水遊びは子どもの感覚を磨き、生きる力を与える

日経DUAL

厳しい残暑の日が続きますね。子どもは夏の水遊びが大好きだけれど、まだ水に親しんでいない子どもとどうやって関わって水遊びをすればいいのか悩んだり、逆に、張り切り過ぎて子どもを泣かせてしまうといった失敗経験のある親御さんも多いことでしょう。

そこで今回は、水遊びやプール遊び、どろんこ遊びなど様々な住民参加イベントを企画して、7万人以上もの親子に遊びを伝えてきた子どもの遊びの専門家、愛知教育大学教育学部創造科学系教授の竹井史さんに、子どもの感性や想像力を磨きつつ親子の絆も深まる水遊び術について取材してきました。

子どもに「この世は生きるに値する」と感じさせる

愛知教育大学教育学部創造科学系教授の竹井史さん

「夏になると、子どもは水と触れ合って遊びたがるようになるわけですが、その時に一番、重要なのは『気持ち良さ』です。

子どもの遊びのなかで最初のベースになるものとして『感覚遊び』というのがあります。目や耳、皮膚感覚など、五感を通して自然物と接していくなかで、様々な物事に対する認識を深めていきます。そんな遊びのなかで、水は子どもの感覚を磨いてくれる万能素材なんです」(竹井さん)

夏の暑い時期、水に触れるだけで心地良かったり、水温の変化を感じることもできます。ときにはしずくが光に反射してキラキラ輝くのを見たりするだけでも、幼児期の子ども達はその「不思議さ」や「美しさ」と出会えるのだと、竹井さんは言います。

「水というのは自由に形を変えることができる、ものすごく自由度の高い素材なのが不思議で面白いところです。また『これくらいの量の水をこれくらいのコップに入れると何人分になる』などの基本的な量の概念も、水遊びを通して学んでいきます」

子どもが1歳くらいになると、水道の流れる水を手のひらで受けてジーッと眺めたりするようになりますが、それは水という素材を、五感を使って理解するためにやっていること。それが、水を知るための「原体験」になっています。

五感を通した水遊びは、「楽しい」とか「面白い」「不思議だな」と感じることが何よりも大事。そのためには、まず、この夏の暑い時期「冷たい水が気持ちいいモノだ」と子どもに感じさせることが重要なのだと竹井さんは話します。

「なぜ、水の気持ちよさを幼児期に経験させてあげるのがいいのかというと、『水が気持ちいい』という感覚は、『この世は生きるに値する』ということにつながるからです。

お風呂に入って『気持ちいいなあ』と感じるのと同じく、気持ちいいという感覚そのものが生きる喜びでもあるし、遊んで楽しかったことが、次へのいろんな意欲へとつながっていく。だから小さいうちは、水にちょっと触れて戯れるだけでも、子どもにとっては素晴らしい体験になるんです。気持ちいいと感じることこそが生きる喜びになって、その結果、生きるエネルギーにつながっていくということですね」

無理に水につけるのは禁物

一方、最初は水が顔にかかるのを嫌がる子どもは多いもの。早く水に慣れさせようと焦る親も少なくありません。しかし、いきなり顔に水をかけるようなことは絶対にしてはいけないと、竹井さんは言います。

「無理やり顔にかけてしまうと、子どもにとって親は敵でしかなくなります(笑)。特にサービス精神旺盛なパパに多いのですが、何か子どものためにしてあげなければと、水をかけてじゃれ合ったり、プールに投げ込んでしまう。揚げ句の果てに子どもが泣き叫ぶといった光景をよく目にしますが、遊びも度を越してしまうと、子どもは水を気持ちいいモノと感じるより、恐怖を感じて水嫌いになってしまいます。喜んでいる顔をしているかどうかがシグナルなので、慎重に遊んでもらいたいですね」

もし、水遊びをしている時に顔にかかってしまった場合には、「あ、かかっちゃったね、わはは」と笑って楽しさを演出してあげるようにするのがいいと竹井さんはアドバイスします。

「『かかっちゃったね、冷たいね~』など、お互いに笑うようにしてください。そうやって水遊びは楽しいものだという経験を重ねながら、水に対する抵抗感を徐々に減らしていくことがとても大切です。焦らないで少しずつ、慣らしてあげるようにするのがいいでしょう」

3歳頃は水を使ったスキンシップが大切

幼児期の間は、水を使ってスキンシップをとるようにするのがポイントです。例えばお風呂でも、水を媒介にしながら、肌と肌が触れ合うようなスキンシップをたくさんすることを、特に3歳前後には大事にしてほしいと竹井さんは言います。

「3歳前後の時期は、自分と他者の区別が付くようになり、自分は自分という世界観もできてきます。遊びやスキンシップなどを通じて親の存在を理解していく大事な時期なのです。この時期の子どもは一対一で人間関係を培っていくので、水遊びを通して親子が仲良く遊ぶ経験をすると、親子の絆もグッと深まります」

例えばビニールプールで遊ぶときには、「ちょっと水に触ってみようか」と言いながら、子どもの手を握る。一緒に水に触れて「気持ちいいね」と言うようにしたほうがいいのだとも竹井さんは話します。

「大事なのは、子ども一人で遊ばせるのではなく、必ず親が子どもに手を添えながら、一緒に『気持ちいいね』って言うようにする。子どもは親と皮膚感覚で接しているので、安心感にもつながります。その安心感のなかで水の感覚の気持ちよさや楽しさをパパやママと共感体験するようにしてください」

肌と肌が触れ合うスキンシップには、お風呂やビニールプールでの水遊びにはうってつけ。そういう意味では、「普段、わが子と関わる時間が少ないと感じているパパこそ、水遊びをたくさんしてほしい」と、竹井さんは言います。

また、0~1歳児が水に親しむには「お化粧あそび」がオススメ。頬っぺたなどに水をペチャっとつけて、『はい、キレイになりました』という単純な遊びです。

「水なんだけれども、お化粧をしているというごっこ遊びです。嫌がらないようであれば、少しずつ水をつける範囲を広げていきながら、徐々に水に慣れさせることができます。

先ほども述べたように、幼児にとって気持ちいいという感覚は、生きていく上での大きな原動力になります。やさしい言葉をかけてあげて、子どもの様々な感覚器官に働きかけるように常にメッセージを投げかけて遊ぶのが、水遊びのポイントです」

親子のパイプを太くするチャンスだ

水遊びは親にとっても気持ちいいものなので、親子で共感体験ができる素晴らしい遊びなのだと竹井さんは言います。

「子どもも親もお互いに気持ちいい。そこで、パパが『ああ、気持ちいいねえ』と言うわけです。普段は子どもは子どもの世界を生きているし、親は親の世界を生きているのですが、気持ちいいという部分で共感できる。気持ちいいという言葉によって、両者の世界をひとつにつなげることができるわけですね。そこが、子どもの世界と親の世界の接点になります」

この共感体験こそが、親子の絆を深めるために大事なのだと竹井さんは言います。

「『気持ちいい』という共感体験をベースにした共通の遊びを重ねることで、お互いを新たに見直す機会が増え、相互理解が深まるようになります。

例えば、水鉄砲ひとつとっても、買ってきた水鉄砲で遊ぶのではなく、ペットボトルのキャップに穴を開けて一緒に作り、それを水鉄砲にして遊ぶ。親子で遊びの世界を創り上げていくわけです。すると、親子でお互いを見直す機会になる。『水鉄砲を作ってくれたパパはスゴいな』と子どもは思うし、その水鉄砲を子どもがああしたい、こうしたいと言えば、親はわが子のことを『発想力が豊かだな』と見直すといったことにもなるでしょう。そこがとても大事ですね」

夏の時期に、子どもの感性や想像力を磨くだけでなく、親子の絆も深まるとなれば「ちょっと頑張ってみようか」と思う親は多いはず。しかし、「親が子どもに何かしてあげないといけないと頑張り過ぎてもいけないし、義務感になってしまうと親も子もしんどくなる」と、竹井さんは言います。

「親も子どもも、一緒に生きているんだから、お互いに生きていることを楽しもうといった感覚でいるのがいいんじゃないでしょうか。何でもかんでも親がしてあげようと思っても、子どもは思った通りには育ちませんから(笑)。

何かやってあげようではなく、子どもが自分で何かしようとしている姿を見守ってあげることが、親としての大事な役目なんだと思います。夏の水遊びというのは、感覚体験を通した遊びで、肌と肌の触れ合い体験にもつながります。いろんな意味で親子が密接に関われる遊びなんです。だから、『頑張り過ぎないで楽しんでください』と言いたいですね」

[日経DUAL 2015年7月9日付の掲載記事を再構成]