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相続トラブル百科

遺言書は万能じゃない 立ちふさがる壁 司法書士 川原田慶太

2015/7/31

 公証役場で作成される遺言書の数が増加を続けています。1989年には4万件程度だったものが、2014年には10万件を超えるまでになりました。この間、実に2.5倍もの伸びとなっています。

遺言書あれば安心といえないケースもある

 この数字に、さらに拍車をかけるような動きもあります。「遺言書を書けば節税に? 遺言控除の行方に注目」(7月17日付)でもお伝えしたように、遺言書を使った相続に税制上の優遇を与えようという試みです。もともと件数自体が増加傾向にあるのに加えて、追い風となりそうな政治の流れまであるわけですから、遺言書作成がますますポピュラーとなるのは間違いありません。

 ただ、相続の現場に身を置いていると、「遺言書作成=相続トラブルの回避」と楽観はできないのが正直なところです。実際の相続では、遺言書がある種の「壁」に当たってしまうトラブルを見かけることが少なくないからです。

 この「壁」には、代表的なものが2つあります。ひとつは「日付」にまつわるもので、もうひとつは「遺留分」に起因するものです。遺言書がさらに普及するためには、この種のトラブルをある程度まで手当てできるような施策が同時に必要となってくるようにも思います。

 まずはひとつめの壁、遺言書の日付に関するルールについて見ていきましょう。遺言書は本人の自由な意思に基づいて作るものですから、「いつ書いてもOK」というのが原則です。もちろん「書ける年齢の下限(15歳)を満たしてない」だとか、「認知症ですでに意思を表示できない」などの例外のケースもありますが、基本的にはいつでも、何度でも書き直してかまわない、という前提があります。

 ところが、何回も書き直せるとなると、場合によっては困った事態になります。いずれも本人によるものではあるが、内容の違う遺言書が何通も並立して存在する--という事態が起こりうるのです。例えば、こちらの遺言書には「あの土地はAに相続させる」と書いてあり、あちらの遺言書には「あの土地はやっぱりBにやる」と書いてあったとしたら、どちらの内容が有効となるのでしょうか。

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