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夏ドラマで実力と存在感が際立つ50代俳優 日経エンタテインメント!

2015/8/17

今期の夏ドラマでは経験豊富な50代のベテラン俳優主演作が目立つ。CMなどでのコミカルな演技が評判の名バイプレーヤー・遠藤憲一は、菅田将暉(すだまさき)と親子役で『民王(たみおう)』に主演している。タイムリーな社会問題を扱う硬派な作品には、唐沢寿明と堤真一が登場。『ナポレオンの村』は、限界集落の村が舞台。『リスクの神様』は、危機に直面したときに何を守るかの「選択」がテーマだ。

■『民王』 遠藤憲一 外見は総理大臣のまま心は内気な大学生に

総理大臣の父・泰山の姿で、国会に出ることになる息子の翔。とんちんかんな答弁も日常茶飯事だが、純粋な意見がいつしか国会を動かすことに。共演の菅田について遠藤は「芝居がナイーブで上手。若いけれど肝が据わっている人だと思った」。金曜23時15分(一部地域除く)、テレ朝系で放送中

春クールでは暴力団の組長を演じていた遠藤憲一。今期は総理大臣にふんしている。長年の政治闘争の末、総理大臣の座を手に入れた武藤泰山。しかし、息子の翔(菅田将暉)と心が入れ替わってしまう。なぜそうなってしまったのか分からないまま、互いの役割を果たすことでその場を乗り切ることに。翔は政治に関して全く無知ながら国会で答弁し、泰山は現職総理大臣という中身のまま大学生活を送り、就職活動をする。

「総理大臣は一度は演じてみたかったのでうれしかったですね。ただ、結構早く息子と入れ替わっちゃうんですよ(笑)。できればもう少し泰山自身を演じたかったかな」

泰山が豪快な性格なのに対し、翔は内気な上、身なりに気を遣う「女子力男子」。この特殊な設定にどう取り組もうとしているのか。

「俺も心の中は結構乙女なので分かる部分はあるよ(笑)。それはともかく、菅田君の演じる翔の再現にこだわるとモノマネになってしまって、心の生き生きとした部分が出せなくなる。翔から引き継がなくてはいけないものはあるけれど、俺は心の中の大学生に、彼は心の中の総理大臣になれればいい。この作品の面白さや切なさが視聴者の皆さんに伝わるように、感性で演じたいね」

遠藤は池井戸潤原作の本作について、「こんなに軽快な作品も書くんだ」と意外に感じたという。

「原作と台本とは微妙に話が違うんですが、毎話笑えるし、キュンとする部分もあるので、こんなテイストの話が続けばいいなと。この作品は丁寧に作れば見てくれる人たちが『うわ、いいじゃん』ってなる可能性がある。そこを目指してやっていきたいね」

■『ナポレオンの村』 唐沢寿明 限界集落を救うために1人の公務員が立ち上がる

浅井の相棒となる星河市役所職員・岬由香里役に麻生久美子。由香里は市長の福本(沢村一樹)から、浅井を見張るよう命じられる。そのほか共演は、浅井の一番の理解者である年の離れた幼なじみに山本耕史、市長の腰巾着にムロツヨシら。日曜21時、TBS系で放送中

若手の起用で新鮮味のある顔ぶれの作品がそろったTBSだが、看板枠である日曜21時には、実力派の大人のキャストをそろえた『ナポレオンの村』を放送中だ。地元の自治体も村民も、復興を諦めている限界集落が舞台。消滅寸前の神楽村に、ある日1人の公務員・浅井栄治が赴任してくる。彼はこの村を立て直そうと型破りな挑戦をし、事なかれ主義の役人たちや村人たちの心を動かしていく。

浅井を演じるのは、唐沢寿明。破天荒なスーパー公務員という役をどのように考えているのか。

主人公の浅井は、“何もない”過疎の村で、そこにしかない価値を生み出そうとする

「物語の序盤ではまだ、浅井が何のために限界集落を救おうとしているのか、そのあたりの思いやバックグラウンドは見えないんですよ。でも、彼は何もないところからアイデアが浮かぶわけじゃない。和紙をすいているおばあちゃんの姿を見て、スカイランタンを祭のメインイベントにしようとひらめいたりするわけで、人との出会いによっていろいろなものを感じたり、何かを生み出しているんです。そう考えると、実はそんなにスーパーマンじゃないんじゃないかな。ただ、人が見落とすようなところに目がいくっていうことが特別なのかもしれないね」

この村を自治する星河市の市長・福本(沢村一樹)との攻防も見どころ。福本は、困窮した財政を立て直すために神楽村の廃村を推進しており、浅井をけん制し、あらゆる方法で妨害する。

「福本にとっては、浅井は政策の邪魔だもんね。彼は彼で政治生命がかかっているわけで、決してヒールではないんです。双方に言い分があるなかで、じゃあ何が正義なの? というところに決着をつけないといけないのが、今回難しいところだと思います」

また、現代社会が直面している問題を取り上げることに関しては、意義を感じているという。

「これからも高齢化などでこのような例は増えるだろうし、どうやって乗り切るかを題材とするのは、面白いと思います。でも、リアルにやり過ぎると明るさがなくなってしまうので、夢と希望を織り交ぜていければいいなと。このひと時で、救われるような気持ちになってもらえればうれしいです」

■『リスクの神様』 堤 真一 1回の対応が運命を分ける危機管理がテーマ

かつてアメリカのGE社や政府関連の危機管理に携わり、“the God of risk”(リスクの神様)と噂された西行寺が主人公。権力に臆さず、多くの会社関係者の人生を守るために尽力する

食品偽装や個人情報流出、リコールなど、連日報道される企業の不祥事。『リスクの神様』は、一度の過失でも対応によっては完全に信頼を失うことになる、企業のリスク管理をテーマとしている。

主演は、民放連ドラ出演は8年ぶりとなる堤真一。堤が演じる西行寺智は、アメリカでも手腕を認められた伝説の危機管理専門家。日本最大の商社・サンライズ物産の危機対策室長として、「危機は100%回避することはできない」「危機に陥った時はひとつのものしか守れない」などの言葉で社員を鼓舞し、会社を救っていく。

「扱っている題材は相当骨太ですよね。ほんの少しの対応でダメになってしまったり、本当に会社って大変だなと。脚本はすごくしっかりしていて、ニュースをにぎわせているような身近な事例も出てきますし、面白いです。ただ、内容が社会派ですし、恋愛の要素もないので、あまりシリアスだと、見ている側は疲れてしまうかなと。なので、僕自身は固くなり過ぎずに演じたいと思っています」

西行寺は、目的のためには手段を選ばない。しかし、「決して私利私欲のためではなく、社会的な影響を考えての行動なので、非情な人間だとは思っていません。人間らしい魅力的な弱点もちょこちょこ出てきます。でもそれ以外では、あまり感情に抑揚をつけないようにしています」

キャリアを積み上げてきたが、開発した次世代型バッテリーのリコール問題に巻き込まれて、出世争いに敗れたかおり(戸田恵梨香)は、危機対策室で西行寺とともに働くことになる。水曜22時、フジ系で放送中

共演陣は、古田新太、吉田鋼太郎、小日向文世と、堤と同じく舞台経験の豊富な実力者が並ぶ。ダンサーの田中泯は、民放連ドラ初出演。堤にとって旧知であり、構える必要のない人たちだとのこと。

「曲者ばかりですね(笑)。怖い反面、楽しいし、うれしい。こういうキャストでできるのは本当に幸せですね」

ヒロインの戸田恵梨香とも、舞台『寿歌(ほぎうた)』(12年)で共演経験があり、「お互いのダメなところも知っているので、気が楽なんですよ」。戸田は、サンライズ物産で働く女性総合職という役どころ。アクシデントの中で彼女がどう成長していくかも色濃く描かれる。

「恵梨香は作品が何を伝えようとしているかを的確に理解しているから、役の根幹をガチッと握れる。若いのにすごいなと思います。オジさんも置いていかれないように頑張ります(笑)」

(ライター 内藤悦子、田中あおい、松下光恵)

[日経エンタテインメント! 2015年8月号の記事を再構成]

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