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19歳の世界的ピアニスト 才能を引き出した母の15年間

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NIKKEI STYLE

日経DUAL
「子どもにどの時期から、どんな習い事をさせるか」。多種多様な選択肢があるだけに、この問題の答えが見つからず迷っているママ&パパは多いようです。そこで、日経DUALでは特集「習い事のリアル~2015年春~」で、様々なジャンルの子ども(幼児~小学校低学年)向けのスクールを取材しました。今回は、ピアニストの松田華音(かのん)さんと母親の雅子さんへの母娘インタビューをお送りします。

2014年秋、18歳のプロのピアニストとしてデビューした松田華音さんが、ピアノを習い始めたのは4歳のとき。その後、わずか6歳で才能を見いだされ、ロシアへの留学を勧められました。名門・グネーシン音楽学校に首席で入学。7歳にして、エドワード・グリーグ国際ピアノ・コンクール(モスクワ)でのグランプリを受賞したのをはじめ、数々の国際コンクールでグランプリや1位を獲得。8歳でオーケストラと共演するなど、非凡な才能を発揮してきました。

輝かしい経歴と「華音(カノン)」という音楽にちなんだ名前を聞くと、生まれたときから音楽家になることを期待され、厳しい英才教育を施されてきたのでは…と想像する人が多いのではないでしょうか。

しかし、華音さんと母親の雅子さんのお話を伺ったところ、そんなイメージは見事に覆されました。

最初に習ったバレエは好きになれず 次に出合ったピアノで「楽しい!」

DUAL編集部 最初にお母様の雅子さんに質問です。お子さんに「華音」と名付けたということは、やはり音楽の道に進ませたいという思いがあったのですか。

雅子さん いえ、響きがかわいらしいという理由で、たまたま付けた名前なんです(笑)。音楽とはほとんど縁が無い家庭で、実は華音に最初に習わせたのは、バレエ。私が憧れていて、「女の子が産まれたらバレエを習わせたい」という夢があったんです。華音が3歳になったとき、バレエ教室に連れていったのですが、本人はバレエが好きじゃなかったんですね。かわいらしいレオタードやコスチュームを見せてもその気になってくれなくて…。私としてはガッカリでした(苦笑)。

―― では、ピアノを始めたのはどういうきっかけで。

雅子さん もともと、色々な習い事をさせてみようと思っていました。「次は何を…」と考えていたら、占星術師でもある私の兄が、華音が生まれたときに「この子にはピアノを弾かせるといい」と言っていたことを思い出したんです。実のところ、私自身が子どものころにピアノを習っていて、いい思い出が無かったんです。練習が大嫌いだったので(苦笑)。でも、「試しにさせてみようかしら」と思い、教室を探しました。そこで、記事を読んで知った細田淑子先生の教室を訪れたんです。あれが、華音が4歳のときのことです。

華音さん バレエのレッスンは嫌だったのに、ピアノを弾くのはとても楽しいと感じたことを覚えています。

雅子さん そう、最初から楽しんでいましたね。初めは指の置き方などの基本を習うのですが、いざ曲を弾き始めると、本人は弾きながら自然に体全体を動かして、何かを表現しようとしているように見えました。楽譜を読むというより耳で聴いて、感じ取ったままに表現している。自分の中に持っている何かを放出しようとしている…。そんな感じでした。

ピアノ開始2年目に"表現する才能"が見いだされた

―― 細田先生のレッスンはどのような方針だったのでしょうか。

雅子さん 30分から1時間程度の個人レッスンで、あまり細かなことはおっしゃらず、好きなように弾かせてくれていたと記憶しています。技術を指導するというより、音や曲に興味を持てるように誘導してくださっていましたね。先生が「これはこういう曲なのよ」と子どもにも分かるように説明してくださり、華音が「じゃあ、これは○○なの?」なんて質問をして。そんなお話をしながら、一緒に曲のイメージを膨らませていました。

華音さん 上手に弾くことを目指していたわけではなくて、ただ演奏することを楽しんでいた、という感じです。

―― それが、6歳にしていきなりロシアに留学することに…。

雅子さん 細田先生が招いたロシアの音楽学校の先生が、華音の演奏を聴いて入学を勧めてくださったんです。「この子は弾くことを楽しんでいる。自分なりに音を受け止めて表現しようとしている」という点を評価していただいたようです。

夫は海外で暮らした経験があり、「音楽のことは分からないけれど、将来、世界を舞台に活動したいと本人が思ったときに後悔しないような教育を最初から受けさせてあげたい」という思いを持っていました。そして可能な限り、精いっぱい応援してあげたいと背中を押してくれました。華音がまだ小さかったので私がモスクワに一緒についてゆき、夫は日本に残って、父親ができる形で応援することにしました。

今思えば、あのときに金銭的な問題やその他様々なことを深く考えていたら、モスクワに渡る決心はできなかったかもしれません。抽象的な表現にはなりますが、湖畔を散歩していたら目の前にボートが現れたのでつい乗ってしまった…。乗ってから考えたことのほうが多かった、という感じでした。

例えば、モスクワではまずお家賃が高くてびっくりしました。あちらに行けば私達はもちろん「外国人」。小さい子どもと母親の私との生活でしたから、安全性の確保にはかなり気を使いました。また、ピアノのお稽古ができる住環境でなくてはいけませんでしたから、なおさら選択肢が少なくて大変でした。

また最初はロシア語が全く分かりませんでしたから、日々の食料品も、ロシア人の方が利用するような安い市場には行けず、自分で選んでカゴに入れてお買い物ができる高級スーパーマーケットで買うしかありませんでしたし。大切な場面では、通訳の方にお願いしなければならず、音楽を勉強するための授業料だけではなくそういった費用も随分掛かってしまいました。

 6歳で才能を見いだされた華音さん。雅子さんと二人でロシアに渡って新しい生活に飛び込み、半年後に控える音楽学校の入学試験に備えてレッスンに取り組みました。その間にコンサートに参加する機会があり"演奏する喜び"を改めて実感。この地でピアノを学ぶ決意を固めたのでした。後に、4歳になった弟もロシアに移り住み、母子3人での生活が始まりました。

本や映画の登場人物と重ねて曲のイメージを広げる

―― グネーシン音楽学校では、どんな指導を受けたのでしょう。

華音さん初めて専門的な知識・技術を本格的に学びました。でも、それ以上に育てていただいたのが、「演奏家とは」という心構えや姿勢です。「演奏家は"ただ頑張って弾いています"というのではダメ。お客様に心地よさや、温かさ、楽しさなどを感じてもらわなければならない」と。「そのためには、音楽を通じて自分が何を伝えたいのかを持っていなければならない」と、音楽に限らず、"人間とは何なのか"といった哲学的なお話までしてくださいました。

―― そんな先生のメッセージに、華音さんはどう応えたのでしょう。

華音さん 先生から言われたことをそのまま聞き入れるのでなく、自分なりに考え、理解し、自分のものにすることを心がけました。次に先生に演奏を聴いていただくまでに、自分なりの考えでその曲を創るようにしたんです。曲への理解や思いを深めるために、色々な本を読み、映画を見たりもしました。

先生はよく、曲のイメージを本や映画に例えてヒントをくださいました。例えば、『エフゲニー・オネーギン』(プーシキンの韻文小説)という小説に登場する主人公のタチアナは、愛の告白の手紙を渡したところ、相手から冷たくあしらわれてしまいます。「あの場面のタチアナはどんな気持ちだったと思う?」と質問されたりするんです。これはあくまで一例であって、曲にどんなイメージを重ねるかは、私の自由なのですが。ピアノの前に座っていないときでも、この曲にはこの物語に重なる部分があるのでは……などとイメージを広げていました。

―― 演奏中は、そうした気持ちを曲に乗せているのですね。華音さんの演奏中の姿を見ると、全身で表現しているように感じます。

華音さん 先生からは「体や顔をムダに動かさないように」と注意されるんですが、気持ちが高まると自然に体が動いてしまうんです(笑)。表情もそうです。ロシアのコンサートで演奏したとき、子ども達から「演奏中の表情はどうやってつくっているんですか」なんて聞かれたんですけど、意図的に演じているわけでなくて、自然に気持ちが表情に出てしまいますね。

曲のイメージに加えて、プロになった今では"感謝"の思いも強くなっています。私のピアノを聴きに来てくださった皆さんに対する感謝の気持ちを込めて弾いています。

 「もしピアニストじゃなかったら、何になりたかったですか」という質問を華音さんに投げかけたところ、「やっぱりピアニスト」と即答されました。しかも、ジャズピアノなど他のジャンルに挑戦するよりも、このまま「クラシックピアノを極めていきたい」とのこと。心からクラシックピアノの演奏が好きという気持ちが伝わってきました。

練習は「気の向くまま」に 時間や分量は定めない

―― 自宅での練習にはどれほどの時間をかけてこられたのでしょうか。

雅子さん これは、ピアノを始めた4歳ごろからそうなのですが、「一日何時間練習する」とか、「何時から何時までは練習の時間」とか、そういう決まりを設けたことはないんです。決め事は「次のレッスンまでにやると決めた課題を完成させる」ということだけ。だから、難易度によって時間がかかったり、短時間で仕上がったりしていました。練習する時間の長さもタイミングも、華音の気の向くままにさせていましたね。

―― 幼かった華音さんは、練習を嫌がることはなかったのですか。

雅子さん 当然、気分が乗らない日もありました。うまくできなかったりすると練習を中断して、ふっと庭に出て草花を摘んで遊んでいたり。そのときは叱りましたね。「まだ課題ができていないでしょう。自分で責任を持ってやらなければダメよ」と。

華音さん 怖かった記憶があります(笑)。

雅子さん 後で「ママ、ごめんなさい」って、お花のブーケを持ってきたりしてましたね(笑)。

華音さん 決められた時間の練習をこなすのではなく、自分のコンディションに応じて練習したりしなかったりするのは、今も同じです。今の練習は一日4時間ほどですね。ピアニストの中には一日10時間くらい練習する方も少なくないと聞くので短いほうだと思います。

―― 変に縛られることがなかったからこそ、思いのままに発想を広げることができ、豊かな表現力が伸びていったのかもしれませんね。では、最後に、今習い事をしている子ども達にメッセージをお願いします。

華音さん 「心から楽しんで」ということです。演奏家を目指すのであればなおさらです。自分が楽しいと感じられなければ、必要な努力もできません。自分が楽しんでいなければお客様に楽しんでもらうこともできませんから。

―― では、子どもを持つ親御さんたちにメッセージをお願いします。

雅子さん 私が華音にバレエをさせたかったように、親が子どもにさせたい習い事ってあると思います。でも、それ以外に「子ども本人がやりたいと思うもの」がきっとあると思うんです。子ども自身が楽しめるもの、続けられるものを一緒に探してあげてください。子どもに詰め込もうとするのではなく、子どもの中から引き出してあげてはいかがでしょうか。

松田華音(かのん)さん
1996年、香川県高松市生まれ。4歳で細田淑子氏に師事、ピアノを始める。2002年秋、6歳でモスクワに渡りエレーナ・ペトローヴナ・イワノーワに師事、2003年、モスクワ市立グネーシン記念中等(高等)音楽専門学校ピアノ科に第一位で入学。2004年、エドワード・グリーグ国際ピアノ・コンクール(モスクワ)、グランプリ受賞。2006年、TVロシア文化チャンネル主催、くるみ割り人形国際音楽コンクール、ピアノ部門第一位受賞。2009年、AADGT 国際Young Musician Competition(ニューヨーク)第一位受賞。2010年『Классика-2010』(才能ある青少年の国際コンクール&フェスティバル)グランプリ受賞(カザフスタン)。2013年2月、モスクワ市立グネーシン記念中等(高等)音楽専門学校で最優秀生徒賞を受賞。ロシア最高峰の同名門音楽学校で外国人が最優秀生徒に選ばれたのは初めて。2014年6月、モスクワ市立グネーシン記念中等(高等)音楽専門学校ピアノ科を首席で卒業。9月、モスクワ音楽院に日本人初となるロシア政府特別奨学生として入学。11月、ドイツ・グラモフォンよりCDデビュー。オーケストラとの初共演は8歳。これまでにミハイル・プレトニョフ、マルク・ゴレンシュタイン、高関健などの指揮者、ロシア・ナショナル管弦楽団、ロシア国立交響楽団、キエフ国立フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団などと共演。2014年11月発売CD『松田華音デビュー・リサイタル』(ユニバーサルミュージック)。

(ライター 青木典子)

[日経DUAL 2015年6月17日付記事を再構成]

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