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前払いカードで「安心」買う 匿名でネット決済

2015/8/9

「プリペイドカード」と呼ばれる前払い式カードを使う人が増えている。求めているのは使いすぎなどを防ぐ「安心感」。新しい決済文化となりつつある。
店頭に並ぶプリペイドカード(東京都千代田区のセブンイレブン麹町駅前店)

大学生の鈴木翔太さん(仮名)は3カ月に1回、アルバイト代が入るとコンビニへ向かう。「アマゾンギフト券」や「アイチューンズカード」などのプリペイドカードを買うためだ。1回の購入は約2万円。カードに書かれた番号をネット上の通販サイトに入力すればゲームやアプリを買える。クレジットカードもあるが「ほとんど使わない」。

■お金の番号を買う

いわば、お金で「お金の番号」を買うこの仕組み。電子マネーの一種で、消費者が買った番号と残高を、事業者がサーバーで管理するため「サーバー型プリペイドカード」と呼ばれる。日本資金決済業協会によると2013年度の発行額は約7兆1千億円で、統計を取り始めた10年度の1.4倍になった。今ではカードの種類は数百点に。コンビニでも入り口やレジ横などで売り場を拡大している。

なぜクレジットカードを使わず、わざわざお金の番号を買うのだろうか。「クレジットカードは使いすぎるから怖い」。鈴木さんは苦い思い出を打ち明ける。中学生の時、ネットゲームに夢中になり親のカードで1週間に4万円も使ってしまった。「自分にカードは向いていない」と感じたという。任天堂やLINEのプリペイドカードはこうした使いすぎ防止のため、親が子に与えることも多い。

もう一つの大きな理由はプリペイドカードの「匿名性」にある。ライフカードはVISA加盟サイトで使えるネット専用プリペイドカード「Vプリカ」を発行し、150万人以上が利用している。審査は不要で、ネットで使っても個人情報が流出する恐れがない。海外の通販サイトに個人情報を入力するのは怖い人などが使っているという。

その匿名性から派生した新市場もある。プリペイドカードの「現金化」だ。アマゾンギフト券を中心に売買市場が成立。ネット上には「即日換金」「買い取り率90%」などとうたう専用サイトが乱立する。景品や贈り物として手に入れたプリペイドカードを、実際には使わない人などが換金する際に利用する。取引業者は手数料を得る仕組みだ。

■逆手に取る詐欺も

匿名性はもろ刃の剣でもある。足がつかないことを逆手にとり「プリペイドカードを買ってその番号を教えて」と消費者に指示し、だまし取る詐欺が続出。「その番号を現金化する組織的なマネーロンダリング(資金洗浄)が行われている」と電子決済コンサルタントの山本正行さんは話す。アマゾンギフト券の買い取りサイトを運営する業者の一人は、「海外では売買サイトは成長市場なのに、このまま負のイメージがつけば日本では発展しない」と憂う。

プリペイドカード市場そのものの勢いは止まらない。JCBなど大手カード会社もプリペイドカードに参入。これまでのネット専用プリペイドカードと違い、リアルな店舗で使え、チャージ(入金)することもできる。狙うのはクレジットカードを持たない若者や高齢者の取り込みだ。日本人は「現金主義」が多く、クレジットカードの普及が他の先進国より遅れてきた。その根底には「借金イコール悪」すなわち「クレジットカードは怖い」という価値観があるとされる。

貨幣の歴史に詳しい桜井英治・東京大学大学院教授は「中世以降、貨幣が重くなり不便な時代に手形などの信用決済が台頭してきた」と話す。確かに小銭が財布をぱんぱんにするのは煩わしい。ネット時代に現金だけでは不便な場面も増えた。でもクレジットカードはなんだか怖い。そんな日本人の心をプリペイドカードはつかんでいる。

■クレジットカードと比較 「使いすぎが怖いんです」

ツイッターでも、プリペイドカードに関するつぶやきが多数見られた。

クレジットカードとの比較では、「クレジットでやったらすんなり課金しすぎて危険過ぎたから止めた」「プリカよりもクレジットの方が手軽な反面危険じゃ」など、使いすぎを恐れる声が多かった。「いい加減クレカ(クレジットカード)作れって話なんだけど、無職だからなあ。審査で落ちちゃう」と、カードを作れない人のつぶやきもあった。

プリペイドカードは「万が一カード情報とかが漏洩しても、先払い分の金額以上は使えませんし、個人情報も不要なので安心はできますね!」との声もあった。一方、現金化についての疑問やトラブルについてもつぶやかれていた。

主なつぶやきの調査はNTTコムオンラインの分析ツール「バズファインダー」を用いた。

(福山絵里子)

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