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夏休みの「会社学童」広がる

2015/8/5

夏休みも中盤に入った。小学生を持つ働く親にとっては、弁当作りや宿題の手伝いなど、通常よりも大変な日々が続く。そんな親たちを支援しようと、企業が自分たちの社員の子どもを預かる、夏休み限定の学童保育を相次ぎ実施している。有名塾の講師による授業や科学実験、職業体験など、充実したプログラムが特徴だ。今どきの「会社学童」を探った。

「いってきます」「ママもお仕事、頑張ってね」

東京・丸の内。スーツ姿の会社員が行き交う朝のオフィス街で、小学生が続々「出勤」していくビルがある。三菱商事の本社だ。同社では今夏から「MC学童」というプログラムを始めた。夏休みの子どもの預け先に困っているという社員の声に応えた。

三菱商事では会社から英語などのレッスンに連れていく(東京都千代田区)

子どもたちは朝、親と通勤する。会社が用意した送迎バスに乗り、江東区の提携施設で英会話やスイミング、有名塾の講師の授業を受ける。帰りはバスで本社へ戻り、希望すれば親と一緒に社員食堂で晩ご飯も食べられる。費用の一部を会社が負担し、参加費は1週間で2万円。のべ90人が参加している。

「まさに、かゆいところに手が届くプログラム」。小4と小1の息子を参加させている同社の柚口祥子さん(41)は喜ぶ。英会話の授業は、レベルごとにクラス分けされ、帰国子女である子どもたちにも満足のいく内容だ。普段は公立の学童保育に通わせながら習い事もさせている。とはいえ「専業主婦であれば習い事や勉強ももっとサポートできるのに、自分にはその時間がない」と感じていた。

「日常、十分な時間がとれないからこそ、夏休みは集中的に課題克服に取り組むチャンス」。MC学童の導入を進めてきた女性活躍・ダイバーシティ室室長の泰田美賀子さん(50)は語る。中学生の娘を持つ母親として勉強や鉄棒の逆上がりなど、小学生になると親の関わりが必要なことが多いのを実感してきた。「女性活躍の制度は整いつつある。あとは働く親が安心して仕事ができるような支援ができれば」(泰田さん)

全国学童保育連絡協議会によると、全国の学童保育数は2万2096カ所(2014年)、入所児童数は93万3535人と過去最高を記録している。一方で、学童保育の不足や、小学校3年までしか在籍できない施設が多いなど課題も多い。

さらに、夏休みともなると、一日中学童保育の部屋で過ごす子どものストレスも大きい。都内に住む会社員の女性(37)は「高学年の子どもたちが暴れ回って、1年生の息子はいつも部屋の隅に追いやられている」と不安げだ。

「学童保育が足りないならつくればいい」。そんな発想で、NTTデータで働く社員たちが有志でつくったのが「ワーキングペアレンツ支援チーム」だ。7月後半からの4日間、社内の会議室やショールームを一時的にキッズルームに変え、外部講師を呼んで科学の実験をしたり、社員によるIT教室を開いたりした。参加費は保険費用と交通費以外は無料。代わりに、参加する子どもの親が有給休暇を利用して、持ち回りで運営スタッフになった。

NTTデータの社員有志が運営する学童プログラムで、子どもたちは風力発電機をつくった(東京都江東区)

社内のけん玉名人に講師を頼んだり、関連会社を通じてビル内のコンビニエンスストアで職業体験をしたりと、可能な限り、社内の資源を活用。子どもにとって、親が働く会社への理解が深まるような内容にするよう心がけた。

参加した青木紗羅さん(10)は、科学の実験プログラムが一番楽しみだった。出来上がった風力発電機を見て満足げだ。「お父さんの会社はいろんなことができて楽しい」。会議の合間や昼休みに、子どもの様子を見にくる社員も多かったという。09年のスタートから年々希望者が増え、今年は30人と昨年より18人増えた。現在は小学3年以上に限定しているが、低学年の参加希望者も多い。

周辺企業に門戸を開く会社学童もある。三菱地所は小学校低学年を対象に、東京・丸の内の商業施設やオフィスビルで「丸の内キッズアカデミー2015」を開催。同社のテナント企業の社員の子どもには割引料金を設定しているが、一般の参加も可能だ。パティシエ体験をしたり、CMづくりをしたりと、様々な仕事体験や学習ができる。午前8時半に受け付けて午後6時に解散なので、子どもと一緒に通勤でき、好評だ。

女性の社会進出を背景に、事業所内託児所など、企業が社員の子どもの預け先確保をサポートする動きは広がっている。ただ就学前の子どもが対象のケースがほとんどで、小学生になると支援メニューがかなり薄くなる。子どもを持つ社員が、安心して仕事と子育てを両立し続けるために、足りない部分を補強しようと知恵を絞る動きは、今後も増えていきそうだ。

(松原礼奈)

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