小学生のお小遣い、「3S Bank(貯金箱)」で寄付も学びに

2015/7/31

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日経DUAL

藤村美里さんは、テレビ局でTVディレクターとして勤務しつつ、会社員の夫と娘の3人家族で共働き生活をしていた。そこに突然降り掛かった「夫の海外赴任」。悩んだ末、2013年、家族でタイに引っ越すことを選択した。海外で生活する共働き世帯のママが日々考えることをつづる――。

お手伝いで得たお小遣いは、どう使う?

共働きで常に猫の手も借りたい状態だったため、娘に家事のお手伝いを頼むようになったのは2歳半になったころ。お風呂掃除に始まり、洗濯物を取り込んで畳んでもらったり、簡単な料理を手伝ってもらったり……。おかげで小学生になるころには、娘はご飯を炊くこと、簡単なお味噌汁(ネギ、ワカメ、豆腐入り)くらいは自分で作ることができるようになった。「継続は力なり」というのは本当で、私のやり方を心得ている彼女のお手伝いはとても助かっている。

わが家では、洗濯物(取り込んで畳むまで)や料理アシスタント(ご飯炊き+野菜を洗うなど)のお手伝いを1回とカウントして、1回いくらと決まった金額をあげることになっている。毎月のお小遣いはまだあげていないので、お金が必要ならば積極的に働いてためるしかない。

娘はもらったお小遣いを基本的には好きな物を買うためにためているのだが、インターナショナルスクールでは寄付を募るイベントなどが多いこともあって、お小遣いの半分近くを寄付するために使っているというのが実のところ。頻繁な寄付に違和感を覚えたこともあったが、この寄付も子ども達が学ぶ場になっていることに親である私も遅ればせながら気がついた。子ども達が世界の困窮や災害について知る機会になっているのだ。

寄付をきっかけに知った、国旗の意味

大きな災害や戦争があったとき、私はできるだけ娘に写真や映像を見せるようにしてきた。小学校の低学年であっても、世界各地で起きていることを知っていてほしかったから。ただ、学校で戦争や災害についての話をするのはまだ先だろう……そう思っていた。

でも、学校から災害に対する寄付のお願いがあった日、帰宅した娘は驚くほどちゃんと理解していたのだ。どこで何があったのか、現地の子ども達がどうしているのか、自分達にできる微々たることは何か、ということを。

フィリピンに台風が直撃し、大きな被害が出たときには、フィリピン国旗の色の洋服で登校するということもあった。例えば、白と黄色のカットソーに青のショートパンツ、赤色の髪ゴム……というふうに。そして、皆でフィリピンのために祈り、寄付しようという趣旨だった。

国旗の色を着ていくとなれば、なぜ赤色・青色・黄色・白色が使われているのか、理由を知りたくなる。

調べてみると、白色には平等と友愛、青色には平和と真実と正義、赤色には勇気と愛国心の意味があるということが分かった。黄色の太陽は、独立の末に手に入れた「自由」を表しているということも、初めて知った。

災害を学びのきっかけにするなんて……という意見もあるかもしれない。

でも、その国がどこにあるのか、子ども達はどんな生活をしているのか、それにはどんな理由や歴史があるのか、寄付をきっかけに学ぶこともある。

親が簡単に寄付金を出すのではなく、お手伝いを重ねて集めた大切なお金を寄付することにも意味がある気がしてならない。寄付のお金が寄付を受け取る側の人々にとって本当に必要なのか、このお金でどんな支援ができるのかを真剣に考えるきっかけになるのだから。

「シェア」という項目入りの貯金箱

小野寺愛さんのお嬢さんの「3S Bank」

お小遣いを寄付するという視点で言えば、「3SBank(貯金箱)」というものもある。お小遣いをもらったら「Spend(使う)」と「Save(ためる)」と「Share(寄付する)」の3つに分けてから使う、という貯金箱だ。

Spend(使う)に入れたお金は、すぐに使える、好きなものを買うためのお金。

Save(ためる)に入れたお金は、すぐには使えない。将来大きな買い物をするときのためにためておくもの。

そして、Share(寄付する)に入れたお金は、自分でよく考えて、協力したい・助けたいと思った団体などに寄付するためのもの。

最初に3S Bankの存在を知ったとき、お金を使ったりためたりすることと並んで、当たり前にShare(寄付する)という項目が存在することに驚いた。寄付する文化だとは知っていたけれど「お小遣いの3分の1も寄付するの?」と。

でも、このShare(寄付する)は単純に「3分の1を寄付せよ」というわけではなく、子ども達が世界について学ぶきっかけになっている。

寄付を受け取る側の現状を知り、どんな支援をすべきなのか考える、広い視野を持つために存在しているのがShare(寄付する)という項目なのだろう。

3S Bankをきっかけに世界が広がる

この3S Bankは、友人であり国際交流NGOピースボートのスタッフでもある小野寺愛さんも実践し、子ども達の反応も含めてブログにつづっている。当時7歳のお嬢さんにあげていたお小遣いは毎月500円。これを3S貯金箱に入れるように教えたのだ。

その後、お嬢さんはSpend(使う)とSave(ためる)に200円ずつ、そしてShare(寄付する)には毎月100円入れるようになり、お年玉も3つの貯金箱に分けて入れた。

それから1年後、駅前でWFP(世界食糧計画)の活動を見て、30円で学校給食1食分を贈ることができると知ったお嬢さん。アフリカに送っているトウモロコシとおかゆの素を手に取ったインパクトはかなりのものだったらしい。帰宅後には「給食があったから今の僕がいる」という話を読み、寄付を決めたという。

お金の使い方に正解なんて無いし、お小遣いの使い方まで親が細かく教えるものではない。そう考える私にとって、この3S貯金箱は面白い教育だと感じる。使う、ためる、という点についても良い練習になるだろう。

最近アフリカの子ども達の現状を知り、自分にも何かできることはないかと模索している娘。ちょうど定額のお小遣いを始めようかという話にもなっているため、この秋から3Sバンクをスタートすることになった。貯金箱を通じて、どんなことを学べるか、親である私達も楽しみにしている。

藤村美里(Misato Fujimura)
TVディレクター。都立国分寺高校、早稲田大学卒業後、民放テレビ局入社。報道情報番組やドキュメンタリー番組でディレクターを務める。2008年に女児出産後、視点が180度変わり、児童虐待・保育問題・周産期医療・不妊医療などを母親の視点で取材。夫の転勤に伴い、2013年退社。海外と東京を往復しながらフリーで仕事を続ける。2008年から、働くママの異業種交流会「Workingmama party」 を主催。今年、働くママ&20代30代女子が集まる異業種交流会「Women’s Lounge」 も立ち上げた。
Workingmama party https://www.facebook.com/WorkingmamaParty
Women's Lounge http://www.ws-lounge.com/

[日経DUAL2015年6月26日付の掲載記事を再構成]