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70歳まで年金を受け取らない選択 経済コラムニスト 大江英樹

2015/8/6

 今、既に年金を受給している人を除けば、ほとんどの人にとって年金を受け取ることができる年齢は65歳からです。ところが公的年金には繰り上げ支給という制度があって、60歳からでも年金を受け取ることはできるのです。

 ただし、もし年金を繰り上げて支給を受けてしまうと、通常の受け取り開始年齢の場合よりも支給金額が少なくなってしまいます。どれぐらい少なくなるかというと、仮に5年早めて60歳から受け取り始めると、0.5%×12カ月×5年=30%、すなわち65歳からの5年間に比べて、3割も年金支給額が減ります。さらにいったん早めに受け取ってしまうと、この減額された金額は生涯にわたって続くのです。

 よく話題になるのは、それでも早く受け取った方が得じゃないのか?という議論です。大体、損得の分かれ目になるのは76歳ぐらいといわれていますから、それ以上長生きすれば通常の受給が得、それより早く亡くなれば繰り上げ支給を受けた方が得、ということになります。

 確かに早く死んでしまうのであれば、早めにもらっておいた方が得だということになるのですが、だからといって早く死にたいと思う人はいないでしょう。早死にすれば先行きの受給機会も失ってしまいます。

 そもそも年金というのは長生きした結果、お金がなくなってしまうというリスクに備えるための保険です。公的年金は長生きを前提に制度設計されているわけで、早く死んでしまったら結局のところ損なのです。

 したがって健康で長生きしようという意気込みも込めて、私は繰り上げ支給を受けない方が良いと思います。しばしば金融機関が「年金なんてもらえるうちにもらっちゃった方がいいですよ」といって繰り上げ受給を勧めることがあると聞きますが、恐らくそれは年金の受け取り口座を自行につくってもらいたいがためのセールストークだと考えたほうがいいでしょう。

公的年金の繰り下げ受給の増額率
増額率=(65歳に達した月から繰り下げ申出月の前月までの月数)×0.007
請求時の年齢増額率
66歳0カ月~66歳11カ月8.4%~16.1%
67歳0カ月~67歳11カ月16.8%~24.5%
68歳0カ月~68歳11カ月25.2%~32.9%
69歳0カ月~69歳11カ月33.6%~41.3%
70歳0カ月~42.0%

(出所)日本年金機構ホームページ

 さらにいえば、本来なら65歳から受け取れる年金をあえて受け取らずに支給を遅らせるのがベストの選択肢です。この場合は、繰り上げ支給とは逆にもらえる年金額は増えます。

 どれぐらい増えるかというと、先ほどの繰り上げ支給とは逆にもらい始めるのを1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ増えていきます。仮に70歳まで5年間受け取り開始を遅らせると、0.7%×12カ月×5年=42%、何と65歳からの5年間に比べ、受け取る年金額が4割以上も増えることになります。

 例えば65歳からの年間の公的年金受取額が通常の200万円ぐらいであれば年間84万円増えることになるわけです。これは年利8%で5年間運用した場合以上の金額となります。しかも価格変動リスクはないわけですから、これ以上ない有利な資産運用法といっていいでしょう。

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