再発見、家族アルバムの魅力 思い出の喪失に危機感

デジタルカメラの時代になって、撮った写真はプリントしないで画面で眺めるだけ――。こんな風潮が広がる中、家族写真の魅力を再発見しようとする動きが出始めている。

「そのシールかわいい~」。千葉県松戸市にある喫茶店。写真を持ち寄り、飾り付けながらアルバム作りを楽しむ「アルバムカフェ」の一コマだ。初参加した主婦の根本涼子さん(46)は「家族の写真はぜんぶパソコンの中。でも、これからはアルバムを作ってみようと思う」と話す。

主宰するのは松戸市在住の主婦、東海林智絵さん(39)。アルバム作りの魅力を伝えようと月に数回、こうした催しを開く。「アルバムにしておけば子供でも気軽に引っ張り出して眺められる。家族の会話が増え、思い出も共有できる」とメリットを語る。

東海林さんは富士フイルムが任命する「アルバム大使」の1人だ。同社が2012年に普及活動の一環として本格展開を始めた。現在は3000人近くが全国で活動する。

デジカメでは画面で写真を確認できるため、現像しなくなったという人は多い。DPE(写真の現像・焼き付け・引き伸ばし)大手のキタムラによると、同社の店頭に出される現像枚数は年率5%以上のペースで減り続けている。

市場2割近く縮小

NPO法人のフォトカルチャー倶楽部(東京)が1月に約600人に実施したアンケートでは、写真をアルバムに「まとめている」という人も32%どまり。矢野経済研究所の推計では、10~14年度に国内アルバム市場は2割近く縮小した。アルバム大手ナカバヤシは「共働き世帯が増えてお母さんが忙しくなったことも影響している」とみる。

一方で、そんな風潮にあらがう動きも活発になってきた。北九州市の山下知美さん(44)は1月、市内にスクラップブッキング(SB)のキット専門店「ヴィ・ヒロンデル」をオープンさせた。SBとは、写真を台紙に貼って飾り付ける米国生まれの手作りアートだ。近年、女性を中心に静かな人気を集めている。

山下さんは中学生の時に父が事業に失敗し、両親が離婚。父親を恨んだ時期もあったが、成人時に渡されたアルバムに書き込まれた父親の言葉を見て「愛してもらっていたんだ」と救われた気持ちになった。写真店勤務などを経て、家族写真の魅力を伝えようとSBの普及活動を始めた。

山下さんによると、SBを始める人の多くに共通するのは「危機感」だ。デジカメが普及して10年以上。家族の写真は携帯やパソコンに入れっぱなしのまま、壊れたり買い替えたりして今はどこにあるか分からない――。そんな思い出の喪失に危惧を覚える人が少なくないのだという。

フォトブックが成長

手作りは難しいという人には、注文するだけで簡単に写真を1冊の本にしてもらえる「フォトブック」サービスも人気だ。市場規模は14年度に100億円を突破した。

都内でフォトブック教室「メモアル」を開く徳本雅美さん(36)によると、受講者に多いのは共働きで育児休暇中の女性。とくに子供が2人目以降の人が目立つという。「写真を整理しなくちゃと思いながら今まで手を付けられなかった人たちが、育休中になんとかしようと思って始めるケースが多い」と分析する。

1977年放映のテレビドラマ「岸辺のアルバム」では洪水でマイホームが流された後に残ったアルバムが家族の絆の象徴として描かれた。11年の東日本大震災でも、泥の中から回収されたアルバムが多くの被災者を元気づけた。

家族写真の歴史に詳しい福岡市博物館の有馬学館長(日本近代史)は「アルバムとは家族の歴史を受け継ぎ、伝承していく装置でもある」と指摘する。もうすぐお盆休み。今までの写真を整理し、家族の思い出を振り返ってみてはどうだろうか。

(本田幸久)

古いアルバム開いてみると…若かりし家族や私に再会

ツイッターでも家族写真に関する多くのつぶやきがあった。目立ったのは「ふと思うとアルバムぺらぺらとか出来ないんだよな。ちゃんと現像しないといけない気がしてる」などと危惧する書き込み。

古いアルバムに元気づけられている人も多かった。「最近しんどい時は必ずアルバム見て家族の写真を見て元気出します。幸せです!!」「部屋掃除してたら古いアルバム出てきたから見てたら自分の名前の由来とか出てきて泣きそう」という声があった。

また「先日、自宅のアルバム達をがさごそやっていたら亡くなった祖父の若かりし頃の写真が出てきた。何かの集合写真っぽくて、写真の裏を見てみると『昭和19年8月15日』という日付が書いてあり、とにかく家族を呼び集めた私」という人もいた。

この調査はホットリンクの協力を得た。