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3歳までが勝負 子どもの味覚の育て方

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NIKKEI STYLE

日経DUAL
「3歳までの食経験は、その人の一生の味覚を左右する」――。そう聞いてどきっとする人も多いのではないでしょうか。「三つ子の魂百まで」ということわざもありますが、3歳までに培われた味覚が、人の一生の味覚傾向を左右すると言われています。
 そこで今回は食育スペシャリストであり、自身も母として日々子どもの食と向き合っている、とけいじ千絵さんに「子どもの味覚の育て方」についてお話を伺います。離乳期から味覚を育てることを目的とした講座は、募集開始から30分も経たずに毎回満席になるほど予約が取れない講座として大盛況です。味覚が発達していく仕組みから、味覚を育てるためにすべきことなど、忙しい共働き家庭に役立つヒントが満載です。

こんにちは。とけいじ千絵です。私は、「審食美眼(=食に対する審美眼)を磨き、彩りある食生活を」をモットーに、小さな子どもを持つパパ・ママ向けに講座を開いたり、フードアナリストとして企業の商品開発のお手伝いや執筆活動をしたりするなど、「食育」にたずさわっています。

今「食育」の大切さが注目されていますが、なぜ小さなころから食育を行うことが重要なのでしょうか。それは、子どもの味覚の発達のメカニズムを知れば納得していただけると思います。味覚の仕組みについてお話しするとともに、離乳食を上手に進めるコツについてお話ししたいと思います。

子どもの味覚のピークは生後すぐ 5カ月過ぎから鈍感になっていく

味には「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の五味があると言われていて、それぞれが、いわば信号としての役割を持っています。

 甘味→エネルギー源である糖の存在を知らせる
 塩味→体液のバランスに必要なミネラル分の存在を知らせる
 酸味→腐敗している、果物などが未熟であることを知らせる
 苦味→毒の存在を知らせる
 うま味→体をつくるのに必要なたんぱく質の存在を知らせる

このように、味覚とは生きて行くために必要なものを識別する能力なのです。

舌の表面には、「味蕾(みらい)」と呼ばれるブツブツとした器官があります。味蕾で味をキャッチすると、味覚神経を介して脳に信号が送られて味を感知します。味蕾を拡大するとたまねぎのような形をしていて、一つひとつがすべての味を感じることができます。よく、舌の先が甘味、外側が苦味などのように思われていますが、これは間違っていたことが今では判明しています。

赤ちゃんの味蕾は、お母さんのおなかにいる妊娠7週目くらいにでき始め、14週くらいには大人とほぼ同じ構造になり、その後は生後3カ月くらいまで増え続けます。味蕾は刺激物や喫煙などで摩耗するため、成人男性では約7000個、高齢男性では約3000個ですが、生まれたばかりの赤ちゃんには何と1万個もあります。生後3カ月でピークを迎える味蕾ですが、5カ月くらいになると味蕾細胞の数はそのままで、味覚だけが鈍感になってきます。この時期がちょうど人間の離乳食開始時期と重なるわけですね。

よく、粉ミルクの銘柄を変えたり、お母さんが辛いものを食べた後におっぱいをあげたりすると拒否する赤ちゃんがいますよね。これはこの時期の赤ちゃんの味覚が研ぎ澄まされているから、ちょっとした変化にも気づくのです。生後5カ月くらいで味覚が鈍感になると、それまで飲んでいたおっぱいやミルクとは違う別の味、つまり離乳食を受け入れることができるというわけです。

子どもの「おいしい」には味だけでなく、色、舌触り、シチュエーションも影響

お子さんは離乳食を何でもモグモグ食べてくれますか? それとも、なかなか食べてくれなくて困り果てているでしょうか。そういうときお母さんは「きっと味つけが気に入らないのね」と、レシピと格闘しがちですが、実は、子どもが「おいしい」と感じる要素は味だけではなく、食材の色や形、舌触り、ニオイ、大きさなど色々。様々な情報を脳に取り込んでいて、それが「おいしい」と感じる構成要素になっています。

なかでもニオイは重要な要素。五感のなかでも最も原始的と言われ、鼻の奥にある細胞にニオイ成分がくっついてダイレクトに大脳に伝わるため、味覚よりも正確と言われています。おいしいうなぎを食べた記憶を思い出してみてください。味自体よりも「香ばしい香り」のほうが記憶に鮮明に残っていませんか。食べ物の記憶の大半は「香り」によるものなのです。

子どもが離乳食を食べないときは、味が気に入らないからと決め付けず、切り方を変えてみたり、硬さを変えてみたり、だしの香りを足してみたりなど、変化をつけてみてください。また、お母さんが無意識のうちに時間をせかしているなど、食べさせ方が気に入らないのかもしれません。

グルメにしなくてもいい 様々な味を受け入れて楽しむことを経験させる

おっぱいやミルクを飲んでいるうちは、エネルギー源として必要な「甘味」や「うま味」「脂肪の味」を本能的に好んで食べます。大人はししとうやピーマンなどの苦味を「おいしい」と感じますが、普通、子どもは見向きもしませんよね。私は、子どもの味覚を育てることは、「分かりやすい味覚を卒業して、様々な味を受け入れて楽しむ、大人の嗜好に近づけること」と定義づけています。

大人がピーマンやししとうを「おいしい」と思うのは、自然と獲得できたものではなく、学習によって得た経験です。恐る恐る、試しに食べてみたら「あ、おいしいかも!」と学習したにすぎません。子どもが好むような分かりやすい味を与え続けるのではなく、3回食になったら味覚を広げて豊かにすることを意識しましょう。

実は、人が感じる「おいしさ」はいくつかに類型化できるのです。

そのうちの一つが「安心のおいしさ」というもの。小さなころから味覚に擦り込まれた味に対して安心感を覚え、それをおいしいと思うことです。いわゆる「おふくろの味」のおいしさのことですね。これと対極にあるのが「病みつきのおいしさ」です。食べると快楽が生まれ、おなかがすいていなくても食べてしまうというおいしさです。これは砂糖と油脂に代表されます。過剰摂取は体に良くないのに依存性があるため、厄介なおいしさです。

パパ・ママにできることは、たくさんの「安心のおいしさ」を教えてあげて、「病みつきのおいしさ」をできるだけ減らしていくことなのではないかと思います。

たくさんの素材を、繰り返し食べさせて「安心の味」に定着させる

子どもの味覚の幅を広げるには、具体的に何をしたらいいでしょうか。3つのポイントに絞ってお伝えします。

(1)たくさんの素材の味を経験させる

たくさんの味といっても、各国のいろんな料理ということではありません。基本は和食です。だしの味を付けて、様々な食材にチャレンジしてください。

これは注意! →ケチャップ、マヨネーズ、ソース、ドレッシングは素材本来の味を隠してしまうので離乳期は封印を。味覚は3歳までに決まると言われていますが、この時期に調味料に慣れてしまうと、大人になっても濃い味を好むようになります。また、煮込みうどんや雑炊など、いろんな味を混ぜ合わせたものは、一つひとつの素材の味が分かりにくいため毎食出すのはやめましょう。あごだし(とびうお)はコクが出過ぎるので、離乳期は昆布とかつおでだしを取ります。

(2)繰り返しの摂取で味を学習させて、嗜好を定着させる

砂糖や油と並んで、実はかつおだしも病みつき食材の一つ。離乳期からかつおだしのうま味を舌に擦り込んでおくことで、将来、砂糖や油といった体にとって良くない病みつきのおいしさに走ることを防いでくれます。

今の子ども達は食の多様化で和風だしのおいしさが擦り込まれにくい状況です。人は続けて食べるものには安心のおいしさを感じるようになり、しかも早くから与えるほどその傾向が顕著です。だしの味、ご飯の味、ねぎや大根の薬味の味などは、繰り返し食卓に上げて安心の味にしてあげたいですね。

これは注意! →味覚よりも鮮明に残るのがニオイの記憶。顆粒のだしの素は、かつお節や昆布そのものに比べて香りが弱いため味覚も定着しにくい。だしパックでもOKなので、なるべく天然の素材からだしを取って。また、野菜をゆでただけ、ふかしただけで食べてくれる場合でも、1歳を過ぎたらだしを足すことをおすすめします。適度な塩味とうま味で、食材の味が十分に引き出されます。

(3)食事が楽しいと感じる環境づくり

毎日の離乳食作りでお母さんがヘトヘトになっていると、子どもにも伝わってしまい、食事が嫌なものになってしまいます。3回食になったら、早めに大人の取り分け食にして頑張り過ぎないでください。注意したいのは、味噌汁は大人がおいしいと感じる濃さの半分に薄めてあげること。家族全員で食卓を囲んで「食事は楽しいもの」であることを教えてあげたいですね。多忙な共働き家庭の場合は、せめて朝だけでも一緒に食卓を囲めるといいですね。

これは注意! →3歳までに基本的な好き嫌いや、食事の価値観が身に付くと言われています。いつも忙しくて家族がバラバラの食卓だと、それが子どもにとって「正しいこと」「当たり前のこと」になってしまいます。

食べないからといって「嫌いなもの」と決め付けるのはまだ早い

子どもにとって食べ物の好き嫌いはどうやって決まるのでしょうか。先ほど、大人が苦味やえぐみのあるものを「おいしい」と感じるのは「学習によるもの」とお話ししましたが、子どもの好き嫌いも学習によるものです。

安全学習 →新しい食材に挑戦することは不安や恐怖を伴いますから、子どもは初めて食べる食材には五感を総動員させて警戒します。そしてその食材をクリアすることを安全学習といいます。

嫌悪学習 →ある食べ物を食べて体調を崩したとき、その味を不快な信号として脳に記憶し嫌いになる学習。例えばカキにあたったら、カキを嫌いになることが挙げられます。

嗜好学習 →例えば風邪のときに食べたら治ったなど、体調が良くなった経緯で口にした食べ物は、その味自体も好きになることをいいます。

連想学習 →楽しい記憶とつながっているものは好きになるもの。家族だんらんで楽しく食べたちらし寿司が好きになるなど。逆に、無理やり食べさせられたものが嫌いになることも連想学習の一つです。

初めて食べる食材を、けげんそうに食べるのは警戒している証拠で、雑食動物におこる当然の反応です。食べずに口から出したからといって、嫌いと判断するのは時期尚早。嫌いだと決め付けて食卓に出さなくなったら味覚の幅が狭まってしまいます。

パクパク食べていたものをある日突然食べなくなることもありますし、その逆もあります。こうやって味覚の遍歴を繰り返しながら、味覚の幅は広がっていくのです。

とけいじ千絵さん
1級フードアナリスト協会認定講師であり、「審食美眼(=食に対する審美眼)を磨き、彩りある食生活を」をモットーに、『審食美眼塾』を主宰する食育・卓育スペシャリスト。企業の商品開発・飲食店のコンサル業務の経験を経て「味覚」に特化した食育に取り組む。現在は、フードアナリスト、講師、フードライターとしてラジオ、雑誌などで活躍中。また、関東を中心に食育講座や出汁講座、オリジナル箸を手作りして箸の文化や使い方を学ぶMy箸作り講座を開催している。公式ブログ「とけいじ千絵の審食美眼」

(ライター 中島夕子)

[日経DUAL 2015年5月14日付記事を再構成]

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