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シニアも気楽に「校庭ゴルフ」 ゲートボールは衰退

2015/7/19

高齢者スポーツといえば? ゲートボールと答えるのはちょっと古い。今の主流は校庭など身近な広場でできるグラウンド・ゴルフ。シニアマネーを狙い周辺ビジネスも活況だ。

梅雨の晴れ間となった7月上旬。熊本県八代市の河川敷に400人を超す高齢者が集まった。「仲良くプレーすることを誓います!」。選手宣誓、始球式を経て始まったのはグラウンド・ゴルフ大会。「おしかー」「これはよか距離たい」。河川敷が徐々に熱気を帯びていく。柿本清女さん(76)は「思いっきり打つのが楽しい」と笑顔でプレー。休憩時には朝4時に起きて作ったまんじゅうを配った。

■中心はシニア層

グラウンド・ゴルフのルールは簡単。直径6センチのボールを打ち、15~50メートル間隔で置かれたポストに入れる。打撃数が少ない人が勝ちだ。自分の結果がすべてという点はゴルフと同じ個人競技。だが、大会参加費は五百~三千円程度とずっと安い。1982年に鳥取県で考案され、近所の校庭でもできるようグラウンド・ゴルフという名称になった。今や日本グラウンド・ゴルフ協会の会員は18万人。愛好者はさらに多く、笹川スポーツ財団の調べでは全国300万人に上る。中心は定年退職後の高齢者で、社用ゴルフから移行する人も多い。

年金などを持ち懐に余裕のある高齢者は企業にとっても魅力だ。ここ数年で、ゆうちょ銀行やJAグループ、葬儀業者などが主催・協賛する大会が急増。地方紙も大会結果を載せ、購買につなげている。コースを併設する温泉や旅館も多い。約1万3千人の会員を抱える埼玉県グラウンド・ゴルフ協会の石井健治会長は「年に10~20回くらいは仲間と群馬や茨城に足を延ばす。プレーして温泉につかって1泊。いわば大人の遠足ですよ」とほほ笑む。

もちろん政治家も見逃さない。石破茂地方創生相が会長を務める「自民党グラウンド・ゴルフ振興議員連盟」は昨年発足し、120人以上の議員が参加する。ある衆院議員は「まさに票田。政治家主催の大会も乱立し、どうやって自分の大会にきてもらうか悩む毎日」と打ち明ける。

ゲートボールはどうなったのか。ゲートボールの愛好者は1998年には120万人いたとみられるが、現在は約60万人まで減少した。ゲートボールは「北海道生まれ、熊本育ち」と呼ばれ、熊本県もかつてはゲートボール大国だったが今はグラウンド・ゴルフが主流だ。

■他人の指示イヤ

衰退の最大の理由は、個人主義の浸透にある。ゲートボールは1チーム5人で競う団体競技。高度な駆け引きが要求され、一打でゲームの流れが変わる。仲間との一体感を楽しめる一方で「時にチーム内のいざこざをよんでしまう」(日本ゲートボール連合)。高齢になるほど人に指示されたくない面もあるようだ。

団体競技から個人競技への流れは世界でも起きている。2000年に米国でベストセラーになった社会学書「孤独なボウリング」では、80年から93年の間、米国のボウリング人口が10%増える一方、チームでボウリングに参加する人が40%減った状況が描かれている。第2次世界大戦を経験していない世代は社会参加への意識が薄れることなどが理由と分析されている。

ただ、グラウンド・ゴルフは「孤独なゲートボール」ではない。埼玉県春日部市の宮下靖弘さん(75)は定年後に妻を亡くし、グラウンド・ゴルフを始めた。「週3回は地域の練習に参加している。練習後は仲間と話したり宴会を開いたり。それが楽しい」と話す。社会関係を研究する日本大学の稲葉陽二教授は、「スポーツは参加しやすく、地域関係づくりで重要性が高まっている」と指摘する。プレースタイルは個人に変わっても、スポーツを通じ絆を育む姿は変わっていない。

■20代未満のつぶやき、最も多く 「父がゴルフからシフト」

短文投稿サイトのツイッターでも、グラウンド・ゴルフに関するつぶやきがある。

最も多い年代は20代未満。「ばーちゃんはこの台風の中、グラウンド・ゴルフにでかけました」「うちの父もゴルフからグラウンド・ゴルフにシフトしつつある」など、家族に関するつぶやきが多かった。

また旅館や温泉施設などが「自然豊かなグラウンド・ゴルフ場でプレーしませんか」と、人気にあやかっている。

つぶやき数だけで比較してみると、現時点ではゲートボールのほうが多い。ゲートボールには「純粋に楽しみたい人とスコアに厳しい人がいると雰囲気がぎくしゃくしてうまくいかなくなるって」という意見や、「すげぇ楽しそう」「調べてみたら面白そう」などと若い人の興味を示すつぶやきも多かった。

調査はホットリンクの協力を得た。

(福山絵里子)

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