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職場の知恵

外国人社員、「入社3年の壁」突破できるか

2015/7/28

 日本企業で働くホワイトカラーの外国人が増えている。事業のグローバル化に伴い、語学力にたけて多様な文化的背景を持つ外国人を採用する動きが広がっているからだ。かつては「外国人は入社3年程度で辞める」と諦める企業が多かったが、活躍し続けてもらおうと知恵を絞る職場が出てきた。どうすれば「入社3年の壁」を突破できるのか。先進企業の職場から秘訣を探る。

「外国人社員と働くことにすっかり慣れた」という織田さん(右)。左はネスターさん(東京都大田区のアルプス電気本社)

 その瞬間、研修センターに集まったサントリーグループの新入社員らはあっけにとられた。それまで日本語で進めていた社員研修が突然、「日本語禁止。これから90分間は英語のみ」になったからだ。

 「サントリーの『やってみなはれ』精神を英語で言うと『Go for it』。この言葉でサントリーのDNAを世界のグループ会社に広め、事業展開しているんだよ」。新入社員一人ひとりに4人の外国人講師が英語で話しかける。いずれも普段はIT(情報技術)インフラ整備などの部署で働いている社員だ。

 講師役を無事終えた入社4年目の米国人男性社員、グリーン・アンドリューさん(26)は「自分の強みを発揮できる機会が増え、会社の役に立っていると実感しやすくなった」と話す。

 サントリーホールディングスが新卒採用した外国人社員は30人超いる。「新卒採用を本格的に始めた2011年度以来、退職率はゼロ」(キャリア開発部の小北拓己課長)という。今後は本業に限らず活躍の機会を増やす方針だ。

 「サンノゼの国際エキスポで会った顧客はうちの電子部品を何に使いたいって? 用途を確認したいんだけど」。東京都大田区にあるアルプス電気の本社で米国拠点と電話でやりとりするのは入社12年目のアイルランド人社員、ロバート・ネスターさん(35)だ。国内外の営業拠点と連携し、家電メーカーなどに電子部品を売る営業マンだ。

 社員は自分の固定席を持たず、毎日空いた席で仕事をするのがルールだ。短期出張者を含め常時10人前後いる外国人社員と、数日に一度は隣り合わせになる。この日、ネスターさんの隣に座った営業本部の織田泰秀さん(52)は「今では外国人社員が職場にいない方が不自然」とすっかり慣れた様子だ。

新入社員研修で外国人社員が講師として活躍(川崎市にあるサントリーの研修センター)

 ネスターさんに入社3年の壁を越える秘訣を聞くと、3つのポイントを挙げた。まず「外国人と日本人社員が刺激し合える職場環境を整える」。次に「会社側は外国人に何を期待して雇っているかを本人に伝える」。本人も「何をやりたいかを会社側に意思表示することが重要」という。

 日本で働くホワイトカラーの外国人はリーマン・ショックを契機に減ったが、ここに来て増えている。

 厚生労働省の外国人雇用状況届出報告によると、ホワイトカラーの多くが該当する「技術・人文知識・国際業務」分野の在留資格で働く外国人は14年秋時点で10万4千人強と前年より約1万1千人増えた。

 人材紹介会社、ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京・渋谷)では「自動車部品や機械、エネルギー関連業界の顧客企業は外国人の採用を増やしており、成約件数に占める外国人の割合は5割近い」(中島英紀アソシエイト・ディレクター)。

 ただ、大手企業に入った外国人に「日本企業は昇進が遅く人生設計がしにくい」(マレーシア人男性、26)といった声は多い。新日本監査法人が3月発表した調査(経済産業省委託)では、7割超の企業が外国人社員の平均勤続年数を「3年以内」または「5年程度」と答えている。

 そんな中で、外国人社員が定着しているのが制御機器大手のナブテスコだ。社員約2千人のうち2.5%が外国人だが、日本人を含む社員の離職率は0.6%程度と低い。なぜ定着しているのか。

 13年春に入社したタイ人男性社員、コンタンジット・サンチャイさん(24)は「外国人の管理職や先輩が複数いるし、何よりも外国人社員だからといって特別扱いされないから居心地がいい」という。

 例えば入社後の人材育成プログラムは最初の3年間を基礎固めの期間と位置づけ、外国人社員であろうと日本人社員であろうと、同じ研修メニューをこなしている。

 日本語でビジネス文書などを作るのは日本人の新入社員でも容易ではないが、「仕事で普段使うのは主に日本語。できないと結局、本人が苦しむことになるので訓練して乗り越えてもらっている」(人財開発部の安藤広樹部長)。中国人女性社員、李慧琪さん(26)は「おかげで日本語力が磨かれた」と話す。

 国境を越えた人材の奪い合いが激しさを増している。昇進速度が欧米企業より遅い日本企業が、優秀な外国人社員をつなぎ留めるには「キャリア形成の早い段階で責任ある業務を与え、働きがいを実感させる工夫が欠かせない」。雇用事情に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの南田あゆみ副主任研究員はこう指摘している。(編集委員 阿部奈美)

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