見せている。社会企業家などを支援する日本ベンチャー・フィランソロピー基金(JVPF、東京・港)は子育て支援団体AsMama(アズママ、横浜市)に3000万円を拠出する。ユニークなのは原資を寄付金とし、資金提供の方法に新株予約権付社債(転換社債=CB)を採用すること。1、2年間での利益を追求するよりも、投資を受けた企業が育つのをじっくり待つ。そこから浮かび上がるのは10年先の社会や企業を見据えた投資姿勢だ。

■社債から株式で長期出資、原資は寄付

アズママは交流会などのイベントを開催して企業から活動資金を得ている

 アズママが発行するCBをJVPFが引き受ける。CBの株式転換が可能なのは2018年8月まで。JVPFは社債の保有者または株主総会の議決権を持つ株主となる。アズママの事業が順調に展開すれば、新規株式公開(IPO)も含めて将来的に投資利益を得る仕組みだ。

 いかに長期間の投資を可能にするか、JVPFを公益財団法人の日本財団と共同で運営するソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP、東京・港)の白石智哉代表理事は「寄付金が原資とすることでも短期的なリターンを求めずに投資できる」と語る。一般的な顧客からの預かり金の場合、顧客への配当や分配のため、一定期間ごとに投資利回りを確定し、業績が伸び悩む企業への投資は見直しの対象になりやすい。寄付金ならば顧客を意識せずにすむ。

一般からの寄付を集めた基金で、SIPなどが株式会社の財務を支援する

 利益よりもビジネスモデルやサービスの品質を重視する長期投資ではあるが、利益を度外視してはモラルハザードにつながりかねない。寄付金をそのまま提供せずCB方式とすることで「ベンチャー企業にガバナンスを効かせていくことができる」(白石氏)という。

 アズママは子育てを通じた知り合いが、子供の送迎や預かりで相互に助け合うサイトを運営する。依頼者が支援者に支払う謝礼は1時間あたり500円からで、アズママ自体は会員個人から手数料を徴収しない。サイトなどの運営経費は企業からの協賛金や広告料などでまかなう。情報交流に特化することで事業経費を抑えつつ、会員同士の交流で細かいニーズにも対応できる点は強みだが、セキュリティー対応など社会的責任は重い。女性の社会進出を背景に子育て支援は拡大が予想されるが、収益の成長に関しては未知数の部分もある。

 アズママの甲田恵子社長はJVPFから資金提供を受ける理由について、「高い社会性を維持しながら事業を成長させていくことができる」と話す。短期でリターンを求めるファンドから資金提供を受けた場合、マネタイズ(収益事業化)を急ぐあまりに独創性が失われ、事業リスクが高まる可能性もある。調達したいのは試行錯誤の間も逃げ出さない資金。JVPFと利害が一致した。

(日経QUICKニュース 片野哲也)

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