スマホで老け顔になる? スキンケアの意外な新知識
Q. 最近、「保湿は大切だが、化粧水は不要。日本人は『化粧水信仰』が強すぎる」と聞きました。化粧水は不要でしょうか。乳液やクリーム、オイルだけでOKですか?
⇒ A.化粧水はとても大切です。私は「保水」をいう言葉をよく使いますが、肌のお手入れは、まずたっぷりと水分を与えることが大切です。「しっかりと肌に水分を与え、それからクリームなどの油性のアイテムで『フタ』をする」。この2ステップがスキンケアの基本です。
水分を与えずにいきなりクリームやオイルを塗ってしまうと、肌への負担が大きく、刺激が強いのでかぶれる場合があります。
化粧水の量ですが、肌がしっとり柔らかくなるまでつけてください。「肌が少しひんやりするくらい」を目安にするといいと思います。1回塗って終わり、でなく、2度づけするといいでしょう。1度つけたら、ちょっと何か作業をして、何分か後にまた塗るのです。
ちなみに私は、月に2本の化粧水を使います。クリニックで患者さんに「化粧水の量を2倍にしてみて」とお話することがありますが、それだけで肌の質が変わります。うるおって、肌が明るくなるのです。コットンパックも取り入れていただきたいですね。
Q.UVカット効果のあるファンデーションを使えば、日焼け止めは塗らなくてもいいのでしょうか。
⇒ A.UVカット効果のあるファンデーションを使う場合でも、日焼け止めを塗ることをお勧めします。ファンデーションは、顔全体に均一に塗れるとは限りません。「あとで美白すればいいや」と考えないでください。日焼け止めを塗るというひと手間を惜しんだ分を、その後のスキンケアで補おうとすると、その労力は100倍以上だと思ってください。
まず、紫外線を防ぐこと。そのために、日焼け止めを徹底すること。これが、滑らかできれいな肌づくりの基本です。
Q.SPF値の高い日焼け止めを使えば、長時間もちますか? SPF30の日焼け止めとSPF20のファンデーションを重ねれば、SPF50の効果になりますか。
⇒ A.SPFの数値は、日焼け止めの効果の度合いを示すものです。具体的には、「紫外線を浴びたときに赤い斑点ができるまでの時間を、何倍に延ばせるか」を表しています。たとえばSPF40だと、何もしなければ20分程度で斑点ができるとすると、それを40倍…20×40=800分(13時間20分)に引き延ばせる、ということです。
ただし、この効果がずっと続くわけではありません。皮膚は汗や皮脂を分泌するので、日焼け止めは同じところにとどまっていられなくなります。これはSPFの数値にかかわらず同じです。
ですから、日焼け止めは塗りなおす必要があります。2~3時間ごとに塗りなおしたいものです。日焼け止めパウダーなどの便利なコスメもありますので、そうしたものを活用して日焼け対策を徹底してください。
また、SPF20の日焼け止めとSPF30のファンデーションを重ねて塗っても、SPF50になるわけではありません。単純な足し算にはなりませんが、重ねると効果は上がります。外出時にはSPFの効果の高いものを使って、肌を守ってください。
Q.がんばってマッサージや顔の筋トレをしていますが、効果が感じられません。
⇒ A.顔の筋肉の向きを知ってマッサージや筋トレをすれば、効果は得られます。間違った方向に鍛えると逆効果になることもあるので、注意してください。たとえば、「下げる」働きのある筋肉を鍛えてしまうと、「下げ力」がついてたるんでしまいます。口元を「イー」と伸ばすような体操やマッサージは危険です。「下げる筋肉」が鍛えられてしまうからです。
顔は意外とこっているので、ときどきマッサージするのはいいことです。クリームをつけるときに、ついでに図のマッサージを試してみてください。眉の上までマッサージするのがポイントです。力を入れる必要はありません。
マッサージを行うときはクリームなどをつけて、皮膚表面をこすらない(摩擦しない)よう注意してください。
Q.「スマホで老ける」ということがあるのでしょうか。スマートフォン(スマホ)を長時間使っていると、腱鞘炎になったり、ストレートネックになったりすると聞きますが、顔にも影響があるのですか。
⇒ A.スマホを使うときは、だいたい下向きで画面を見ていますよね。これがよくないのです。首のたるみやシワの原因になりかねない、危険な姿勢です。さらに、小さい文字を見るときに目を細めたり眉間を寄せたりしていませんか。これを続けると、老け顔まっしぐらです。普通なら40代以降で出てくる眉間や額のシワが、最近は20代でも出ることがあるようです。これはスマホの影響が大きいでしょう。できるだけ、目と同じ高さで見るように心がけてみてください。
Q.顔のシワが、病気と関係があるということがありますか。
⇒ A.シワをはじめ、肌の状態に病気のサインが表れることがあります。代謝の状態が変わると、それは肌に出ます。たとえば甲状腺機能低下症は、代謝が落ちるため肌色が悪く、くすむことが多いのです。逆に、甲状腺機能亢進症だと代謝がよくなりすぎて赤ら顔になったり、肌が乾燥して小じわができることがあります。天気や花粉など、自分で分かっている原因とは関係なく肌がおかしくなったときには、受診されたほうがいいかもしれません。
皮膚科専門医。医学博士。東京ミッドタウン皮膚科形成外科クリニックNoage(ノアージュ)院長。2002年聖マリアンナ医科大学大学院卒業後、日本赤十字医療センター勤務、ニューヨーク ワイル・コーネル医科大学勤務などを経て現職。エイジングケアの美容医療では第一人者の一人。年間6000人以上の診療を行っている。
[nikkei WOMAN Online 2015年6月12日付記事を再構成]
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