世界が食べる日本の抹茶 高級品、菓子で身近に

抹茶人気が熱い。テーブルで気軽にできる抹茶教室や簡単に飲める商品が登場。抹茶菓子などをけん引役に市場が広がり、世界も注目する。新たな日本ブランドに育ちつつある。

「茶せんは前後に振りながら下から上に上げていくように」――。7月中旬、横浜市の住宅で開かれた抹茶教室では、テーブルに着席した洋服姿の女性4人が抹茶を点(た)てていた。

テーブルでできる抹茶教室(横浜市)

着物や正座がいらないテーブル抹茶教室「お抹茶 Happylife」は2年前に開業。この日は初の3時間集中講座。茶の知識を一気に教え、道具も一式提供。受講者はすぐに抹茶生活に入れる。会社員の海津智美さん(50)は「気軽で楽しく、道具を自分で買う必要もないので助かる。これからお茶の時間の楽しみ方を広げたい」と話す。

東京都中央区。日本茶専門店「おちゃらか」では1本2グラム200円の「いっぷく抹茶」の販売が好調だ。昨年の発売当初に比べ、月間販売数量は2.6倍に増加。購入した自営業の女性(46)は「抹茶は一度開封すると味が落ちていくので、2グラムのミニサイズは飲みやすい」と喜ぶ。

こうした手軽さは高級でオシャレな抹茶を身近なものにし需要を着実に増やしているが、需要の最大のけん引役は「食べる抹茶」だ。宇治茶専門店「茶寮都路里」の大丸東京店では抹茶菓子の店頭販売が前年比約2割増で推移している。日本茶レストランの「1899 お茶の水」は抹茶ビールに加え、抹茶のポテトサラダや抹茶を片栗粉に混ぜた揚げ出し豆腐のサラダを提供。ふりかけとして出すレストランも登場している。

飲みやすさが人気の「いっぷく抹茶」(日本茶専門店「おちゃらか」=東京都中央区)

全国茶生産団体連合会によると抹茶原料のてん茶の生産量は2014年に約1969トン。10年前より36%増え、過去最高を更新した。茶葉全体が19%減ったのと対照的だ。

外資が「新味」提案

抹茶が日本に伝わったのは約800年前。禅僧の栄西が茶の粉末をお湯でかき混ぜる「抹茶法」を伝えたとされる。その後、抹茶は茶道文化の象徴とされ、長年、格式が高いイメージが強かった。

転機は20年ほど前だ。1996年にハーゲンダッツジャパンが抹茶味のアイスを発売し、抹茶人気に火が付いた。01年にはスターバックスコーヒージャパンが抹茶とクリームの氷飲料を発売。外国系企業が抹茶の新しい楽しみ方を日本人に逆提案した格好だ。

抹茶は栄養成分が豊富。テアニンという成分はリラックス効果や高血圧防止効果が期待され、カフェインは疲労回復が見込める。急須でなく、そのまま飲むため栄養吸収がよく健康への効能は大きい。

米に専門カフェも

最近は訪日客の抹茶消費も多い。昨年秋には米国ニューヨークに初の抹茶専門カフェも開店した。外国人の抹茶人気が巡り巡って日本人の抹茶消費を喚起し、日常生活に浸透して、本来の「点てる抹茶」の関心につながっている。これまでの「飲む」から「食べる」へのシフトだけでなく、「食べる」から「飲む」への逆シフトが起きつつある。

産地でも変化が起きている。京都府南部の南山城村。農家が共同で緑茶を生産する農事組合法人グリーンティー高尾は昨年、せん茶生産の約4割にあたる15万平方メートルをてん茶に転換した。奥仲真也・副組合長(56)は「せん茶だけでは生活が厳しい」と語る。今は主に加工用だが、将来は茶道にも使う高級てん茶「宇治てん茶」の生産も目指す。

世界の緑茶生産は09~13年に年平均7万9千トン増えている。日本の年間生産量にほぼ匹敵する。お茶研究で知られる大妻女子大学の大森正司・名誉教授は「緑茶は世界の成長産業。日本の抹茶の知名度は高い。日本は抹茶を国際的なブランドとして確立する必要があり、それには国際基準作りが急務だ」と話す。抹茶は日本発のブランドの地位を固めつつある。

「濃い」「苦い」「甘い」…好み色々 本場の味に舌鼓も

ツイッターでは抹茶の様々な意見がつぶやかれていた。

味の濃さでは「今いるお店の抹茶は濃いんだけどスイスイいける」「濃い抹茶のアイス激うまっ」などと肯定的な声が多かった。

苦さでは「抹茶は苦いのがいい」と評価される一方、「苦くて飲めない」との声もあり、意見が分かれた。「抹茶の製品って苦みを押し出しすぎて甘さをおろそかにしてるの多い。苦いかつ甘いのを出せばええのに」との指摘がある半面、「抹茶のお菓子の『苦い+甘い』がどうしても好きになれないの」との声もあった。

一方、「京都行ったら絶対に抹茶買う」「京都御所、金閣寺行ってきたよ。念願だった抹茶飲めた。めっちゃおいしかったよ」と、本場で抹茶を味わいたい人が多かった。

調査はNTTコムオンラインの分析ツール「バズファインダー」を用いた。

(福士譲)