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東京・表参道で本家の「クロナッツ」を楽しむ

2015/8/8

日経トレンディネット

クロワッサンとドーナツを融合させたハイブリッドスイーツ「クロナッツ」を大ヒットさせ、世界中にハイブリッドスイーツブームを巻き起こした米ニューヨークのペストリーショップが日本に上陸した。

2015年6月20日、東京・表参道にオープンした「ドミニクアンセルベーカリートウキョウ(DOMINIQUE ANSEL BAKERY TOKYO)」だ。「ビルズ」や「マックス ブレナー」「アイスモンスター」などの行列店を手がけるトランジットジェネラルオフィスとアパレル大手のTSIホールディングスが共同出資で設立したD.A.B. PASTRYが日本での事業展開を行う。

「ドミニクアンセルベーカリー トウキョウ」(東京都渋谷区神宮前5-7-14)。営業時間は8~19時(2階のカフェレストランは9時から)
入口横にはドミニク氏に似たポップなイラストが描かれた記念撮影用のボードが設置されている

クロナッツはタイム誌による「2013年の最も優れた発明品 25」の一つにも選ばれたスイーツ。2013年5月の発売と同時に大ブームになり、めったに列を作らないことで知られるニューヨーカーが毎朝長蛇の列を作る姿が話題を呼んだ。ヒュー・ジャックマンやレオナルド・ディカプリオなどのハリウッド・セレブも、一般人に交じって早朝から列に並んで購入しているという。いまだに行列が続く理由のひとつには、数量限定販売であること、毎月フレーバーを替え、同じフレーバーを二度と販売しないといった販売戦略もあるようだ。

これが本家クロナッツ

クロナッツのブームは欧州にも飛び火しているほか、日本でもミスタードーナツが2014年4月に「ミスタークロワッサンドーナツ」3アイテムを発売。2015年3月末までにシリーズ累計4100万個を販売している。コンビニではサークルKとサンクス各店がクロナッツを商品化。ローソンでは2015年3月の販売終了までの累計で1200万個売れたという。

このように世界中でブレイクしているクロナッツの「本家」の味はいったいどんなものなのか。

■公園のようなカフェレストラン

同店の場所は、東京メトロ表参道駅のA1出口から歩いて5分ほどの路地裏。黄色とブルーのコントラストが鮮やかな外観は、遠くからでも目につく。入口にはアメリカンコミック調のポップなタッチのイラストパネルが。オーナーシェフであるドミニク・アンセル氏の似顔絵だそうで、訪れた人の記念写真のスペースとして用意されているとのこと。ペストリーショップというとメルヘンチックな空間をイメージするが、ドミニクアンセルベーカリーは入る前からほかと違う独特のコンセプトを感じさせる。

店内の様子。1階はテイクアウトカウンターになっている
中央のショーケースには華やかなデザインのケーキが並ぶ。ドミニク氏が開発した招き猫のデザインのケーキなども

店内に入ると左手に長いテイクアウトカウンターがあり、右側はイートインスペース。壁には、ニューヨークとパリの地下鉄の世界観を表現したパネルがある。フランス出身の有名グラフィックアーティスト、バーラム・ムラーティアンの作品で、ニューヨーク、パリ、東京の都市名や、同ベーカリーを象徴するメニュー名、ドミニク氏のお気に入りの食べ物の名前などが駅名として描かれているという。つまり地下鉄路線図を模して、今日までの同氏のペストリー造りの軌跡が表現されているわけだ。

1階のイートインスベースは16席。地下鉄の路線図のデザインが施された壁画が目をひく
カウンター突き当たりにはオープンキッチン

駅名そのものも、ドミニク氏が生み出したスイーツがキーワードとして隠されているという。オーナーシェフのパティシエとしてのアイデンティティーを遊び心満点のアートでさりげなく見せている点もユニークだ。

カウンター奥のオープンキッチンを見下ろしながら、さまざまな顔のイラストが飾られた階段を上ると、2階入り口もいきなりオープンキッチン。2階フロアはレストラン形式となっており、ニューヨークとパリの公園を表現しているという。さらに雰囲気を盛り上げるために、2階フロア限定メニューとしてピクニックスタイルの「セントラルパークバスケット」を用意している。

階段には世界各国の人々のイラストが飾られている。中央には力士のイラストも
2階に上るとすぐにオープンキッチン。「クッキー・ショット」は、客の目の前で仕上げる

もうひとつ特徴的なのは、日本の茶室からインスピレーションを得たという個室があること。この個室でしか食べられない限定スイーツとして、「モンブラン ワガシ」という新メニューを考案したそうだ。

それでは、名物メニューの数々を味わってみよう。

公園をイメージしているという2階のカフェレストランは72席
日本の茶室をイメージしたという個室

■しっかりかみしめたい力強いクロナッツ

まずは看板商品のクロナッツから試食した。フランスを代表するペストリーであるクロワッサンと、ニューヨークを代表するスイーツであるドーナツを組み合わせた、ハイブリッドスイーツの元祖といわれるスイーツだ。バターがたっぷり練りこまれたクロワッサン生地を揚げることで、外はサクサク、中はふんわりの食感を実現しているという。

「クロナッツ」(594円※税込み価格、以下同)は数量限定販売、1人2個まで購入可能
記念すべき日本最初のフレーバーは「北海道産ミルクハニー&ゆずレモンクリーム」。柑橘系の酸味がかなりしっかり効いていて、甘みは強いのに爽やか

ひとくち食べて浮かんだ感想は「濃厚」。生地の目が詰まっていてコシがあり、意外なほどしっかりとかみ応えがある。さらにバターの味わいが濃厚なうえ、塩味が隠し味以上に効いていて、甘いだけのスイーツではないヘビーな力強さを感じるのだ(もしかしたらしつこいと感じる人もいるかもしれない)。サクサク食べられる日本のクロナッツと違い、しっかりかみしめて味わいたくなるクロナッツだった。

同ベーカリーには、クロナッツ以外にも名物スイーツがたくさんある。そのひとつが、ショットグラス型の温かいチョコチップクッキーに、冷たいバニラ風味のミルクを注いでくれる「クッキー・ショット」。米国人が好む、ミルクにオレオクッキーを浸す食べ方からヒントを得たスイーツだとか。一気に飲み干してからクッキーを食べるか、クッキーとアイスミルクを交互に攻めるかで、味わいはかなり違いそうだ。また時間がたつとミルクにクッキーのチョコレートが溶け出して、チョコレートミルクになる。こちらが好みの人は、最初に飲み干さないよう、注意が必要だ。冷たいミルクと温かいクッキーを同時に味わう感覚が新鮮だった。

「クッキー・ショット」(518円)。毎日数量限定、1階のみで販売。1人2個まで購入可能
「ジンジャーブレッド パインコーン」(972円)。60枚以上のチョコチップを、1枚ずつ挿し込んで完成させる

「ジンジャーブレッド パインコーン」は、クリスマスツリーに飾る松ぼっくりのオーナメントからインスピレーションを受けたケーキ。ナツメグで香り付けしたケーキ生地にキャラメルクリームをこんもりと盛り、その上に60枚以上のチョコチップを差して完成させる。そのため1個作るのにかなり時間がかかるそうだ。デコレーションにそんな手間をかけても、食べてしまえば同じなのに…と思いきや、口の中に入れた瞬間、何十枚もの薄いチョコチップが砕け、初めて味わう心地いいサクサク感に驚いた。このフォルムは、決して無駄な飾りではなく、この食感のためだったのだと気がつく。

アイスクリームをマシュマロで包み表面をバーナーで焼きつける「フローズン スモア」も、注文のたびに目の前で仕上げるスイーツ。これも外と中の温度差が楽しいが、それ以上にマシュマロのもっちり感と、中の溶けかけのアイスクリームのとろとろ感、その間のチョコチップのシャリシャリ感と、食感のハーモニーが絶妙だった。

「フローズン スモア」(810円)。キャンプでマシュマロを枝に挿して火で焼いた体験を元に作られたスイーツ
「ライムミーアップタルト」(734円)。ホワイトチョコレートをひっくり返し、ムースの溝の中にトッピングを入れてからライムを搾る

ドミニク・アンセル氏はパリ北部生まれ。多くの賞を受賞。2011年11月、自身のペストリーショップをオープン

鮮やかなミントグリーンの「ライムミーアップタルト」は、この日一番の衝撃的な味だった。舟型のホワイトチョコを食べる直前にケーキの上でひっくり返し、中の海塩などのトッピングをケーキ上部にふりかける。さらにライムを絞って食べるという、初めての趣向。

スイーツなのに最初にガツンと塩味が来て、その後に海塩特有のうまみ、ライムの強烈な酸味と続き、最後に爽やかな甘みが来る。こんなスイーツ体験は初めてだった。

総じて感じたのは、塩味をとてもうまく使ってインパクトの強い味に仕上げていること。そして温度や食感の違いを絶妙な計算で大胆に組み合わせていること。ほかでは食べたことのない独創的なスイーツばかりだからこそ、クセになると並んでまで買い求めたくなるのだろう。

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2015年6月19日付の記事を再構成]

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