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「羊の国」のニュージーランド牛、米・豪の2強に挑む

2015/7/31

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で牛肉の関税引き下げに注目が集まるなか、ひそかに日本への輸出拡大を狙っているのがニュージーランドだ。TPPに関しては10年前に4カ国だけで進めていた当初からのオリジナル国。乳製品の輸出大国というだけでなく、畜産でも国際的なシェア獲得を目指している。日本では国産と輸入牛肉の争いが激化しそうだが、米国・オーストラリアという2強にニュージーランドも加わるのか。実力を探ってみた。

■脂肪分少なく歯ごたえあり

「ニュージーランド牛肉は脂肪分が少ない」と話すソーパー総料理長

「放牧でたっぷり運動した牛にはうま味が凝縮されていて、人間の健康のためにもファット(脂肪分)は多すぎる必要がないんだ」。ニュージーランドの5つ星ホテル「ファレカウハウ・カントリー・エステート」のマーク・ソーパー総料理長はこのほど来日し、笑顔で語った。

ビーフアンドラムニュージーランドの日本代表、ジョン・ハンドルビー氏も「ニュージーランドの牛肉は低カロリーで悪玉コレステロールも少ないのが特徴」と健康面を強調し、売り込みをかける。日本では肉に脂肪分である「サシ」がよく入った霜降り肉ほど高級品とされてきた。一方、こちらの牛肉は対極の赤身肉だ。

実際にステーキとして焼いた肉を食べてみると、脂肪が少ない分だけ和牛や国産牛より歯ごたえがある。国産や米国産の牛肉を食べなれていると「味はやや淡泊」と感じる人もいる一方、「脂身のぎとぎとした感じがしないので食事の『締め』として肉を食べられる」という高評価もある。

■ニュージーランド牛、放牧が中心

いまの日本では牛を育てるとき、輸入したトウモロコシなど穀物がエサの主流となっている。牛舎で効率よく太らせるには都合が良いといわれ、とくに戦後に外国産の穀物をつかった配合飼料が普及した。半面、ニュージーランドは牛を放し飼いにする放牧が中心となっている。北海道を除いた日本とほぼ同じ面積の土地に、人口は東京都の半分以下の450万人のみ。国土の約4割(約1200万ヘクタール)が牧場なので、外で牛を歩き回らせるのに適している。年間の温度差も10度前後と穏やか(日本の北海道・十勝は夏と冬の平均気温の差は30度近く)なので、牛にも過ごしやすい環境という。

牧草を食べて育った牛の肉は、穀物肥育よりもカロリーと脂質がそれぞれ4割低い(ヒレ肉で比較)といわれる。鉄分も多いので「貧血になりがちな女性にもお薦め」というのがセールスポイントだ。日本では健康志向から若者を中心に赤身肉が流行となっており、国内の和牛・国産牛業界にとっては競争相手となり得る。

日本は牛肉の6割を輸入に頼っている。輸入先の内訳(2014年時点)では1位のオーストラリアが54%、2位の米国が36%を占める。ニュージーランドは3位だが、シェアは5%にとどまる。それでも油断できないのは、畜産業界におけるニュージーランドの存在感が無視できないものだからだ。ニュージーランドは世界最大の乳製品輸出国として有名だ。牛肉輸出量は世界第5位だが、さらに攻勢をかけようとしている。

5月の統計では米国向けの牛肉輸出が前年同月比30%増の2万6500トンとなった。中国向けは、中国が米国からの牛肉の密輸を強く取り締まるようになったこともあり、同76%増の8400トン。世界への輸出量は同11%増の5万2300トンに伸びている。

■国産牛肉、脅かす勢力に

ニュージーランドは世界に輸出攻勢をかける(牛肉リブアイのグリル、都内レストラン)

ニュージーランドにとって、日本市場は輸出のフロンティアと映っている。同国からの牛肉の輸出相手国では米国がダントツの44%を占め、2位の中国が9.7%。3位の日本は6.8%で、4位の韓国は6.4%、5位のインドネシアが5.2%となっている。人口や経済規模から考えると、日本にはまだ購入を増やす余地があるとの見立てだ。ニュージーランドは12年にすべての牛に電子IDを装着するシステムを義務化しており、安全管理も輸出上の長所として売り込んでいる。口蹄疫(こうていえき)やBSE(牛海綿状脳症)の発症がなかったことも利点だ。

消費者にとって味や品質と同じように気になるのは価格だ。まだ町のスーパーでは、高い国産牛を選ぶか、安い米国産または豪州産を買うかという3択が定番だろう。今、ニュージーランド牛を食べるとしたら、ワカヌイ・グリル・ダイニングバー東京(東京・港)や同店の福岡店(福岡市)などのレストランにほぼ限られる。欧米で人気のある、あばら周りの肉、リブアイのグリルだと300グラムで3500円程度が多い。一方、流行しているステーキのチェーン店「いきなりステーキ」だと熟成国産牛サーロインステーキが300グラムで3000円、黒毛和牛サーロインステーキが同4500円となっている。部位が違うので一概には比較できないものの、国産と似たような価格帯は関税の引き下げによって将来的に下がる可能性もある。最近の赤身肉ブームに乗れば、米国、オーストラリアの2強に次いで十分に国産の牛肉のシェアを脅かす勢力となりそうだ。

(小太刀久雄)

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