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怒り、パニック…感情を手なずける「自分実況中継」

2015/8/18

日経ウーマンオンライン

 独身、既婚、家族と同居、ひとり暮らし、子育て中…。どんな状況にあっても精神的、物理的に「ひとり」の時間を作ることはできます。「ひとり力」をつけることで、ほっとしたり、リフレッシュしたり、リラックスしたり、将来のことを楽しく想像したり、今までの振り返りをしたりできるようになれば、慌ただしい毎日も、心穏やかに過ごせるようになります。今回は、起きたトラブルを笑い飛ばす「自分実況中継」の方法をテーマにお伝えします。

■起きた出来事をロングショットで見てみると

(C)Pixta

 喜劇王、チャールズ・チャップリンは「人生はクローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇」という言葉を残しています。過去を思い返してみると、「当時はもう、人生真っ暗だと思ったけど、今思えばたいした話じゃないし、あの出来事があったから今があるんだなぁ」なんて思えること、誰にでもひとつやふたつ、あるのではないでしょうか。

 例えば私の場合、大学受験に二度失敗したので、大学1年生のときにはすでに二十歳を越えていました。当時は、現役で合格した人たちに混じって自分だけ二十歳なんて恥ずかしい、就職活動の時に不利になるんじゃないか、など、あれこれ悩んだりもしていましたが、実は気にしているのは自分だけでした。

 就職活動や仕事の場では年齢で評価が変わるわけではなく、会社に何をもって貢献できるかが問われるわけですし、逆に浪人した分早いうちに挫折経験があり、粘り強い、と評価してもらうこともあったりして、いわゆる「二浪」も別に悲劇ではなかったと分かるのですが、当時の自分はそこまでどっしり構える余裕はありませんでした。

 振り返れば気付くことも、今、ここで起きたトラブルに対して「将来の喜劇になる」なんて達観してどっしり構える人はそうそういません。でも、大変なときこそ、ちょっとした視点の移動で辛いことをユーモアに変えることはできます。その秘訣は、「自分実況中継」です。

■自分実況中継で、冷静な自分を取り戻す

 自分実況中継とは、もう一人の自分が、自分を実況中継しているレポーターだと仮定して、ひとつひとつ言葉にしてみるというものです。怒りそうな時、何で自分は怒っているのだろうと見つめます。悲しくて泣きそうな時も、いま、どうして自分は泣こうとしているのだろうと考えます。それを心の中で実況中継してみるのです。自分のモヤモヤした無意識な気持ちを、言語という形で意識としてしっかり認めると、悲しみやイライラもロングショットで見ることができるようになります。

 例えば、取引先とメールでやりとりをしていて、「ちょっと、それはないんじゃない?」といった感じでムカッときたときなどは、こんなふうに実況中継してみます。

 「さあ、私が怒り始めました。『あいつの言い分はなんだ、無礼者』と、いつもの女王様気取りが顔を出して、相手に怒りをぶつけようとしてしまいました。さあどうする。この怒りをそのままメールにして返したら、暴力メールになってしまうぞ。そのメールを返したら一瞬スッキリするかもしれない。でも今後そいつとの取引が途絶えてしまう。それでもいいのか私? いったんクールダウンする必要があります」

 というように、頭の中でアナウンサーが実況中継しているかのように考えると、なんだか怒っているのがバカらしくなって、ちょっと冷静になれるのです。この一手間を加えることによって、感情的な対応で後悔することがなくなります。

 人は、他人のことはよく見えるのに、自分のことが一番よく分からないものだと言います。もちろん、実況中継しても、完全に自分が自分から離れることはないので、本当に正しい「客観的な自分」が見えるかどうかは分かりません。しかし少なくとも頭の中にモヤッとした気持ちを悶々と抱えているよりは、少しは客観的になれる気がしています。

■プレゼン資料や提出資料も、「ひとりダメ出し」をしてみよう

 プレゼン資料や提出しなければいけない長めの文章は、集中力が持たず、なかなか手につかなかったり、逆に気分が乗りすぎたりして、後で振り返るとちょっと支離滅裂な文章になっていた、ということはありませんか。

 そんなときは、文章を書いたり資料をつくったりしながら、文章のツッコミどころも一緒に書き出して「ひとりダメ出し」することをおすすめします。私の場合は、連載や本の執筆の時も、文章を書きながら「ひとりダメ出し」をするようにしています。

 具体的には次のようにします。文章を書いていて論理に飛躍があった時、そこで執筆を止めるのではなくて、「前の文章と後の文章で言っていることが違う」とか「何を偉そうに書いてんの?」「この話の流れ意味不明」「あとでデータの裏付け必要」といった「心のつぶやき」「ツッコミ言葉」を、赤字で入れながら書くのです。

 このことによって、文章に勢いが出てきたときに、その勢いのまますっと文章を書くことができます。あとで見直した時、このツッコミを気にしながら、もう一度文章を練り直すことができるからです。

 この段階では文章がめちゃくちゃでも、とりあえず量は書けた、ということで達成感を得ることができます。その上で、何度も見直す際に冷静にこのツッコミ言葉を分析し、文章を整えるようにするのです。

 これは自己客観化の訓練にもなるうえ、何度も冷静な目で文章を見直すことになるので、独りよがりの言葉がだんだん少なくなってきます。

■自分にバーチャル秘書を雇ってみよう

 自分にバーチャル秘書を雇うのも有効です。スケジュールをパンパンに入れてしまい、「絶対無理だ。でも気合いでやる」なんて考えそうになったときは、「池田さん。こんなスケジュール、気合いでやろうと思っても無理です。あなたは同時並行でいろいろなことができない性格なのだから、いい加減それに気づいて、順番で物事を処理できるようにスケジュールを組み直してください」と外で秘書が騒いでいるのを想像するのです。

 すると、「ああ、そうだよな。気合いじゃ無理だよな」と、ハッと気持ちを切り替えることができるようになります。

 このように、ちょっとだけ外から自分を見つめるコツはけっこうたくさんあります。全部試さなくてもOK。あなたが試してみたいと思ったものがあれば、ぜひやってみてください。きっと気分が少し変わってきますよ。

池田千恵(いけだ・ちえ)
 Before 9(ビフォア・ナイン)プロジェクト主宰/CONECTA代表。図を活用した思考整理/情報発信/時間管理/目標達成手法を著書や講演、企業研修などで伝えるかたわら、朝9時までの時間を有効活用するための早朝セミナー「Before 9プロジェクト」を2008年より開催。ベストセラーとなった『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)は、朝4時に起きる「ヨジラー」急増のきっかけとなる。『「ひとり時間」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)、『朝活手帳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など時間管理に関する著書多数。

[nikkei WOMAN Online 2015年7月31日付記事を再構成]

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