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あなたも予備軍かも 突然襲う大人ぜんそくにご注意

2015/8/5

日経ウーマンオンライン

 「ずっとせきが長引いているけど、どうも風邪ではなさそうだ」。疑問に思ったまま毎日を過ごしている人はいないだろうか。「そのうち治るだろう」と放置するのは非常に危険な「大人ぜんそく」かもしれません。渋谷内科・呼吸器アレルギークリニックの土肥眞院長に聞きました。

■「自分はぜんそくじゃない」という思い込みは危険

 「ぜんそくは子供の頃に患っていても、成長すれば治る病気。大人になってしまえばもう発症することはない」と、思いこんでいないだろうか。実は今、大人になっていきなり「ぜんそくです」と診断される人が増えている。

 ぜんそくについて詳しい渋谷内科・呼吸器アレルギークリニックの土肥眞院長は「薬が良くなったので、ぜんそくで亡くなる患者さんは減っていますが、20代以上で発症する患者さんは確実に増えている」と話す。

 小児ぜんそくは約半数が成人前に寛解(症状が出なくなる状態)するが、残りの半数は大人になっても症状が残る。一旦寛解したようだったのに、何かのきっかけで症状が再燃することもある。それとは別に、小児ぜんそくの既往症がなかった人が成人してからぜんそくと診断されるケースは多くなっているというから油断はできない。

 成人ぜんそくで死亡した患者の、亡くなる前1年間のぜんそく症状。必ずしも重症ではなく、軽症の患者も含まれていた。近年は中等症で亡くなる患者も増えている。日本アレルギー学会喘息死特別委員会が1998~2003年の間の成人ぜんそく死(811症例)について調査。また、発作開始から1時間以内の急死が13.6%、発作後3時間以内と合わせると29%だった。救急室への到着前や直後の死亡が多く、自宅や搬送中に亡くなる人も多い(出典:Allergology International (2004)53:205-209)

 「成人ぜんそくの頻発年齢は20~50代。女性の場合はせきぜんそく(後述)という前段症状の人が多いですね。かなり症状は進んでいても、ほとんどの人が『自分はぜんそくかもしれない』とは思いません」(土肥院長)

■軽症でも発作が起きたら救急搬送?

 「ぜんそくだ」という自覚がないままでいると、最初にぜんそくの発作が起こったときが危険。自分の体に何が起こっているのかわからないので、救急措置が遅れ、最悪の場合は脳の酸欠が原因で重い障害が残ったり、命を落としたりすることもある。ぜんそくとしては軽症の患者でも、たまたま起こった激しい発作で亡くなることがある。ここ10年でぜんそく死はかなり減ったが、それでも年間1800人弱が亡くなっている。

■突然の発作を経験した人の話から学べること

【Aさんの場合】

心臓がバクバクして寝ていられない てっきり心臓の病気だと…

 3年ぐらい前から何かの拍子にせきが止まらないことがあり、「長引くせき」で検索しても結果にピンと来るものがなかったので放置していました。昨年の秋「風邪をひいたな」と思っていたら、ある晩心臓がバクバクして呼吸も浅く、横になっているのもつらい状態に陥りました。翌朝かかりつけのクリニックに相談し、心電図の検査を受けたのですが異常はなし。でも、血中の酸素濃度が低く、聴診で気管支が狭くなっている音がしたので、「ぜんそく」と診断されました。改めて専門医に診てもらったら気道の炎症がひどく、「1秒間に吐ききることのできる空気の量が普通の人の半分」という衝撃の検査結果。現在、飲み薬と吸入薬でコントロール中です。

【Bさんの場合】

体が重だるく動けない日々 初めての発作でパニックに

 ここ数年、風邪をひくとせきだけが残るなぁ。最近は花粉症でせきも出るなぁ…と思っていたら、今年の春、マイコプラズマ(せきが出るカゼに似た感染症)にかかってしまいました。せきで苦しく、体は重労働の後のような重いだるさで動けない。そのうち呼吸が「ゼーゼーヒューヒュー」になってきたので「何これ? ぜんそくみたいなせきだ」と病院に行きました。

 ドクターに「ぜんそくですね」と言われてびっくりです。小児ぜんそくではなかったし「花粉症の人はぜんそくにはならない」と思いこんでいたので、全く気がつきませんでした。その後、初めてのぜんそく発作を経験し「想像していたのと全然違う、苦しい」と、パニック状態に。その時は処方されていた吸入薬と飲み薬でなんとか治まりましたが「こんなに苦しいんだ。きちんと治療を続けよう」と決心しました。

■そもそも、どんな病気なのか

 ぜんそくの肺の状態と、気道の断面図。気管支の炎症が起こると、空気の通り道である気道が狭くなってしまう(右の気道)

 ぜんそくとは、気管支が炎症を起こし、空気の通り道である気道が狭くなったり、痰でつまりやすくなったりする病気のこと。その結果、気管支が過敏になり、話をしようとしたり、運動したりしようとするときにせき込んでしまったり、胸が苦しくなったりする。

 せきのため、仕事に集中できなかったり、夜ぐっすり眠れなかったりすることも。また、季節の変わり目や湿度の高い梅雨時、気圧が低い台風のときなどに悪化する傾向がある。ぜんそくが重症化すると気道内部が腫れあがったり、痰がつまったりして空気が吸えなくなる発作を起こすことがある。

 治療では薬で「元凶」である炎症を抑えて、せきや痰などの症状が出ない状態に気管支をメンテしていく。

■どういう人がなりやすいのか

 Bさんのように「他のアレルギーがあるとぜんそくは出ない」と思いこんでいる人は結構いるようだが、これは正反対。2010年に2万人規模で行われた調査でも、ぜんそく患者のおよそ3分の2に花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状があり、逆にアレルギー性鼻炎の患者の3分の1にはぜんそく症状があるという結果が出ている。

 「花粉症は上気道のアレルギー性疾患、ぜんそくの7割はアレルギー性で下気道の疾患です。上下の気道ですから、つながっています。ぜんそくの人が花粉症の時期に重症化したり、鼻炎のある人がぜんそくになると悪化しやすかったり、といった負のスパイラルに陥りやすいですね」(土肥院長)

 「アレルギーテストを受けたのはかなり昔」「花粉症だけど、せきも気になる」という人は一度、呼吸器科かアレルギー科のドクターに相談してみよう。

【セルフチェックリスト】

 一つでも当てはまれば、大人ぜんそくの可能性が潜んでいる。

□ 子供の頃小児ぜんそくだった
□ 花粉症やアトピー性皮膚炎など別のアレルギーがある
□ 家族にぜんそくの人がいる
□ 風邪を引くと治った後にせきだけが残る
□ 少し運動するとせき込んだり、息が苦しくなったりする
□ 季節の変わり目や寒暖の差が激しいときに症状が出る
□ 梅雨や台風のときなど天気が悪いと症状が出る
□ 仕事などでストレスが強いときにせきが止まらなくなる
□ 煙草の煙やクーラーからの冷たい風などの刺激で悪化する
□ 換気の悪いほこりっぽい部屋など特定の場所で症状が出る

■診断から治療まで

 なぜ「呼吸器科かアレルギー科なのか」というと、ぜんそくは百戦錬磨の外来ドクターでも即座の診断が難しい病気だからだ。ひとことで「ぜんそく」と言っても、アレルギー性のあるもの、ないもの。ゼーゼービューヒューの喘鳴があるもの、ないもの。ぜんそくと似たせきや痰の出る感染症もいくつかある。特に喘鳴がない場合は気道の中が腫れて狭くなっていることがわかりにくい。日数がかかる検査もあり、受診したその日に確定診断が出ないこともある。

 「せきぜんそくといって、気管支に軽い炎症が起きている場合もあります。これは『ぜんそく予備軍』と呼んでもいいもの。この段階でちゃんと治療をしないとぜんそくに移行しやすいのです」(土肥院長)

 一般的には、問診→診察→胸部レントゲン検査→呼吸機能検査→気道可逆性試験→血液検査 などを、必要に応じて行う。

 検査結果から医師はぜんそくかどうか、またぜんそくならどんなタイプのぜんそくかを判断し、症状に合った薬を処方する。一般的には、気管支だけに作用するステロイドの吸入薬を基本に、症状の強さに応じて複数の薬を組み合わせていく。通院ペースは人それぞれだが多い人で1~2週間に1回、少ない人は1~2カ月に1回ぐらい。症状が強く出たときはそのつど受診するのが望ましい。大人になってからぜんそくになった人が寛解する率は1割ぐらいだという。

 「自分の体の状態をよく知って、ぜんそくとうまくつき合っていくことが大切です。今、処方薬に使われているステロイド薬は局所的に作用するので安全です。妊娠に対する影響はまずないので、処方されている薬は勝手にやめずに、医師に相談してください。発作が起こると、お母さんも苦しいが、お腹の中の赤ちゃんも苦しいのです」(土肥院長)

■環境を整えるセルフケア

 誰をいつ襲うかわからないぜんそくは、まさに「サドンデス」なのか。

 実は、できるだけぜんそくにならないように、またぜんそくになっても症状を軽減できるように「打てる手」はある。

 まず筆頭は禁煙だ。煙草は気道を過敏にし、薬の効きも悪くするため、症状が重くなりやすい。次に風邪などの感染症にかからないようする。感染症をきっかけに気管支の炎症が悪化する人が多いからだ。

 「睡眠、バランスのいい食事。それから積極的に運動して体力をつけたいですね。せきはかなり体力を消耗します。せきが続くとろっ骨を傷つけたり筋肉痛になったりしますよ」(土肥院長)

 意外だが、大人のぜんそくの悪化要因には、ストレス、過労なども挙げられている。働く女性は要注意だ。また、成人ぜんそくの約7割がカビ、ハウスダスト、ダニなどのアレルギーと関係があるとみられている。自宅や会社、営業車の中など、長時間過ごす空間では掃除と換気を徹底し、アレルギーの原因物質を排除しておきたい。

 「エアコンや除湿機でダニが増えにくいように、室内湿度を70%以下に保つのも有効です。働いている方は部署替えなどで職場環境が変化するときに注意を。衣類がたくさんある倉庫や紙の多い書庫などはハウスダストもたまりやすいです」(土肥院長)。マスクも一助にはなりそうだ。

 そして何より火はボヤのうちに消す。ぜんそくはしっかりコントロールができていれば怖い病気ではない。発作を起こさないように、まずは受診してせきの原因と向き合おう。

この人に聞きました

土肥眞さん
 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック院長。 東京大学大学院医学系研究科で博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員、米国メイヨークリニック・スコッツデール生化学・分子生物学教室リサーチフェロー、ユタ大学内科呼吸器部門リサーチフェロー、東京大学医学部アレルギー リウマチ内科医局長、同外来診療担当副科長(外来医長)などを経て、2013年渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック(東京都渋谷区)を開院。東京大学医学部で非常勤講師として教鞭もとっている。

(ライター 竹島由起)

[nikkei WOMAN Online 2015年7月16日付記事を再構成]

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