仕事服、プロの技で大変身
働く女性の仕事服選びやコーディネートを支えるサービスが広がっている。プロの手を借りることで、効果的かつ効率的に自己演出をしようとする女性たち。洗練されたファッションは、仕事への自信につながっているようだ。
「腰回りを隠せるからと10着以上持っていたプリーツスカートは、私には似合わない服と言われました」。パーソナルスタイリングの会社ファッションレスキュー(東京・渋谷)で5月から指導を受けている、日本IBMの山野紀子さんは打ち明ける。
40代に入り、仕事服選びに悩みを覚え始めた。顔立ちや体重の変化で、お気に入りの服は以前ほど似合わない。おしゃれよりも、手入れや着心地の楽さを優先する自分を変えたいと、プロに助言を求めた。
同社の政近準子社長、担当スタイリストの西畑敦子さんと面談。生活や好み、体形や顔の分析をして、独自の8種のテイストから「アクティブキュート」「ワイルドシック」が似合うと診断が出た。「手持ち服とは異なる方向性で、非常に驚いた」と山野さん。
続いて西畑さんに自宅のクローゼットを見てもらった。たんすの肥やしに別の服を合わせ、ジャケットの上からベルトを締めるなど新たな着こなし方を習った。
アドバイスのBefore-Afterで、印象がガラッと変化
別の日に西畑さんと小田急百貨店新宿店で買い物だ。似合う服や小物を扱う10店を4時間かけて回り、ワンピースやカーディガン、職場では初挑戦のパンツも購入した。
プロの指導に対し、これまで山野さんが支払った総額は20万円以上。決して安くはないが、「変わりたいという思いがかなった」と満足している。同僚の反応は「活動的で爽やか、色鮮やかな印象になった」「パンツでイメージ一新」と好意的だ。
スタイリストの西畑さんは、「上司や取引先を前に、自分がどうありたいかを『見て分かる』ようにファッションで表現することが、仕事のパフォーマンスに直結する」と指摘する。
新調したオーダージャケットの着回しアドバイスを実践
カラー診断で似合う色見つける
6月中旬、印刷サービス会社勤務の山田光恵さん(47)は松坂屋上野店(東京・台東)にいた。目的は計60分の「カラー診断+ミニナビ」(4320円)で自分に似合う色やアイテムを見つけること。営業職の山田さんは人と接することが多いため、「印象がよくなるといいな」と考えていた。
個室に入るとスタイリストがやってきて、診断が始まった。黄色やピンク、オレンジにベージュ。鏡の前に座った山田さんの胸元に様々な色の布をあてる。同系色を、春夏秋冬をイメージした濃淡で4色試し、それぞれ肌や目、髪の色や質感との相性をみる。
「この色だと暗く見えてしまう。こちらの方がお肌のつやが出ます」。スタイリストはあれこれ助言しながら、最終的に「淡い夏色がいいですね。元気な感じが出ます」と判断した。山田さんは「説得力がある」と納得した様子だ。
その後、売り場を見て回る「ミニナビ」に移る。歩きながら「アクセサリーはシルバーがお薦め」「お化粧もピンクを使うとより透明感が出ます」と話題が広がる。山田さんは「堅苦しくない職場ならお仕事でも着られますよ」との助言をもとに、ピンクのリネンシャツを購入した。実際には買わなくても、今後のファッションの参考にしてもらうだけでいいという。
大丸松坂屋百貨店は梅田や東京など6店で目鼻立ちに基づいてコーディネートを考える「印象診断」や、骨格から似合うファッションを紹介する「骨格タイプ診断」も実施している。昨年度の診断の売り上げは、前の年度に比べると1.3倍に増加。利用者は約1万人にのぼった。
「しばらく仕事から遠ざかっていた女性が復職する時など、人生の転機で利用されるケースも多い」(大丸松坂屋百貨店の持ち株会社のJ・フロントリテイリング)。働く女性が主要顧客の大丸東京店(東京・千代田)では1カ月先まで予約が埋まる人気だ。
三越伊勢丹や高島屋もファッションアドバイスのサービスを提供している。伊勢丹新宿本店(東京・新宿)では利用者1人につき2時間かけて全フロアを案内する。30~50代の働く女性が季節の変わり目などに利用することが多く、サービスを通じた売り上げも右肩上がりで伸びているという。
(南優子、天野由輝子)
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