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浜口ミホ 家族に寄り添う、住空間を創造

ヒロインは強し(木内昇)

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NIKKEI STYLE

仕事には大抵「枠」がついて回る。それは例えば予算だったり、納期や売り上げだったりする。中には万事取っ払いという仕事もあろうが、ならば必ずいい結果が出るかと言えばそうとも限らない。プロとは、工夫と発想と経験値で、枠内に収めながら枠の存在を感じさせない優れた仕事をする人を指すと思う。

浜口ミホは、女性初の一級建築士である。東京女子高等師範学校を卒業後、東京帝国大学の聴講生として建築を学び、前川國男に師事して現場経験を積んだ。彼女が独立して活躍するのは、住環境が大きく変わった戦後である。

かつて日本の住居は武家屋敷に見られる様式美が軸にあった。南側に客間、北側に主人の書院や家族の座敷がある。座敷は居間兼食堂兼寝室という「食寝融合」の暮らし。この住居の封建性に囚われない、合理的な住空間をミホは提唱していくのだ。

ひとつには、寝室を確立すること。食寝を分けることで快適な睡眠を担保でき、家事もしやすくなる。また、家族の居間を明るい南側にし、台所を食堂のすぐ隣に配した。

「食堂は一家のまどいの中心地です。そして台所はすまいの運営の機関室のようなものです。この二つをどうやってうまく結びつけてゆくか、ということは住宅設計の勘どころです」(「住みよいすまいと暮しの全集」)

それまで薄暗い北側の土間に追いやられていた台所から廊下を伝って食事を運ぶ手間を省き、子供達が常に母親のそばにいられるようにした。配膳台を食卓にする工夫や、台所と食堂の境のハッチをカウンターとして使用するなど、家事動線もスムースにした。彼女の設計した台所はのちに公団をはじめ広く取り入れられていく。

戦後、さまざまな価値観が入り乱れ、生活様式も多様になる中で、過去の概念に縛られず、個々が「どう住まうか」を考える時代が来たのだ。

「この雑多さの中からあるものを拾い、あるものを捨てて住まい方の新しい型をつくり出そうと努力する以外には、暮しに対する私たちの態度はないと思います」

銘々の家族の暮らし方にまず寄り添い、その上で建築家ならではの豊かなアイディアを提案して、快適な住空間を形にする――。浜口ミホは一貫して、そういう地に足ついた仕事をし続けた。

単に斬新なもの、目を引くもの、予算度外視なものならば、誰にでもできる。なににせよデザイン性は重要だが、建築物は誰がなんのために使うのかが要である。そこをなおざりにして、ただ建築家の顕示欲のために作られたような建物は、何年経っても景色に馴染まず、見ているこっちまで気恥ずかしくなる代物に終わるように思う。

反して浜口ミホは、時代や人々をよく観察し、住まいの在り方を考え抜いた。古い時代の概念を取っ払い、でも規定の枠内でこれだけ斬新かつ普遍的なことをやってのけた。だからこそ彼女が生んだ「新しさ」は、時を経てスタンダードになり得たのだ。

[日本経済新聞朝刊女性面2015年7月25日付]

木内 昇(きうち・のぼり) 67年東京生まれ。作家。著書に「茗荷谷の猫」「漂砂のうたう」(直木賞)「笑い三年、泣き三月。」「ある男」など。

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